一本釣り
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
パヤオ漁(曳き縄釣り)
沖縄県北谷漁港
このサイズのマグロであれば直接デッキに引き揚げる
美しい海が眼前に開ける沖縄では、珊瑚が生息する目と鼻の先が優雅な漁場となっていましたが、近年では開発の影響を受け漁場も沖合に、漁法も潜水や小型定置網に変わり曳き縄釣りや延縄を行っています。
パヤオはもともとフィリピン語で『浮き魚礁』を表す言葉です。パヤオの仕組みは大型ブイをアンカーで固定し、水面下に古い綱やロープなどを取り付けたものです。そこに何故魚が集まるのかはいろいろな説があるようですが、パヤオに付着したプランクトンを食べる魚が集まり、またそれを食べる中型、大型魚が集まってくるのではないかと、當山さんが説明してくれました。
今回訪ねた北谷町の當山真一さんが所属する北谷漁協では4基のパヤオを設置。これに周辺の2単協で設置した14基を合わせ、計18基のパヤオの周辺を漁場として利用することができます。
當山さんがこのパヤオ漁を行うのは3月から10月までの間。キハダやカツオが中心で、その他にバショウカジキ、シイラなどの回遊魚、また年に数本の割合で200kgクラスのホンマグロも捕れ、冬の間は底延縄を行い、フエフキダイやハタを漁獲にしています。
當山さんの出航は午前4時。2時間かけて真西47マイル沖のパヤオに到着すると、さっそくイカをかたどった疑似餌を流していきます。當山さんの場合、漁源に竿を突き出すスタイルではなく、ブリッジの右側に垂直に立てた長い一本の竿からかなり眺めの糸を出し、後方に大きなヒコーキ板をつけています。
當山さんによると「40kgサイズの魚を狙うには、こうして単純にした方が効率良く漁ができる。逆にカツオをやる時は両舷から竿を出して次から次へと揚げていく方がいい」とのこと。
船はパヤオの付近を8の字を描くようにして、6~7ノットで走らせます。潮の上を流すか下を流すかは海面や波の様子を見ればどちらが良いか判断が付くそうです。船のデッキから糸を手繰り、疑似餌が海面を踊るように動かし、大物が食らいつくのを待つ當山さん。
「ほら、大きいのが来たぞ」
素早くラインホーラーを作動させ、糸を巻きます。船尾に寄せられ、姿を現したのは40kgのキハダマグロでした。
結局この日の大物はこのキハダ一本でしたが、3kgクラスのカツオやキハダが次々に揚がりました。漁が終わったのが午後2時。漁はまずまずだったようで、當山さんの顔からも充実感が伝わってきました。
疑似餌はイカを形取ったもの。ヒコーキ板はかなり大型のものを使用する
パヤオの形はさまざま。漁協がさまざまな工夫を重ね、集魚効果と紛失の防止がパヤオの形を作っている
ブイにはレーダーリフレクターが付けられ、設置は棚から深く落ち込む水深1000mを超える場所が多い
大物は引き上げると血を抜き鰓を取り除く
鮮度を保つために生簀は氷室を思わせるかのような大量の氷が入っていた
當山さんの愛艇は<DY-48H>。抜群のスピード性能と凌波性を発揮する