貝類
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
牡蛎養殖
北海道サロマ湖
牡蛎の収穫作業。最新の艤装が作業の合理化を図っていた
汽水湖としては日本最大の面積を誇るサロマ湖。オホーツク海に面し、佐呂間別川をはじめ大小13もの流入河川が豊富なミネラル分や貝類の育成に欠かせないケイ素を供給します。牡蛎やホタテの養殖が盛んなサロマ湖で、父親の代から牡蛎の養殖を営んでいる加藤広彦さんの養殖作業を取材させていただきました。
北海道の汽水湖として、さらには養殖牡蛎の産地として知られるサロマ湖は、湖水の塩分濃度が31~33%と通常の海水に近い状態の湖です。
「湖の場所によって微妙に塩分濃度が異なるんですね。牡蛎は比較的塩分濃度が薄い場所が適しているんです」という加藤広彦さんは、そうした牡蛎養殖に適した場所を選んで3本の養殖棚を管理しています。
ひとつの養殖棚の長さは100m。そこにタネ牡蛎を付けたロープ(7m)を250本ほど吊して育成します。「4月の海開けに宮城県からタネ牡蛎を仕入れて育成して、10~12月にかけて収穫します。2年かけて15cmくらいまで育てる2年牡蛎もありますよ」
取材にうかがった日は小雪が舞う寒い朝。午前7時前に〈第十八湖洋丸〉(DV-47A-0A)を出航させた加藤さんは、まっすぐ養殖棚に向かいます。この〈第十八湖洋丸〉は昨年の4月8日に進水した新造船です。船が養殖棚に着くと、加藤さんは後方のデッキで牡蛎の収穫作業に取りかかります。最新の艤装が作業を合理化していて、あっという間に鉄製の大きなカゴが牡蛎でいっぱいになっていきます。
収穫した牡蛎を港に持ち帰ると牡蛎とその他の貝殻などを仕分ける機械に放り込み、牡蛎だけをきれいに取り出します。取り出された牡蛎は専用の水槽で丸1日畜養されます。
「この紫外線殺菌された水の中で1日畜養することで、無菌状態の牡蛎になるんだよね」
加藤さんが収穫した牡蛎の仕分け作業を行っている隣で、奥様のなぎささんとご両親が牡蛎の剥き身作業を行っています。専用の牡蛎ナイフを使って、驚くような速さで牡蛎を丸裸にする熟練の技です。ここで剥き身にした牡蛎は、翌朝の出航前に市場へ出します。
「川のおかげだね。たくさんの川がたくさんの栄養をサロマ湖に運んでくれるおかげで、他にはない濃厚な味わいの牡蛎が育つ。北海道の綺麗な川だから、僕たちも安心して仕事ができるんですよ」
豊饒の湖への感謝の気持ちを抱き、多くの人に喜ばれる美味しい牡蛎づくりに、加藤さんは今日も取り組んでいます。
水揚げした牡蛎はすぐさま機械で選別・仕分けされる
選別器で仕分けされた牡蛎は専用の水槽で丸1日畜養される
ご家族総出で牡蛎の剥き身作業
サロマ湖で自信の牡蛎を生産する加藤広彦さんと奥様のなぎささん
第十八湖洋丸(DV-47A-0A)。抜群の作業性を誇る艏ブリッジ仕様