魚類
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
魚類養殖漁
大分県蒲江町
カンパチはMPの方が活性が高いという
大分県と宮崎県の県境に接する蒲江町は、リアス式海岸の美しい景観を擁し、現在では浜砂に数多くの生け簀が並ぶ、養殖の町として知られています。 蒲江町で養殖を営まれている渡辺水産さんは、カンパチやヒラマサを中心に生け簀100台という、蒲江町でも屈指の規模を誇ります。
父であり会長の渡辺恵さんが魚類養殖を始めたのは今から30年前のこと。それまで生計の柱となっていた真珠養殖からの転換で始めた魚類養殖が、渡辺水産の礎となっています。その渡辺水産で舵取り役として活躍しているのが渡辺満晴さん。父、恵さんから2年前に同社を引き継ぎ、養魚の安定供給に務められています。
「真珠養殖を始めてからというもの、いい値段で配当金が出たのがきっかけで、皆さんが真珠に取り組むようになった。それでも15年ぐらい経つと段々と余剰生産が重なるようになってきて値も崩れ始めたので、魚類養殖に転換したんですよ」
当時、魚類養殖に転換したのは4人だけだったと振り返る恵さん。すべてが手探り状態でスタートした渡辺さんも、現在では町一番の規模を誇る養殖漁家としてその名が知られています。飽きっぽい性格だから新しいものにはつい手が出てしまうと、昔を振り返る恵さんは、いち早くEP給餌に取り組むなどさまざまな試みを行い、現在の多魚種養殖を確立させてきました。
渡辺水産さんでは、午前8時に一日の仕事が始まります。従業員は15名ほど。給餌や出荷など作業ごとのグループに分かれ、100台ほどの生け簀の管理にあたられています。現在ではカンパチを主軸にハマチ、ヒラマサ、マダイ、シマアジ、ハタなどの養殖に取り組まれています。
「その時々で柱になる魚種を決めて育成していますが、魚を育てれば育てるだけ儲かるという時代ではないので難しいですよね。その時々の相場を読んで、利益が出る金額を計算しなきゃいけない。本当はどんどんいい魚を作って、たくさん出荷できればと思うんですが、そうもいかないのがこの仕事の難しいところです」(満晴さん)
魚価が低迷する時代にあって、養殖漁家の経営はつねに相場とのにらみ合い。養魚の安定的な出荷はもとより稚魚や餌の仕入れ、さらに出荷の流通や人材育成など課題は山積みのようになっていると話します。
「まあ、いっぺんには手が着けられませんから、徐々に仕事が上手く回転していけばと思います」
沖のイケスで作業の指揮を執る満晴さん。若き親方として、気力に溢れた声が蒲江の海に響き渡っていました。
作業は朝8時から。この日は餌の積み込みから始まった
取材に伺った日は寄生虫の予防薬の撒布作業が行われていた
養殖はチームワークが大切。満晴さんも積極的にコミュニケーションを図る
イケスの上では魚の活性を見ながら率先して作業の指示を出す
魚類養殖に転向し、町一番の規模となった渡辺水産。現在は満晴さんが切り盛りしている
渡辺水産さんでは5隻のヤマハ漁船が活躍している