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日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
『洋型漁船DYシリーズの初期の話』
大漁ニュース 第87号掲載
前回は和型船型の代表であり、量産漁船の最初となったDW-40についてお話ししましたが、今回はDY-41を始めとする洋型漁船の初期の頃について振り返りたいと思います。
刺し網、一本釣り用として計画
最初の洋型漁船となったDY-40の開発は、DW-40と同様に木船からFRP船へと変わることでのマイナス面が影響しないように最大限の努力が払われました。具体的に言うと船体の軽量化による喫水の変化で、木船と同様の喫水を確保する為には水面から下のボリュームを減少させる必要がありましたが、安定性を確保する為には水面近くの幅を削ることができず、それ故DY-41の独創的な船型が生まることになったのです。
排水量船型にやや近い形に
船型についてもう少し詳しく解説しましょう。エンジンの出力と重量比は現在ほど優れていませんでしたし、DWシリーズと比較しても船が深く、重い為に現在の船型から見るとやや排水量船型に近い形をしています。キールの反りやチャインの反りに排水量船型のイメージがあります(図1)。完全な滑走状態になると、これらは船尾部分で前後方向に直線になっているべきなのですが、残念ながらエンジンの出力が低く、完全な滑走領域に達することができない為に、排水量とエンジン出力に合った船型が採用されているのです。
このことは船側の絞りにも表れています。水面下の断面積を船の前後方向から見ると、船首から次第に増加していった面積はエンジンルームのあたりで最大となり、船尾に近づくにしたがって徐々に減少しています。この水面下の断面積を船の前後方向についてグラフにしたものがエリアカーブと呼ばれ、最大を100としたときの各位置の面積を割合で示したのが「プリズマカーブ」と言われるものです。図2を見ると、速長比が大きくなる(スピードが速くなる)にしたがって。面積の最大の位置が後方に移動し、船尾での面積の割合も大きくなっているのに気づかれると思います。DY-41の船型案は、このチャートを利用して目標となるプリズマカーブが得られるようにキールライン、チャインラインが決められ、さらに船側の幅も船尾で少し絞られて調整されたのです。この案を基に水槽テストが繰り返されて最終船型が決定されました。
動揺を解決したビルジキール
装備品について見ると、エンジンからの排気はマフラーを使用していましたが排気方法は上出しのみとなり、船尾装置はブラケットが標準式。操舵装置は木の舵柄による操船で油圧装置などはなく、バランス舵になっていたものの、全速での舵取りにはかなりの力を必要としていました。また防舷材には檜が用いられていましたが、耐久性の面から徐々にプラスティックへと変わっていきました。
DY-41は外洋向けとしてデビューしましたが、木船よりも軽量になる分、腰の強さを得る為に幅広の船型を採用する必要がありましたが、幅を広くすると動揺の周期が早くなってしまい、作業性への影響が大きく出ます。この動揺の問題については船主様からもさまざまなご意見をいただきました。その中で動揺周期の問題から動揺の減衰の問題としての解決策を図り、ビルジキールを使うことで多くの場合は解決することができました。またビルジキールを使うことで漁ができなくなる方はアンチローリングタンクを装備するお客様も見受けられました。現在ではこの問題は船底の断面形状や幅を見直すことで解決されていますが、当時はビルジキールを装備することが揺れを抑える為の効果的な方法として知られていました。
※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。