一本釣り
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
ヒラメ曳き釣り
茨城県阿字ヶ浦
過去何回も一番漁を記録した飛田さんでさえも「漁は一生勉強」という
首都圏に高級魚として出荷される常磐産のヒラメ。1月を除く冬の3ヵ月はヒラメの曳き釣り漁が最盛期を迎え、100隻以上の船が日立から鹿島沖にかけて操業します。
茨城県ひたちなか市でヒラメ曳き釣り(一本釣)漁を営む飛田弘さん(64歳)は、学校を卒業後、北洋の大型船に乗りサケやマスを捕り、25年前に故郷の磯崎に戻ってきました。
「大型船に乗るのは冬の半年だけだから、残りの半年は磯崎に帰ってきてヒラメを釣っていたよ。大型船を降りてからはヒラメの曳き釣りをメインに時期によってイナダやメジマグロ、渡りダコなどをやってきたね。何でも一番じゃないと気が済まない性格だから、夜も明けきる前から誰よりも早く船を出した」
飛田さんが乗る飛弘丸<DY-37B-1A>はMD-859KUHとの組み合わせ。「型がいいから安定性は抜群」と信頼を寄せる船に乗り込み、出漁します。
漁は年間を通じて日の出から正午過ぎまで。潮がもたらす水温の変動が漁の成果を左右するために、ポイントも日立沖から鹿島灘まで時期によって異なります。
「曳き釣りには潜航板を使いますが、その潜航板と海底との距離(タナ)をどれくらい自分の思い通り正確にとれるか。それがこの漁の基本だし、最初に習うことだね。実際には海底近くの潜航板の動きが見えないから、腕と勘で養って行くしかないんだよ」
取材にお伺いした日の仕掛けは水深35尋用(63m)の仕掛けで、幹糸(80号ナイロン)の長さは65尋(117m)、潜航板から先の枝糸には4尋(7.2m)間隔で三股サルカンを三つ付け、サルカンから矢結びにした枝糸1m先に針を付けます。合計で四つの針には手製の疑似餌の他に、イワシやサヨリの切り身、先端の糸の針にはドジョウやタコ等の既製品の疑似餌をつけます。
時速2.3から2.5ノットで船を走らせながら、すべてを1人でこなすヒラメ漁ですが飛田さんは竿を使う曳き釣りより、手で手繰る方が好きだといいます。
「仕事として考えるなら曳き釣りが一番効率的だと思うけど、漁そのものの面白さは手繰りには勝てないよ。ヒラメが喰った時に伝わる手応えは漁の中で最高の瞬間だよ」
浜では何回も年間を通しての一番漁(最高水揚げ)を記録した飛田さん。それでも飛田さんは謙虚に「漁は簡単なようで難しく奥が深いよ。魚捕りは一生勉強じゃあないかな」といいます。
潜航板は水深により5種類の大きさを使い分ける。白や黄色の目立つ色の方が効果がある
この日の仕掛けはイワシとサヨリの切り身のほか桜の木を軸にした疑似餌を付ける
こちらは牛の角から作り出した疑似餌。上の疑似餌にはニシンの皮が巻き付けてある
漁業者が推進する30cm未満のヒラメの保護運動。茨城県では保護期間や保護区域を設けて、乱獲を防いでいる
飛弘丸は<DY-37B-1A>にMD859KUHの組み合わせ