篭壺漁
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
アナゴ篭漁
山口県屋代市
富士芳丸でテンポよく作業する河原さん。「アナゴ漁の最盛期は12月。いまはちょうどのんびりできる時期なんですよ」というがその目は真剣そのもの
瀬戸内海の西端に位置する山口県・屋代島は、淡路島、小豆島に次ぐ面積があり、現在は橋で柳井市と結ばれています。 この屋代島の南にある安下庄でアナゴ篭漁を意図無く河原富士雄さんを訪ね、富士芳丸での漁の一日に同乗させていただきました。
「最高だ」
今年2月に進水させた<DY-45G-0A>の評価を尋ねると、河原さんからはすぐに簡素な答えが返ってきました。
「小回りが利くから、篭を揚げるときも仕掛けるときも習ったポイントに無理なくいける。安定性がいいから体も疲れないしね」
夜の暗さが残る海上を、漁場である平郡島に向けて舵を取りながら話を続けます。ときおり瀬戸内独特の強い潮流を切り裂くようにして船はなめらかに走ります。河原さんは新艇を進水するにあたって、船首部の荷受け性能について疑問を抱いていました。
「アナゴ篭はすべての作業を前甲板でするから、このあたりの船は船首部の浮力を持たせるためにバルバスバウのような突起を喫水下に付けたりしている。ヤマハさんはそのままでも大丈夫といってくれたんだけど、正直半信半疑でね。でも進水させたら、すぐに分かった。前は沈まないし、使い勝手はいい。生け簀に入れた魚も活きがいい。水回りの具合がいいんだろうね」
河原さんが仕掛けているアナゴ篭は全部で350篭。水深30mから60mの海底に沈められた篭をローラーで巻き上げなら次々と回収していきます。
篭にはアナゴの他、タコやさまざまな小魚が入っていて、積み上げられてゆく篭はやがて人の背丈ほどにもなり、鉛の入ったロープが山を築きます。河原さんが評価する前甲板の荷受け性の良さを実感します。
「夏休みにはね長男の好宏と次男の雄士が一緒に乗って手伝ってくれたんですよ。ブリッジもゆっくりできるほどの広さがあるので、子どもたちは漁場に着くまでの1時間は中で寝ているんです。それで漁場に着くと餌のイワシを取り替えるのが仕事だからはりきってね。助かりますよ」
午前11時。いつのまにか太陽が真上にきた頃、翌日分の篭の仕掛けが終わり一段落となります。
「この年になると立ちっぱなしの仕事で結構疲れを感じるときもあるけど、この仕事が好きだから、それにこの船がいい相棒だよ」
アナゴを積んだ富士芳丸の船首を奥様の待つ港へと向けました。アナゴ篭漁の最盛期はこれから。新艇<DY-45G-0A>の活躍に期待が膨らみます。
前部デッキが作業の中心。リモコン、ローラー、油圧ローラーを備え、餌、篭が積み上げられる。篭の前に見えるFRP製の囲いに油圧ローラーによってたぐり寄せたロープが貯められる
アナゴの他、タコなど、漁種はさまざまだという
帰港後は漁協の生け簀に直行し水揚げを行う
漁を終えて昼食の支度をして待っていた奥さまの芳美さんと
富士芳丸に並んで、父・敏雄さん、兄・敏喜さんのヤマハ船が浮かぶ安下庄
2月に進水した富士芳丸<DY-45G-0A>