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船体や艤装

日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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旋回窓について

大漁ニュース 第104号掲載

ブリッジのデザインに対応した旋回窓
 ブリッジのデザインを現在のものと古いデザインのタイプと比較してみると、前方の窓の傾斜角がかなり変化していることがわかります。最近のブリッジ前面の窓は斜めになる傾向があり、このようなデザインの変化により旋回窓に要求される性能にも変化が起きています。古いブリッジのデザインの時には水漏れの無い旋回窓が、取り付け角度が変化した(寝てきた)為に水漏れが発生するようになりました。そこで旋回窓のメーカーの協力を得て、現在のブリッジデザインに対応した旋回窓の開発がスタートしました。

旋回窓のシール方法について
 旋回窓の固定部分の枠と回転部分の枠の間のシール方法は、ラビリンスパッキンが使用されます。ラビリンスパッキンとは図に示すような迷路構造で、いくつかの部屋とその各部屋を仕切る壁からできています。内部と外部の圧力差はこの仕切り壁の先端の隙間と部屋の容積の組み合わせにより軽減され、漏れが防止される構造になっています。この仕切り壁の先端の隙間は少なければ少ないほど性能が良いわけですが、加工、組立精度やモーターの軸のたわみといった要素から限界があり、一般的には0.2~0.5mm程度と言われています。こうした構造からも想像できますように、通常のOリングとかゴムパッキンのような安全なシールではなく、多くの迷路で漏れを防止しているので、特に外側の部屋には水が侵入してきます。この迷路に紛れ込んできた水をどうやって外側に排出するのか、また、排出の穴の位置といったものが重要になってきます。

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ブリッジのデザインと旋回窓
 ブリッジのデザインが変化したことにより、旋回窓の取り付け角度が変化し、ラビリンスの仕切り壁の隙間が大きくなったり、排水の穴の位置が部屋に滞留した水を外部に排出するのに適さない位置になってしまったり、本来のシール性能が発揮できず、ブリッジ内に水漏れするケースが増加してきました。これらの現象を改善するため、傾斜角度が寝てきた窓にも対応できる旋回窓の開発を旋回窓メーカーに協力依頼をし、開発がスタートしました。ラビリンスの形状や排水孔の位置がいろいろ試作されました。
 しかし、進入した水は内壁が高速回転している関係とラビリンスの部屋は十分広い部屋ではありませんから、必ずしも最も低い位置に集まるわけではありません。従って進入した水をいかに早く排水できる位置に穴を開けるかは試作で見つけるより仕方がありませんでした。もっとも排水能力を考えれば穴の数や大きさは大きく多い方が能力も向上しますが、その分逆流することも考えられます。
 試作品では旋回窓の取り付け角度がいろいろと変化するように調整しながらガラスの面に消火栓から水を放水して、実験を行いました。同時に比較した従来の各社の旋回窓には、水の旋回窓正面から放水で回転が低下して、止まってしまうものまでありました。また、通常はガラスが旋回する旋回窓タイプが多いのですが、ワイ パーブレードをガラス面に当てて旋回させるものまでありました。旋回窓の場合、モーターの重量や回転部分全体のひずみをラビリンスパッキンとのかねあいで十分小さくする必要からアームが太く、視野が狭くなりがちでしたが、このタイプではワイパーブレードを支持するアームだけですから比較に採用しました。このタイプは水密の点では有利でしたが、多量の水の中ではワイパー部分に大きな水の抵抗を受けて回転が停止してしまいます。また、操船者とブリッジ前面の窓との距離が近い場合には、目の前でワイパーブレードが回転するので、うるさく感じられることもありました。

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 旋回窓の試作品はラビリンスの形状で侵入してくる水の量を最小限に抑え、排水孔の大きさ、位置、数は排水性能を満足できるように選定しました。このようにして最近のデザイン傾向に適合した旋回窓を開発し、現在のブリッジに至っています。
 なお、旋回窓については次の解決すべきテーマについて引き続き旋回窓のメーカーに協力をいただきながらチャレンジしているところです。この件についてはいずれお知らせできる時がくると思います。


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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