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船体や艤装

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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イケススカッパーについて・その(1)

大漁ニュース 第46号掲載

静止時のイケスの水代わり
 自然循環でのイケス内の水代わりに影響を与えるものとして、次のことが挙げられます。

 1:イケススカッパーの合計開孔面積とイケス内の水の量
 2:イケススカッパーの取り付け位置
 3:静止時の船の揺れ方(船の横揺れ周期や波の周期など)

 1のイケススカッパーの合計開孔面積については容易に想像がつくことでしょう。大きければ当然水代わり の回数(量)も増します。通常使用されているスカッパーでは、開孔面積が同じなら、その網の太さによる影響はほとんどありません。
 いろいろなイケススカッパーを集め、閉の状態からスカッパーを開けてイケスの中に水を入れ、水面が外の喫水と一致する時間を計測してデータを取ると、開孔面積<A>とイケス内の水の量<V>及び時間<t>の間には、


A×t×k1=V  (*k1:定数)


といった式が成り立ちます。そして、これをグラフに表すとたいへんはっきりとした線となって表れます。
 2のイケススカッパーの取り付け位置と3の船の揺れ具合は互いに関連があります。
  開孔面積があるだけでは、先の実験でテストしたようにイケス内の水が喫水と一致したところでバランスしてしまい、水代わり は起こりません。
 これを逆に言えば、イケスの中の水と船底の水に圧力差が生じると、初めてイケスの中の水が出たり、イケスの中に水が入ったりすることになります。つまり水代わり が起こります。
 船が揺れたり、船はアンカーなどで固定されているものの水の流れがあるような時に、この圧力差が生じてイケス内の水と船底の水の圧力が同じものになろうとし、その結果水代わり が起こるわけですが、まず船の動揺による水代わり をスカッパーの位置について考えてみましょう。

 水代わり のためには、スカッパーの位置は船の中心線よりもなるべく遠い所にある方が良いことになります。その方が、上下方向の動きが大きく、圧力差も大きくなり、イケススカッパーの開孔部を流れる水の速さが増すからです。

 ある瞬間船が図のように傾いたとします。

<図>

イメージ

 直立時の水面は実線のようになり、外の水面と高低差が出来るため、左側では船外へ、右側では船内にそれぞれ水が動きます。実際にはこれに船の揺れ方(スピード)による圧力変化が加わります。地域によっては船側にスカッパーを取り付ける場合もありますが、この場合も動揺する時の軸より遠いので効率の良い位置となります。
 レジャー釣りで、よく「釣り人が船上で寝てしまうと魚が死ぬ」といった話を聞きますが、これなども起きて釣りをしている間は船が適当に傾いて、イケス内の水代わり が行われているからだろうと推測できます。

 以上のように、水代わり の面からのみイケススカッパーを考えますと、その数は多い方がよく、位置は船側に近い方がよいということになりますが、取り付けられる船体の外板強度の面から見ると外板に孔を開けるので、それだけ強度が低下するのみならず、孔の周辺に応力が集中します。ですからスカッパーの間隔を十分にとる必要が生じてきています。


(つづく)


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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