船体や艤装
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
船首形状と波切り、波さばきの関係
大漁ニュース 第42号掲載
船首の形状が波きりにどう影響するのか。これは日常の経験から、針のように鋭い船首形状ならある程度波が起こらないと想像することができます。ですが現実には船を設計する場合には船全体のバランスが求められますので、波きりに関して注意を払うべき点を以下のように決めています。
まず船が水面に接する部分で、船体を水平に切断してみましょう。図1はその断面です。切断する位置によってさまざまな形が現れますが、(1)と(2)の二つの要素が波きりの状態と密接に関係します。
(1)船首先端の平らな部分
(2)船首が先端から後方へ向かう形状が船のセンターラインとつくる角度角度α
先端の幅が広く角度αが大きいと、船が前進する時に水を横方向へ押しのけようとする力が大きくなりますので、波の抵抗が大きくなることは容易に想像できると思います。
次に船体センターラインに沿って、縦方向に垂直に切断してみましょう。この場合も切断する位置によってさまざな形が現れますが、波切りに関係するのは、図にある
(3)切断面の水平に対する水面近くの傾き角度β
となり、先に挙げた(1)(2)とあわせて、この三つの要素が複雑に絡みあって船首形状のデザインが表現されています。
波切りを良くしようとする観点からは、(1)も(2)もできるだけ小さくなるようにデザインするのが原則ですが、船首の荷受けや浮力の前後配分等も配慮しなくてはなりません。
次に縦方向へ切断した場合の(3)も角度βの小さい方が波切りが良く、波へ船が突っ込んだ時に船首を持ち上げる力が働いて有利になります。逆に角度βが大きい場合、船は衝撃を受け止め、波の抵抗によって速度が急速に落ち、前のめりになってしまいます。
ヤマハではこれらの要素を基に各部位における角度βの目標を設定しており、新しい船形を設計するごとにそれぞれをチェックしています。
波切りには直接関係しませんが、波返しの位置と寸法が波さばきを変えることはご存じでしょうか。前進する船体に当たった波はその一部が船体に沿って斜め後方へ上がります。水の勢いがなくなるところで十分な幅のある波返しに当てるようにすると波しぶきがが上がるのが少なくなります。
このように船首形状は、波切りや波さばき、さらに波返し等、それぞれの要素を融合して決定されていきます。
※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。