藻類
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
ホヤ養殖
宮城県牡鹿半島
ホヤの棚は港の目の前。水深20~40mの環境が適しているという
三陸海岸の南端に当たる牡鹿半島は、カキやワカメと並びホヤ養殖の産地として知られ、現在では3年を1サイクルとして多くの浜で養殖が営まれています。今回はその中のひとつ、寄磯浜で30年以上、この養殖に携わっている遠藤茂さんを訪ねました。
海のパイナップルと呼ばれ、独特の風味を持つホヤですが国内での流通量は少なく、牡鹿半島で生産される出荷の8割から9割は韓国へ輸出されるそうです。
「ここでホヤの養殖が始まったのは昭和40年代の中頃で、本格的にスタートしたのは今から30年前かな。当時はワカメの養殖が多かったんだけど、台風被害にあって、それがきっかけでホヤに取り組む人が増えてきたんだと思う」
そう話すのは、寄磯のリーダーとしてホヤ養殖を営んでいる遠藤茂さん。ホヤは別の浜で種付けされたものを購入して、水深20mから40mの湾内で2~3年ほど育成させて出荷します。
「ホヤの養殖は1年目が水深20mほどの浅場で、2年目に入って沖に移動させて育てます。水温と塩分濃度がホヤの質を左右しますので、海まかせ、天気まかせですね。海で私たちがやることはロープの付着物を清掃するぐらいです」
他の養殖に比べて手がかからないと言いますが、水揚げの最盛期となる夏には、朝3時に出港して養殖ホヤの水揚げを行い、市場の時間に合わせて生ホヤを出荷した後に、剥き身の作業が11時頃まで続けられます。
今シーズンの水揚げは例年になく少ないものだったという遠藤さん。潮の流れや天候に左右されるだけに出荷が終わるまでは気が休まることはないといいます。
「昔に比べれば、ホヤの養殖も機械化でだいぶ楽になっていると思う。特に沖の作業は船と船外機のおかげで、水揚げの時にもゆとりが出るようになったね。船を変えるごとに安定感が増している気がするよ(笑)」
いいホヤが育った時はいつになってもうれしくなる。そう話す遠藤さんからはホヤへの愛着がにじみでていました。
ホヤのチェックする遠藤さん。綱の手入れが沖の作業の大半は占める
寄磯浜ではすべての和船がヤマハ船外機を搭載していた
バッテリーを充電するソーラーパネル。寄磯では多くの船に採用されていた
ヤマハの船は安心感が違うという遠藤さん。さまざまなホヤ養殖の知識を持つ浜のリーダーだ
カウンターローテーション仕様の船外機を搭載。動きもスムーズだという