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その他網漁

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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カワハギ掬い網漁

長崎県対馬

網は金属パイプの枠の重さで自然と下がってゆく。網の上につり下げられているのが餌袋に入ったオキアミ。1個が15kgで1回の漁につき1人あたり4個までと制限がある

日本海に浮かぶ国境の島、対馬。日本で3番目の大きさを誇るこの島は、古くから大陸との交通の要所として、また対馬暖流に乗り回遊する豊富な魚類を背景に漁業が栄えてきた島です。 去る9月に元冠古戦場のすぐ傍らにある小茂田港に朝里公一さんの公運丸<DY-51A-1A>が進水しました。 

 「ここで一番有名なのは、寒ブリだね。いま獲っているカワハギ獲りも、もともとはブリを釣る時に邪魔になるから始めたもので、当時は買い手があるとは思ってもいませんでした」
 そう話すのは公運丸の船主、朝里公一さん。このカワハギ掬い網漁は対馬の秋の漁として知られています。
 取材日の出航は朝日が昇り始めた7時半。餌となるオキアミを積み込むと、港から4、5マイル沖の漁場へと船を走らせました。
 「陽がないと食いが良くならないので日ノ出から日没までが漁の時間。いいときは1日で1トン近く揚がることもありますが、最近はめっきり少なくなってきてしまってね。特に今年は水温が高いので数は少ないですよ」
 カワハギに最適な水温は23℃。25℃以上になると水揚げも激減するそうです。また漁に適した水深は40mから50mが限界で、それより下の層では水圧がかかりすぎて魚が死んでしまうため、良い漁場は限られているそうです。
 港から20分ほど走らせた漁場ではすでに僚船が作業を始めており、さながら船団を組む漁のようにも見受けられます。
 「一隻だけでやっていてもあまり効率は良くない。4、5隻集まって順々に船を流して餌を落としていく方が、ロッポウの集まり具合もいいと思います」
 掬い網漁は、カワハギが餌に食いつく瞬間が勝負。その日の潮の流れに会わせて低層、中層、高層と棚を取る距離を変えていきます。 舵を握る公一さんは、スパンカーを立て網を降ろした時から、片時も離すことなく魚探を見続けています。ブリッジには魚探、GPS、レーダー、ソナー、潮流計などあらゆる計器が備え付けられていました。
「このロッポウ漁は潮がすべて。いろいろな要素を考えながら、網の場所を決めなければいけないので、計器の数はどうしても多くなってしまいます」
 潮の流れ方ひとつで漁場も変化するので、船にも移動の速さが求められます。舵を取る公一さんは「イケスを満水にしても30ノット以上は出るから、遠くの漁場へ行った時でも安心感が違うよ」と船の仕上がりには期待通りといいます。
 「ロッポウが餌に食らいつく瞬間が一番しびれるね」と笑う朝里さん。9月から12月にかけて、対馬沿岸ではこのカワハギ掬い網漁が最盛期を迎えます。

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ロッポウやウマズラと呼ばれるカワハギ。広島や岡山への出荷が多いという

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網を揚げると活きたものはイケスへ、すでに死んでいるものや弱っているものは締めて氷り漬けにする

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操舵室は各種の航海計器が据え付けられている。掬い網漁では魚探が大きな役割を果たしていた

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お世話になった朝里さん親子。右が章さん(61歳)、左が船主の公一さん(31歳)

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カワハギの群を見つけると流れに任せ、網を流していく。一見僚船と共同作業のように見える

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対馬では大きいクラスに入る<DY-51A>。30ノットを超える快速艇

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