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篭壺漁

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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タコ篭漁

岩手県田老町

作業性に優れたDX-37Cで篭漁を営む佐々木さん。「船は快調そのもの。ヤマハで間違いは無い」と太鼓判を押す

リアス式海岸がさまざまな海産物を育み、豊饒の海として知られた岩手県太平洋沿岸。先の大震災による津波は大きな爪痕を残しましたが、現在では水産業を中心に復興への取り組みが始まっています。

 地元の水産高校の機関科を卒業したあと、遠洋のマグロ漁船に乗って世界中の海を駆け巡ってきた佐々木敏行さんが、生まれ故郷の田老町(岩手県)で沿海漁業の道に踏み出したのが10年ほど前のこと。
 「母親の面倒を見なくちゃいけない年になったからね」と、30年ぶりに地元の三陸の海に帰ってきた佐々木さんは、地元の漁師に教わりながら基本的な技術を身につけ、マグロ漁船で貯めたお金で中古の漁船を手に入れ、タコ篭漁(4〜8月)と鮭刺し網漁(11〜12月)を軸に、三陸の漁師として独り立ちしました。
 「若い頃は、何にもないこの町が嫌で嫌でしょうがなかったんだけど、今こうして見ると、こんな美しい海岸線は世界にもないんだよね」と、佐々木さんが故郷の海の美しさを改めて再認識した頃、東日本大震災の大津波が田老町を襲いました。
 「幸い自宅は高台にあったので無事だったんだけど、漁港にあった船は津波に持って行かれた」
 漁に出ることもできず、短期の遠洋漁業でアルバイトするなどして生活を維持してきた佐々木さんが、再び三陸の海へと出ることができたのは津波から1年半以上経った2012年11月。〈新洋丸〉(DX-37C-0A)が進水したのです。
 瓦礫こそ撤去されたものの、田老漁港には今も数多くの重機が入り、岸壁のコンクリートを打ち直すなど、土木作業のただ中にあります。船はまだ岸壁に横付けすることはできず、沖泊めを余儀なくされていますが、眩いばかりの新造船がズラリと並ぶその光景は、復興への息吹を感じさせる風景となっています。
 「負担は少なくなかったけど、古い船が新しくなったし、新しい船はデッキも広くて作業がしやすいし、悪いことばかりじゃない。そう考えるようにしてますよ」と佐々木さんはあくまでも前向きです。
 津波の前と後で、漁場の変化があったかどうかという質問についても、「まあ、前によく採れた場所でタコが入らなくなったというのはあるけど、それが津波の影響かどうかはわからないでしょ?」と、何でもかんでも津波のせいにしていては前に進めないというのが、佐々木さんの心意気です。
 沖から見れば津波の前と変わらない美しい風景を見せる三陸海岸をバックに、元気に漁に出る漁船の姿は、この地の復興のシンボルとなっています。

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大型のミズダコが次々と籠に入る

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獲ったタコは1匹ずつ網に入れる。

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使いやすい艏デッキ。安定性の良さは佐々木さんのお気に入り

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「いつまでも考えていたら前に進めない」と佐々木さん

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田老の漁港はまだ復興作業中だが、漁師たちは沖に出る日々を取り戻しつつある

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2012年11月に進水したDX-37C-0A〈新洋丸〉

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