篭壺漁
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
アナゴ篭漁
大阪府泉佐野市
大阪湾のアナゴ漁は、夏は浅瀬、冬は深場に篭を仕掛ける
西日が海面を照らす午後4時。浜野正人さんが操船する第五天竜丸が、北中通港を後にアナゴ漁に向かいます。今回は大阪湾でのアナゴ篭漁に同行しました。
大阪湾でのアナゴ漁は篭を用いて行われ、底曳き漁との兼ね合いにより、操業は午後3時半から9時半までの5時間となっています。
「時間が決まっているので、漁の具合はその日によってまちまちだよ。今日悪いからといって明日まで篭を入れて置くわけにはいかないしね。昔は100kgなんていう日もあったけど、いまは20kgぐらいかな」と話す浜野さんが、この日仕掛けた篭の数は300個。餌はイワシで300個の篭数で約35kgを使います。40分ほどで篭の投入が終わるとすぐに港に引き返しました。
「仕掛けたら一度港に戻って、アナゴが入るのを待ちます。時間にしたら2時間ぐらいかな。仕掛ける場所にもよるけど、時間が短いから、一発で当てることは難しいね」
時間制限があるために、一縄勝負となるアナゴ篭漁は場所の選択がそのまま水揚げにつながるシビアな漁でもあります。
「獲る、獲れないは自分の責任。だから漁は面白いよね。こんな時代だから大漁なんてことはめったにないけど、やっぱり人より多く獲れた日は嬉しい。獲れないといっても子供は二人いるし、船も買ったばかりだし、休んでなんていられない。(笑)」
日が暮れ、関西国際空港の誘導灯が輝き出すと、アナゴ漁の篭揚げが始まります。浜野さんは無線で仲間と連絡を取り、アナゴの数を競い合いながら、手際よくアナゴをイケスの中に入れていきます。
「ここではアナゴは捌いて出荷するのが古くからの習わしです。だから獲れたものは一晩寝かせて、翌朝に捌いて市場に出荷するんですよ。当然休みの日も午前中はそんなことをしているから、家族でどこかに行くことができないでしょ。子供たちには気の毒だなって思いますね」
この日はいつもより多く40kgほどのアナゴが揚がり、浜野さんもホッと一息。
「魚が捕れないとやっぱり苦しいけど、これで家族を養っているんだから泣き言なんていってる暇はないよね」
自然体で漁に取り組む浜野さんからは、漁師としての誇りと家族を持つ父親としての責任が伝わってきました。
大阪湾では篭を用いたアナゴ漁が主流。餌は一年を通じてイワシを使う
作業はデッキ中央で行われる。操舵装置、魚探もデッキに設置されていた
この日の水揚げは約40kg。昨年に比べ約半分の水揚げしかないそうだ
水揚げ後は一晩寝かして翌日捌いてから出荷する
「海の仕事が体に合っている」という第五天洋丸<DY-51>の船主、浜野正人さん
天洋丸は30ノットを超える快速艇