篭壺漁
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
ツブ貝篭漁
北海道えりも町
篭を揚げてツブ貝を選別機にかけ、空の篭に餌を入れて海に戻す。作業はこれを繰り返す
襟裳岬の東側に位置する庶野港は眼前に太平洋が開け、オホーツク海の気まぐれな天候に左右されやすく、年中風が強く吹く場所と言われています。ここで一年を通じてツブ貝篭や鱈網、エビ篭などの漁を行っているのが山岸克也さんです。進水してからおおよそ1年。山岸さんのツブ貝篭漁に同行しました。
早朝5時。ツブ貝の餌となる秋アジ(カラフトマス)を船に積み込むと第二十八白鴎丸は舫を解き放ちました。ツブ貝の漁場は港から30分ほど。船を進める船主の山岸克也さんは海面に気を配りながら舵を捌いています。
「いま庶野では5隻の船がツブ篭の漁をしていますので、漁場は5区画に分けられていて、一年毎に隣の漁場に移動する仕組みです。場所によって水揚げの量が違うかと言えば、総量ではさほど変わらないと思います」(山岸克也)
このツブ篭漁は秋アジの切り身を篭に入れて、一晩以上寝かせたものを水揚げする漁で、6月から9月にかけてが最盛期。漁場へ到着するとすぐに水揚げの作業に入ります。白鴎丸では、篭は左舷側から引き揚げられ、貝はそのまま選別機を通じて艫のデッキに送られて、艫ではツブ貝の選別作業行う仕組みとなっています。
「まったく休む暇がないんですよ」
艫のデッキで選別作業を担当する息子の山岸祥一さんはそう苦笑しながらも、次々と送り届けられるツブ貝を手際よく捌いていきます。
「一口にツブ貝といっても巻き貝の総称で、真ツブ、沖ツブ、毛ツブから灯台ツブ、おかしょなど、いろいろな種類があります。篭にはそういったツブ貝が混在していますので、水揚げが始まったらずっと艫にいて貝の選別をすることになります」
選別作業はもっともスピードが求められる他、出荷時のチェックも兼ねているので、気を抜くことができません。
「いつ時化てくるかわからないから、なるべく海の上の作業を短時間で終わらせたいと考えています。体力的にはしんどいですが、毎日海に出られるとは限らないのので、意識しなくてもみんな漁場に行くとせっかちになりますよね(笑)」(克也さん)
朝の5時に始まった作業は2時過ぎに沖での作業を終え、白鴎丸は水揚げを行う庶野港へと戻りました。祥一さんは水揚げを手伝い、デッキの清掃を終えると作業小屋へと車を走らせます。
「これから作業小屋に行って、明日の餌を作ると、終わりになります。漁がある日は肉体的にも結構しんどいですけど、時化て休みの日もありますからね。いつかは親父のように漁で生計を立てていければと思いますが、いまはまだ一日一日を精一杯やるだけです」
様々な航海計器が並ぶなか、克也さんは作業から目を離すことなく、舵を取り続ける
水揚げした貝はすぐに選別器にかけられる
選別機を通して、運ばれたツブ貝を種類ごとに分けるのが祥一さんの役割。篭の作業同様に休む暇はない
祥一さんが作業を行う後部デッキには、その日の水揚げとなるツブ貝が満杯に入った篭がところ狭しと並べられる
操業中は顔を合わせる暇もないが、陸に上がれば優しい笑みが浮かぶ、船主、山岸克也さん(右)と息子の祥一さん(左)
第二十八白鴎丸(DX-97B-0A)。「走りも使い勝手もいい。自信が湧く船だ」とは山岸さんの第一印象