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日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。

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船型要素の決定手順・その(2)

大漁ニュース 第112号掲載

 船型要素の決定手順・その(1)では、軍艦カーブについての話をしました。この軍艦カーブの他に、もうひとつティラーチャートという9種類の資料があります。
 これは、アメリカ海軍のティラー水曹の委託で、ある基準船型を元に系統模型実験をまとめたものです。今回はこのティラーチャートをまとめるための条件変化とそれをカバーしている模型の相対的なイメージについて、断面図を見ながらお話したいと思います。

1.吃水幅比=B/H
 吃水の深さをH、船の幅をBとして、それぞれを変化させていきます。BをHで割った数値、すなわちB/Hが小さいほど、細かくて吃水の深い船となり、B/Hが大きくなるにつれて幅広い、吃水の浅い船型となります。
 基本船型はB/H=5.3で、B/H=4~15までの5種類の船型が用意されており、ここではB/H=4、8、15の3モデルの断面を示しました(図)。

2.排水量長比=△/(L/100)3
 排水量と船の長さの割合を変化させています。実際には長さは変化せず。計画排水量を変化させています。その中で1の吃水幅比の変化を組み合わせています。
 実際の模型の数はB/Hと△/(L/100)3の組合せで合計20種類になりますが、ここでは9種類に絞って表現しました。

イメージ

3.排水量
 合計排水量に加え、その10%増と20%増、合計3種類の状態について実験されています。

4.重心位置
 重心位置の変化はトリム(前後方向の傾き)で決められています。計画トリムを基準にして、後方への重心移動により2度、4度傾いた3種類の状態で実験されています。
 20種類の模型について重量(排水量)と重心位置の3種類の状態を変化させ、速力を上げながら抵抗計測を行うわけですから、実験の数だけでも大変な量になります。
 時間と労力と資金をかけ、実験を重ねてティラーチャートが出来ていますが、最初の図表が完成してから改訂版ができるまでに20年間も経過していることからどんな大変な作業であるかが伺えます。このティラーチャートから今までよく言われていた速度とそれに適する重心位置があることや吃水幅比が大きくなるに従ってハンプ(抵抗の山)の大きさやハンプにより高速側にできる抵抗の下り方などの違いがわかるのです。

 このティラーチャートに使われている項目のみが性能を左右する項目かというと、現実にはもっと多くの要素があり、それらの要素についても考慮しながら船型を決定する必要があります。


※「設計室だより」は大漁ニュース掲載号の原稿を掲載している為、内容がお客様の船に合致しない場合がございます。漁船、エンジン、艤装品の詳細については必ず最寄りの販売店にてご確認をお願いします。

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