藻類
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
海苔養殖漁
福岡県大川市
箱船を巧みに操る正嗣さん
福岡県大川市は有明海に面して福岡海苔の産地として知られ、シーズンを迎えると海面には支柱張りの海苔網が数多く見受けられます。その大川市で海苔養殖を営む古賀正嗣さん(30歳)は、同地区でも若手の代表格であり、現在35反分の海苔網を管理されています。
日本有数の海苔の産地として知られる有明海では、干満の大きさから支柱張りや浮き流し式など、その場所に合わせた海苔網を敷設して生産力を高め、高級品の贈答用からコンビニのおにぎりに使用される業務用の海苔まで多種多様な海苔が生産されています。
「ここでは昭和28年に大水害が起きたのをきっかけに牡蠣養殖から海苔養殖へと転換しました。当時は海苔一枚が10円の高級品で、石炭が黒いダイヤなら海苔は黒い札束と言われた時代でした。私もまだ若かったですが、当時は専業の人ばかりではなく、農家との兼業の方も多かったですよ」
そう昔を振り返るのは正嗣さんの父、古賀正八さん。現在では海上での多くの仕事を正嗣さんに任せて、自らは水揚げされた後の加工の仕事を受け持っています。
「これだけ海苔の作り方が完成されていても、見た目に美しい海苔というのは、自然の力に頼ることが多くて、毎年コンスタントには作れません。だからこそ70軒ある中で自分たちが出荷した海苔が一番だと評価された時には嬉しいですし、仕事の励みにもなります」
正嗣さんも同様に口を揃えますが「見た目もそうですが、海苔の味に違いがあることを多くの人々に知っていただきたいですね。質の良い海苔を出荷して、ひとりでも多くの人に味の良さを伝えられればと思います」と言います。
取材に伺った日は夕方からの摘採で、漁場に着く時間には陽も暮れ、サーチライトとヘッドライトを頼りに50枚分の海苔を水揚げしました。
「摘採は干満の時間で行いますので、シーズン中は潮に合わせて1日が決まりますが、だいたいは夕方から夜にかけて摘採を行います。光合成の関係からも夜間に摘採した方が養分が多く含まれているので、味も良いとされています」
自然に影響される海苔養殖だけに頭で考えるよりも、海に出て経験を積むしかないという正嗣さん。その視線の先には正八さんの背中と豊かな有明の海が広がっていました。
箱船からの積み込み。どの作業にも無駄な動きがない
DW-430の特徴のひとつが積載量と積載時の安定性。正嗣さんは「船足もよく、頼れるパートナー」と太鼓判を押す
古賀さんは夜間積み専門。このように運搬船とヘッドライトの明かりを頼りに刈り取りを行う
陸上では来シーズン用の種付けが行われていた
正嗣さん(左)と父、正八さん(中央)。長年海苔養殖に携わり大川市の海苔業者を代表するひとりだ
海苔運搬船のベストセラーDW-430-0A