刺し網漁
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
イサキ刺し網漁
愛媛県宇和島市
凌波性、安定性ともワンランク上の性能を秘めている
四国西海岸、愛媛県との南部に位置する宇和島市。リアス式海岸の地形を活かし、国内でも1、2の出荷量を誇る真珠・魚類養殖の町として知られていますが、巻網や刺し網などを用いた沿岸漁業の盛んな場所でもあります。そんな好漁場を目前に臨む大小浜地区にこの夏、1隻の新造船<YG-35-1A>が進水しました。
市街地西部の宇和島湾には真珠やタイ・ハマチなど魚類養殖用のイカダが並んでいますが、宇和海一帯は天然魚の宝庫でもあり、巻網や刺網をなどの漁業も盛んな地域です。
「大栄丸」の船主・京江一幸さんは、この宇和海で漁をはじめて20年来、刺網を中心に漁を営まれてきたベテランで、お子さんたちもご長男・大さんと次男・義生が独立、一幸さんの後継者として漁を営んでいます。
宇和島市は、津々浦々に点在する水産会社に隣接するように、地元の造船所・鉄工所が軒を列ねている地域で、漁船の多くは地元造船製が占めているというのが現状です。
「買うならメーカー船と決めてた。その良さは、地元造船と比較にならないからね。長く乗ることを考えれば、仕上がりのきれいなヤマハ船はやっぱりいい」(一幸さん・以下同じ)
この時期、京江さんが主に取り組んでいるのが、イサキ追い掛け漁と呼ばれる刺し網漁で、小潮の夜間を中心に、宇和海沖の日振島~戸島周辺の漁場で操業します。
「夫婦船で出漁することもあるし、夜の仕事が多いからブルワークは高いものにしてもらった。メーカー船なのに、自分の漁のスタイルに応じて選べるのはいいね」
魚探でイサキの群れを確認すると船尾より全長180m・幅10mの網を手早く海中へ投入し、それを終えるとすぐに投入地点へ移動して、船首のローラーからリードした網をブリッジ横のウインチで巻き上げるというもの。1回の出漁で4~5回繰り返しますが、豊漁時には200kg近くの水揚げがあるそうです。
刺網の漁期は5月から8月初旬までの3か月の禁漁期間を除いた通年。夕方の午後5時に出漁して、帰港は夜中の午前1~2時。
「漁場まで距離があるし、出荷の時間もあるので、積み荷した状態で速い船がほしかったんだ。今日の出漁で2度目でまだまだだけど、これからじっくり時間をかけて慣れていくつもり」
来春には三男の正一さんも地元水産高校を卒業し、後継者のひとりに加わり海に出るとのこと。
「そうなるとドライブ船でももう1隻準備せんとならんね(笑)」と微笑む一幸さん。そんな京江さんご一家の海での営みを<YG-35-1A>が力強くサポートしていきます。
操業は通常2人で行うイサキの追い掛け漁。作業はすべて艫側のデッキで行われる
イカ釣りなど他の漁種を手掛けるため、巻き上げるためのウインチを船首、右舷に設置。ひとりでも作業ができるように艤装されている
追い掛け漁で水揚げされたイサキ。1尾で500gほどのものが一般的だが、1kgを超える大物も混じる
夜間はこのように集魚灯を海中に入れて漁を行う
独学で漁をはじめて20年。宇和海で刺網を中心に漁を続けてこられた京江一幸さん
自分好みに艤装できるのもYG-35-1Aの魅力