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日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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漁船設計者の浜ある記(2)木船時代の形状を引き継いだ海苔母船

大漁ニュース 第115号掲載

海苔母船はフレアーが少ない
 有明海の海苔母船として活躍するDWシリーズは、木船時代のスタイルを引き継いで船首部分のフレアーが少なくなっています。これは海苔母船のイメージをFRP船に残したことも理由のひとつですが、海苔養殖の作業を年間を通じて観察し、漁師さんからお話を伺っていく中で作業と密接に関連していることが分かったからです。
 その作業とは初春の海苔養殖を終えて、海に規則正しく立てられた竹を抜くときのことです。ビットの近くにチェーンブロックを固定し、竹に鎖を絡ませてチェーンブロックを操作しながら、その竹を引き抜くのです。その際にフレアーがあると、自分の立っている位置から船端で押されてたわんだ竹までの距離がありすぎて、手でつかみにくくなります。さらにつかんだ竹に鎖を巻く作業もやりにくくなり、1回の作業で竹を引き抜くことができなくなります。
 そのため、FRP船が主流となった今もフレアーの少ない木船のイメージが残されています。

舷の低いエンジンルーム前
 海苔母船としての作業性に必要な条件として昔から変わらないのが、エンジンルーム前の乾舷です。養殖における日々の作業は箱船によって行われます。この箱船の積み卸しの作業はエンジンルームの直前から行います。さらに箱船から船上の海苔コンテナへの移し替えの作業も舷の低いエンジンルーム前が利用されています。つまり、この部分の高さも、箱船を使い、船を揚降する作業がある限り、変化することはなさそうです。

磯物が獲りやすい舷の傾き具合は
 船の傾き具合という点では、和船でも似たようなケースがあります。和船のWシリーズに続いて開発した磯船、Jシリーズで同様の問題があったのです。
 一般には凌波性という点からはフレアーを受けて少しでも波の中で使い易い船を目指すのですが、磯船の場合はそれができません。磯漁も電動船外機の登場で船の形状に対する制約や条件はゆるくなっています。しかし、それ以前のネリガイを使用する時代では形に対する要求が強かったのです。
 磯の作業をする場所は各地でさまざまでした。FRPで船を作る場合、その型代の負担を軽くするために対象市場を広げる必要があります。しかし岬をかわすと作業場所が変わる、船の形も変わる、しかも船の数は少なくない。そのような状況なので、各地の共通部分を見つけ、条件をカバーする船としてひとつの形にまとめなければなりません。
 磯を獲る作業時の姿勢を考えると、やはり舷側の傾きが大きいと作業ができないことが想像できると思います。そこで船側の形状は船首から船尾までできるだけ傾きの小さい、まっすぐ立った形に、つまりフレアーを少なくしたわけです。
 こうした考え方は初期の磯船、J-18に良く出ていると思います。

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※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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