本文へ進みます

その他網漁

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

MENU

ゴチ網漁

熊本県御所浦町

不知火海を代表する漁法のひとつ「ゴチ網漁」。トントコと呼ばれていたように、古くから伝わる伝統漁

マダイやトラフグなど魚類養殖産地をして知られる熊本県御所浦町は18の島々からなる全町離島の漁業を中心として町です。 今回はその御所浦町で年間を通してゴチ網を行っている辰栄丸<DY-45G-0A>に同行いたしました。

 「いやーこのゴチ網は今がちょうど端境期でね。本当だったらコウイカが取れる頃なんだけど、いまはアオリイカやカワハギばかりなんだよ」
 気さくにゴチ網のお話をする竹下敏也(38歳)さんは、父、辰夫さんと母、京子さん三人で海に出るようになってから20年。いまでは不知火海の海底を知り抜いたゴチ網の漁師さんです。
 「このあたりではゴチ網のことをトントコ漁って言うんだよ。浮きに付けた縄を円を描くように落としていって、網がある部分に向けて縄を絞っていく。そして船に揚げていくんだけど、そのときに船縁をトントン叩いて音で魚を網の方に追いやっていくんですよ。そこからこの『トントコ』って名前が付いたみたいです」
 魚を囲い込むように網を張るゴチ網では海底の地形と潮の流れを読むことが漁の成果を左右します。縄の長さは500m。網の部分は45m。出航後15分ほどで最初の場所に着くと竹下さんは浮きを落とし、円を描くように船を走らせ、網の付いた縄を落とし込んでいきます。そして落とした浮きを回収すると、網揚げの準備に取りかかりました。
 円形に広がった縄をデッキ後方に備え付けられた油圧ローラーにより絞り込んでいき、縄に付けられた網が円形から長方形に変わると前デッキのローラーに移し替え、網揚げの作業が行われます。
この日の漁で揚がったのはカワハギやヤリイカ、ワタリガニやアシアカエビなど。竹下さん曰く「ゴチ網で捕れた魚はほとんど生きていますよ」と鮮度の良さには太鼓判を押します。
 「このゴチ網は海底の地形が分かっていないと捕る魚を絞ることができない。例えば瀬や根の周りだったら鯛を狙うとか、底が泥や沼地であるようだったら太刀魚やハモ、カワハギね。あとは好みの場所があると思うからさ。自分なんかは引き潮の場所が好きなんだけど、やっぱり満ち潮で取れる場所が好きな人もいる。経験が一番だけど、運も味方につけなきゃね」
 正月から4月にかけては太刀魚を、春から夏にかけては鯛を、夏から12月まではイカがメインとなり、鯛の季節には一度に500Kgをも引き揚げる日があると言います。
 かつてはトントコ漁と呼ばれていた不知火海でのゴチ網漁。今ではトントンと船縁を叩く音は聞かれませんが、親子があうんの呼吸で行う作業からは、伝統漁として今も行われている確かな息吹が伝わってきました。

イメージ

ゴチ網は樽を流し、円を描くように縄を仕掛けていく。右にある縄には錘が、左にある縄には所々にナイロン状の紐が付けられ、浮き代わりの役目をしている

イメージ

ゴチ網ではコウイカやアシアカエビ、ワタリガニなどさまざま魚種が見られる

イメージ

縄はブリッジに付けられたローラーによって揚げられ、後部デッキの屋根に据えられたローラーが縄を整理する

イメージ

この日の漁はまずまずとのこと。網から揚げられた魚は魚種ごとに選別しイケスへ

イメージ

取材に応じていただいた竹下さん。右から京子さん、辰夫さん、敏也さん

イメージ

不知火海を疾走する辰栄丸<DY-45G-0A>

ページ
先頭へ