本文へ進みます

一本釣り

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

MENU

シビ漁

長崎県壱岐

アウトリガーから出された仕掛けを最後は手繰りで引き揚げる

玄界灘を格好の漁場に持つ壱岐島は一年を通じてイカ釣り、ブリの一本釣りが有名ですが、初秋を迎える9月からはシビの夜釣りが最盛期を迎えます。

 夕方5時、壱岐勝本漁港にはシビを狙う漁師さんが次々と港に駆けつけます。このシビとは鮪の幼魚のことで壱岐では5~6キロまでのものを呼び、近海産は高級魚として流通しています。
 今回取材のために同乗したのは中村孝さんの金比羅丸<DY-43R>。シビ漁の出漁は、各漁協の協定で一斉スタートと決められています。
「前の日までのデータとその日の潮の流れが場所を選ぶときの決め手。一度場所を決めたらあまり動かないのがこの漁だよ」
 この日の場所は漁港の北約12マイル沖。漁場に着くと同時にシーアンカーを打ち、船を風上に立たせます。船首と艫に据えられたアウトリガーを倒し、船首側には疑似餌を、艫のアウトリガーにはイカの切り身を短冊状にした生餌を着け、水深90mまで落としていきます。そして1球3000wの集魚灯に明かりが灯ると漁が始まります。
 「集魚灯を付けるのは小魚をおびき寄せるため。それを狙ってシビが寄って来るんだよ。だからあまり場所を変えない方がいいんだ。いかにいい場所で灯りをつけているか。それが一番大切だと思う」
 魚探を眺め、仲間の無線に耳を傾けながら、時折アウトリガーに目をやり、じっと待つ中村さん。するとまもなく「きた、きた」と顔をほころばせながら、船首側のアウトリガーに寄り幹糸を手繰っていきます。
 「いやいや小ぶりだな。すぐに揚がるよ」シビの抵抗をものともせずに手繰っていくと型の良いシビが揚がってきました。
「いいときは一度に3、4匹がかかっているんだけど、そんなときは全然揚がらないんだ。腕がパンパンになっちゃってさ。もう歳かもな(笑)」
 大漁の時は朝まで帰らないと言う中村さん。揚がったシビを素早く氷漬けにし、鮮度を落とさないようにします。
 「型の良さ、傷の少ないこと、鮮度がいいこと。昔は獲れれば良かったんだけど、今は獲るだけじゃなくて、揚がった魚にも気を付けなきゃいけないからね」
 この日はシビの他、キハダマグロやカツオ、アジなどさまざま。中村さんも「家も船も新しくしたばっかりだから稼がなきゃな」と冗談交じりに話します。

イメージ

漁場に着くとシーアンカーを打ち、船を立たせる。動き回るのではなく“待ち”がシビ漁の基本

イメージ

集魚灯にはアジやイカなど小魚がたくさん集まる。シビはその小魚を狙ってくるという

イメージ

手際よく仕掛けを入れる。あとは魚探を見て掛けるのを待つだけだ

イメージ

勝本町漁協の理事を務める中村さん「船を買って、家を建てたら、是が非でもがんばんないといかん」

イメージ

玄界灘の一本釣りに活躍する金比羅丸<DY-43R>

ページ
先頭へ