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日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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『ヤマハ最初の量産漁船DW-40の開発話』

大漁ニュース 第86号掲載

昭和40年に17mのマグロ延縄漁船を建造してからは、しばらく和船の開発が進み、その後、和船の導入によってFRPの適正が改めて確認されたとことで、量産型漁船の開発話が進み始めました。今回はこの量産型漁船の初号艇となったDW-40の開発について振り返ってみましょう。

 有明海は、熊本、福岡、佐賀、長崎に囲まれた遠浅の海で、潮の干満の差は大きく、筑後川を始めとするさまざまな河川が海苔に必要な栄養分を供給する、海苔養殖には最高の条件を備えている海域のひとつといえます。そして、この海域は漁船を使用する条件もほぼ同一で、似たような船型の船が当時は約6千隻あると言われ、同一船型の大量生産が可能なFRP漁船が、まさに最適な場所として選んだのがこの有明の海苔養殖向け漁船でした。
 この海域の木船をFRP化するにあたって、細かい使用条件については地元の造船所と船主様との打合せを通じて教えて頂きました。FRP以前の木船では、スピード性能が高く、船尾に羽根(一種のフラップ)を取り付けることでトリムが過大になるのを防ぎ、半滑走域での効率の良い走りが可能となっていました。しかしながらこの羽根を設けることで、曳き波を乗り越えるときやチョッピーな海面を走る場合にはコントロールすることが非常に難しい船でもありました。
 これらを踏まえて建造を進めていきました。まずは係留時に浜座りが可能な船型であること。そして羽根(フラップ)が無くても、安定した走りが出来ることなどです。
 こうした問題点をクリアするために、さまざまな角度から研究を進めました。船尾は従来からある5枚船型と同じような断面とすることにより、滑らかな旋回の動きを得られるようにしました。合わせて主要部の仕様詳細を詰めていきましたが、開発を進めていくうちに、できあがった船のイメージは従来からある有明海の海苔養殖船や伝統的な和船と同様に浅く、細長く、フレアーの無いものでした。そしてこの日本独特の船型を踏襲した船の模型を作成してテストを重ねることで、抵抗が少なく、安定性に優れ、操船のしやすい船に仕立てることができました。
 こうして完成間近となったDW-40ですが最終段階においてちょっとしたトラブルに見舞われました。試作艇が完成して試作エンジンの慣らしが終わり、スピードテストが始まったのですが、何度エンジンの出力を上げようとも計画していた速さが出ずに、プロペラのチェックから始まり最後にはプロペラ計算までやり直す始末。そんなことをしているうちに、実験艇からプロペラの引き揚げ管の後方で圧力が低下して空気が入っていくようだとの報告が。
 そこで引き揚げ管を密封して再度船を走らせると、計画通りのスピードが出るようになりました。これは中空の管がパイプの役割を果たし、プロペラが扇風機代わりになっていた為にスピードが出なかったようです。余談ですが理論上の推進力と実際のプロペラの推進力はどうしてもずれてしまうのですが、その一番の要因となっているのがこの空気です。プロペラが空気を噛むことで推進力にロスが生じて、スピードが落ちてしまうのです。
 このようにして開発されたDW-40は、最初の一年はなかなか受け入れてもらえませんでしたが、浜に一隻、もう一隻と入るにしたがって急速に普及していきました。


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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