本文へ進みます

底曳き・桁曳き漁

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

MENU

タイ底曳き網漁

兵庫県明石市

明石海峡で行われる鯛の底曳き網は、艫から網を流して底を曳く

潮流の速さで知られる明石海峡は、身の引き締まったさまざまな魚たちが集う漁場としても知られています。鯛の底曳き網漁を行う井上さん親子のあかし丸に同行しました。

豊富な魚種に恵まれた明石にあっても、特に有名なのが明石ダコと明石鯛。産地名がブランドとして通用するタコと鯛は、明石の漁師さんたちの誇りでもあります。
 「漁師にとって特別な魚だと思うよ、鯛は。儲けだけを考えたら割のいい漁とはいえないけど、鯛を獲りに行くんだという気持ちは、他の魚にはないものだね」
 そう話すのは〈あかし丸/DT-48-1B〉に乗る井上勝次さん(62歳)。井上さんが鯛底曳き網漁を始めたのは、長男の茂生さん(36歳)が船頭を務めるようになった7~8年前とのこと。井上さん親子は1~5月が潜水のタイラギ漁、6~12月は鯛底曳き網漁というサイクルで漁に出ています。
 「鯛の底曳きの場合は沈船ギリギリを狙って網を曳くんだけど、その日の潮の流れを計算に入れておかないと、網が引っかかって破れてしまう。あと、このあたりは水深が一定じゃないので、網の高さをこまめに調節してやらないと魚が入ってこない」(茂生さん)
 勘所を掴むまでが大変だったと茂生さんは言います。そんな茂生さんに舵を渡してから、勝次さんはサポート役に徹してきました。
 「そこは違うんじゃないかなと思うこともあるけど、それを言ったら喧嘩になっちゃうし、自分の考えで船を動かしていかないと成長もないからね。もう、今は安心して任せてます」(勝次さん) と茂生さんの成長に目を細めています。
 明石浦漁協では、獲れた魚は生きたまま市場に出すというのが基本。底曳き網に掛かった鯛は、すぐに浮き袋に針を刺して空気抜きをした後にイケスに放されます。全く無駄のない井上さん親子の動きは、まるで競技スポーツのアスリート。こうして素早く丁寧に扱うことで市場でも「明石の魚」の質が認められ、価格が維持されているとのこと。さらに800g以上の鯛には「明石鯛」のタグが打たれます。水揚げされた魚は漁協の水槽で一晩活け越しすることで、お腹の中の未消化物を吐き出させます。こうした細やかな管理によって、明石の魚のステイタスは守られているようです。

イメージ

勝次さんと茂生さんのコンビネーションは完璧。作業中に言葉はいらない

イメージ

袋を除いた袖網の部分だけで12mほどの長さがある

イメージ

出港は早朝4時。1時間後には一番網を巻き上げるとサクラ色をした鯛が次々と揚がってくる

イメージ

明石浦漁協では獲れた魚は生きたままに市場に出すのが基本。800g以上の鯛には「明石鯛」のタグを打つ

イメージ

鯛の底曳き網は情報戦。漁場はすべてGPSにプロットされている

イメージ

走行中は張り木を跳ね上げ重心が高く不安定になるために、スターンの両舷には大きな浮力体が取り付けられ、スタビリティを確保している

ページ
先頭へ