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日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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小型漁船質問箱・その(1)

大漁ニュース 第73号掲載

●質問:ヤマハ漁船は波に強いとか波の中でも乗りやすいとよく聞きます。どのようにしてそうした船をつくっているのですか? また波乗り性能と関係する性能があればそれについても教えてください。

●答え:波の中で乗りやすい船の条件として次のような事項があります。

1)波の衝撃が少ないこと
2)方向安定性が良いこと
3)追い波によって船首を振られ、波に突っ込むようなことがないこと(ブローチングを起こさない事)
4)波しぶき等がデッキに打ち込まないこと
5)強度が十分にあり、安心して乗れること

 私たちが漁船を開発、設計する際にこれらについてどのように考え、最終的にどのように船型を決定しているかをご説明しましょう。

1:波の中を船が走る時の衝撃の強弱について
(A)船をその中心線と平行に切断した時に船底部分が描く線(B・L=バトック・ライン)の水面との角度(図Aの角度a)

<図A>

イメージ

(B)船底のV角度の強弱の二つがとくに大きく影響します。
 ヤマハでは(A)のバトック・ラインの角度には目標値を設定して、船型を決定する時に利用していますが、この角度が小さいほど船が波に突っ込もうとする時に、船首を持ち上げる力がより強く働きます。また、この性能は、とくに追い波でのブローチングに対してのより良い性能を発揮してくれます。
(B)の船底のV角度は、その強度を高めるほど衝撃を和らげる効果を発揮します。
 このふたつの要素を満たせば衝撃の少ない船になるわけですが、漁船ではそればかり追求するわけにはいきません。積載量との兼ね合いもあるからですが特にV角度のきつい船の設計では、積載量やローリング性能との兼ね合いも考慮し、トータルバランスとしてOKか否かを判断しながら細部の仕様を決定していきます。

2:方向安定性について
 方向安定性については船体形状、舵の大きさのバランスでその良否が決まります。方向安定性が良いということは、保針性が良いと言い換える事もできますが、保針性を強くしすぎると舵効きが犠牲になることもあります。また不要に舵を大きくすると大きな操舵力が必要となり、そのための装備を行わなければいけません。方向安定性についてはこうした保針性と操縦性をいかに上手にバランスよく調整するかが重要になります。

3:ブローチングを起こしやすいか否か
 このことは先に挙げた1と2,の要素が影響します。船が突っ込んだ時に早いタイミングで船首が上がってくればブローチングは起こらないわけです。また、波に突っ込んだ時でも水中部分の中心位置が適当な位置にあるとか、船尾吃水が適度に深い、舵面積が確保され、波の凹凸の中でも十分な舵効きを発揮できるといった要素が大切になります。

4:波しぶきが打ち込まない
 船首部分の形状を工夫する事で波しぶきを低減することが可能です。フレアーや十分に幅の広いチャイン、そしてチャインの波を捌いている部分での高さを確保し、さらに波がチャインにぶつかる部分での水の向き、スピードによってドライな甲板の船か、ウェットな船かが決まります。
 また、波の中で水が打ち込んでくるかこないかは、乾舷の高さも大きく影響します。これについては実験によって船首乾舷の高さが水線長に対して18%以上あればokというデータを得ていますが、使用する海域によっては必要乾舷の高さは異なり、例えば比較的穏やかな瀬戸内海を想定すればこのような高さは必要ではありません。

5:強度が十分にあり安心して乗れること
 ひとりひとりのお客様から安心感や信頼感のある船という評価をいただくために強度データや材料試験による確認、強度基準、耐久実験、品質管理などさまざまな項目を設けて、よりよい船づくりを目指して、これからも皆様に末永くご愛顧頂けますよう一層の努力を続けていきます。


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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