船体や艤装
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
イケススカッパーについて・その(2)
大漁ニュース 第46号掲載
走行時のイケスの水代わり
走行時のイケスの水代わりについては、イケススカッパーに付いている出っぱり(潮かき)が大きな意味を持っています。
船の前方から走ってきた水は“潮かき”に当たって流れの方向を変えると同時に船底方向(上向き)の圧力も増します。
これは水の流れに板を差し入れて実験することができます。図Aは水流の中に板を入れた時の流れです。板の中央ほど圧力が高くなり、末端では圧力も高くなりません。実際には水しぶきもあがるので、こんなにはっきりとは見ることが出来ませんが.....
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また、板の裏側から見ると、表側とは逆になります(図B)。中央ほど圧力が低くなり、水面は凹んだ形状になります。この凹みは板の深さによりはっきりとした影響を受けます。走行時のイケスの水代わりは、この板の前面にできる圧力が高くなる現象と後面に出来る圧力が低くなる現象が組み合い起こるわけです。
走行時のイケスの水代わりに関する問題と対策について
●イケスの中の水が無くなる、または静止時より少なくなってしまう場合
A:イケススカッパーの潮かきが、全部船尾側(入りの状態)になっているか調べてください。潮かきが船首側、つまり「出」の向きになっているスカッパーがあれば、そのスカッパーを閉めにして走り、イケスの水位を見てください。OKならスカッパーの向きを逆にしてください。
B:すべてが「入」の方向になっている時は、ガムテープなど、水に濡れても破れないもの(布でも良い)を小さく切ってイケスの中に入れてください。イケススカッパーには水が入るものと出ていくものがあるので、目印をイケスの中に入れておけば、水が出ていく部分に吸い付くはずです。出ていく場所が分かったら、そこを閉じれば水の量は増えます。ではもう少し踏み込んで、なぜこの様なことが起こるかを考えてみましょう。
図はイケススカッパーの断面です。船主方向から流れてきた水はイケススカッパーに当たり、水の流れが下方に修正されます。ちょうど、板の裏側と同じ現象が起こっているのです。
角形のスカッパーでは、この現象は正常につける(スカッパーと船底が完全に一致)と起こりません。しかし、船底と角形スカッパーに段があるとやはり水は出ていきます。理由は全く同じです。
●水が入りすぎる場合
A:イケススカッパーの向きを30度とか60度といった要領で1カ所動かしてみてください。いっぺんに180度まわす。つまり「入」から「出」の方向に動かしてしまうと、やりすぎとなる場合があります。なぜなら、「入」の場合でもイケススカッパーの半分近くの部分で水は抜け出ており、「出」にするとイケススカッパー全体から抜け出てしまうことになるからです。
B:潮かきの長さを短くしてみましょう。
この場合も一度に短くしすぎて、水の「出」が多くなりすぎる結果になると困りますので、少しづつ様子を見ながら行ってください。
※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。