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日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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漁船設計者の浜ある記(6)イケスの位置にもワケがある。その(2)

大漁ニュース 第119号掲載

 船の設計の中で各部の配置を決定する際、エンジンとプロペラ等の軸系に次いで注意を払うのがイケスの位置です。今回は前回に続いて「イケスの位置」を単純なモデルを用いてお話ししたいと思います。

図1)四角い箱を船とし、浮かんでいる水の比重を1.00とします。船は5等分され、重心はその長さの中央にあるものとします。箱船の長さは2.0トン、重心の高さは船底より1.0mとします。

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図2)箱船が水に浮いた状態を横から見ます。重量と水中の容積に水の比重を掛けたものが等しく、重心と浮心は同一垂線上にあり、重力は下向きに浮力は上向きに働いて釣り合いがとれています。

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図3)中央の区画のスカッパを開放し、水を入れた時の釣り合いの状態です。結果、他の4区画で2.0トンの重量を支えることになります。中央の区画の浮力が無くなるために、浮力の中心も図2と同じく長さの中央=重心位置と同じ垂線上にあります。箱船は浮力の減少分2.0×2.0×0.05mに等しい分、喫水が増えることになります。

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図4)中央の区画を開放せずに、一番端の区画を開放した場合です。浮力の残っている範囲の4区画分の浮力は重量と同じですから、図3と同じく0.125mの喫水になりそうです。ところが、浮力の中心は船の長さの中央から残った4区画の中央線まで動いています。図4の中及び下のように重量が変わらず、バランスするにはシーソーの支点(重心)と気球(浮心)とが垂直になり、同一線上になる必要があります。箱船の場合もシーソーと同じで、水面に対して傾いで浮き、浮心が重心からの垂線と一致する状態になってバランスします。

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図5)箱船の最終的な状態です。中央の区画開放ではトリム変化がなく、ただ喫水が浮力損失分増加するのみですが、5区画に区分された端末開放の場合はトリムもつきます。計画段階では各イケスの開放状態、積荷の状態を加味して喫水をチェック。さらにどこか1区画に浸水したらどうなるかも検討して、艇体や艤装の計画を立てています。しかし、実際に使用される場合で、計画以上の積荷や重心のずれ、計画以外の区画のイケス利用、エンジン大馬力への換装による重量増等々計画とは異なる場合もあります。いずれにしろイケスなどで不明な点がある場合はどんどん確認して、安心して使用されることをお勧めします。

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※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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