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日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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漁船設計者の浜ある記(3)
これぞ究極のバランス性、北海道の磯船

大漁ニュース 第116号掲載

 前回までブルワークの高さや傾きと作業の関係についてお話ししてきましたが、これぞ究極と感心したのが北海道の磯物専用船です。今回はその北海道、利尻での磯船開発についてご紹介しましょう。

「現地型のスタイルをそのまま採用」
 以前にも触れた“ウルトラC”とも言える磯漁を見せていただいたのは小樽の西、積丹でした。その後、北海道の和船開発は昆布漁が中心となりましたが、しばらくすると利尻での磯船開発の要望が高まり、「ウニ漁」に合った船の開発がスタートしました。
 早速、利尻を訪問し、新しい船の開発について打ち合わせがスタートしました。それまでの和船開発はヤマハの技術で船型を含めて大幅に改善されていましたが、今回の磯船の開発方針は、舵に浮体を入れる等の仕様変更を行うものの、スタイルはステムを寝かした現地船の形をそのまま取り入れることを前提に進めました。
 利尻の船は同一造船所の船でも厳密には同じではなく、当時の磯漁の名人と呼ばれる人たちは、まだ木船を使っていました。
 そこで綿密な調査を行い、磯船には次のような開発条件のあることが判明しました。
1)操業時の傾き角度と傾いた時の安定性。
2)操業時の風流れが少なく、風に対して平行に流れ、船首や船尾が風下に回されない。
3)クルマガイによる切り回しが楽なこと。※1
4)コロ、またはスベリで浜揚げを行う。
5)磯物の作業がメインだが昆布漁にも使える。

 これらの条件を踏まえ、利尻で良いと言われる磯船のスタイルを分析していきました。

「改善の余地がない完璧なスタイル」
 傾いた時の安定度ということでは、操業時の傾きを基準にして、小波による船の揺れ具合を同じにしようとすると、側面の傾きや幅の変化は自然に現地モデル船に近づき、良い結果を得ることが出来ました。次に風流れと切り回し性能では、船首の追い上げ量(反り上がった部分)を増やせそうだったので、追い上げを強くして切り回し性能を上げました。さらに風流れ性能が悪くなることを防ぐため、最大喫水を深くし、水面上と水面下の面積のバランスをほぼ同程度にしました。
 また風流れした時になるべく横方向に流れるように水面上の面積の中心と、水中の面積の中心のずれを少なくなるようにしていくと、船首、作業場所、舵の乾舷が決められているため、現地の磯船の側面形状にかなり近づきました。
 これは口で言うと簡単ですが、コンピューターを駆使して形状を少しずつ変えながら計算を繰り返した結果です。つまりそれだけ木船の漁師さんと造船所による長年の改善、改良で生まれた船が、ほとんど完璧ともいえる形状に練り上げられていたわけです。
 磯漁から来る要求が明確であり、かつ長年作業内容に変化がなかったことから、漁に対する艇体形状が完成の域まで押し上げられてきたのだと思います。逆にこのような漁の作業性に対する要求が強いので、高速で走る時にもトリムが過大にならず走れるよう、手動で簡便に操作できるフラップが生まれたのでしょう。
 このような調査や研究を積み重ねながら、ヤマハの利尻向け磯船が開発され、次第に受け入れられるようになっていきました。

※1 クルマガイについては、日本のクリブネ(1)をご参照ください。

イメージ

北海道の磯漁に使われるJ型和船


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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