採貝藻
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
シジミ漁
青森県十三湖
機械曳きと呼ばれる十三湖のシジミ漁
遺跡や貝塚などが発掘され、古代へのロマンを駆り立てる青森県の津軽半島沿岸。その北部湿地帯に海とつながる広大な湖、十三湖があります。 海水と淡水がほどよく混ざる泥質の湖底はまさにシジミの宝庫となっています。
十三湖でのシジミ漁には30尺以下の比較的小型の船が使われていますが、みなディーゼルエンジン・シャフトドライブ仕様になっています。
「鋤簾を曳いて海底のシジミを探るのですが、それには低速でも馬力が出るディーゼルエンジンが合っているんです。船外機やスタンドライブが船尾にあたると、鋤簾を揚げるときに邪魔になるんですよ」
松橋武一さんは十三湖で20年以上にわたってシジミ漁に励んできたベテランの漁師さん。十三湖で獲れるシジミは『大和シジミ』というブランドで全国に浸透しています。
「シジミ漁が特に盛んになったのが、ここ10年です。高速道路ができて流通が発達したためでしょう。それまでは、冬になると出稼ぎに行くこともありました」
以前は冬になると東京へ働きに出ることもあったという松橋さんですが、今は漁で大忙しだと話します。
「ここ6~7年、浜値は小粒ものがキロ300円以上、大粒のもので600円と安定しています」
これもひとえにシジミの質の良さのおかげです。大和シジミは黒々しており、大粒のものは直径3、4cmにもなります。
「漁は毎年4月10日から10月15日までと決められていて、一人あたりの漁も1日200キロ以上は採ることができません。また採ってよい粒も春先は3分(8mm)以上、夏は4分以上となっているから、小さいのは湖に戻すようにしています」
こうした努力がブランドを育て、限りある資源の枯渇も防いでいます。安定した漁の秘密がここにありました。
「これまでは船が小さかったから、いつもスタートはビリでしたが、今年は新しい船を進水させたので、いまでは誰にも負けませんよ(笑)」
松橋さんの新造船は<DX-29D>(130馬力)。平底で浅瀬の漁に対応した十三湖向けの特別仕様です。
「従来、選別器の動力はエンジンからベルトで取っていましたので、選別作業は走っているエンジンの回転に左右されました。今度は専用モーターを使った電動の油圧式なので選別作業もスムーズになりました。それと船首の水タンク(鋤簾を曳く時にバランスを取るため)の注水作業も自動化したので、とても楽になりました」
新型船に大きな望みを託す松橋さん。今年も10月15日まで毎日湖で漁に励みます。
シジミ漁は夫婦で。武一さんが鋤簾を、奥さまが選別をという具合に阿吽の呼吸で行われていた
水揚げ後、電動油圧式の選別器にかけ、小さな貝を戻す。徹底した資源管理が『大和シジミ』を支えている
1回に数キロずつの水揚げで、1日に200キロまで収穫する。大粒のものは『大和シジミ』と呼ばれている
「腰痛には誰もが悩まされる」と松橋さん。鋤簾を引き揚げる作業は体に堪えるといいうも、豊漁の喜びには代えられない
浅瀬の漁に対応した十三湖向けの海宝丸<DX-29D>