魚類
日本全国津々浦々で行われている沿岸漁業を漁法別にご紹介します。
魚類養殖漁
沖縄県伊江島
亀里さん親子の魚類養殖は村の漁業の活性化がかかっていた
沖縄本島の北部、本部港からフェリーに乗ると20分ほどで伊江島に着きます。亜熱帯特有の日差しが照りつけるなか、港を見下ろせる高台を目指し歩いていくと、忙しい時期にも関わらず優しい笑顔で亀里さん親子が出迎えてくれました。
沖縄の伊江島は農業と漁業の島。伊江島漁協の正組合員は86名を数え、モズク漁や沖合へ魚を追う底延縄漁を中心に漁業は安定しており、多くの若者が後継者として育っています。今回訪ねた亀里さんもそのひとりです。
「父が漁協の組合長を辞めて、養殖を始めることになったんです。それで地元に戻る踏ん切りがついて」
亀里さんのお父さんは、昨年の5月に退職するまで、12年間漁協の組合長を務めていました。その間組合員の安定化と漁業の近代化を目指して様々な事業に取り組みましたが、そのひとつが養殖事業でした。現在建設が進められている大型の魚類養殖施設も言ってみれば敏郎さんの置き土産です。
「養殖事業の成功は組合長時代からの夢でした。それを完成させたいと思って、自ら養殖を始めようと思ったんですよ」(お父さん)
今行っている養殖はタマン(ハマフエフキ)、マダイ、ヤイトハタ、クロカンパチ。そして海藻のウミブドウ。さらに沖縄では初めてとなるトコブシの生産も始まりました。
「ウミブドウもなんとか軌道に乗り、トコブシも方向性が見えてきました。魚はこれからですね。今はお金が出ていくばっかりですが、これが軌道に乗ればあらたな漁村活性化策になると思うとやめられないし。もう少しの辛抱だと思います」
父と仕事を始めるようになって半年。亀里さんにとってこの新しい生活は本当の自分を取り戻す契機となったようです。
「トコブシは県内でも初めての試みだし、やりがいがある。他の養殖も着々と自分なりに考えて工夫して、それが成功したときの喜びは何とも言えないほどです。魚の養殖も目に見えて成長していくので、いつももっと質の良いものを作ろうと欲が出ちゃうんですよ」
亀里さんは4人のお子さんをお持ちですが、うち二人は男の子。海にはよく一緒に出ると言います。
「子どもにもぜひ海に出て、自分と同じように海の良さを理解できる人間になって欲しい。まあどちらか継いで欲しいと思うけど、そればっかりは本人次第だね」
だからこそ今の仕事をもっと魅力あるものにしていきたい-----。亀里さん親子はそう考えているのです。
相手が生き物だけに養殖の仕事は神経を使うという
奥さまはお勤めが休みの時に家業を手伝い。ここは出荷前の海藻などをストックするハウス
健康食品として注目されている海ブドウ。この他に、トコブシの養殖など、魚類、採貝藻の養殖を積極的に取り組まれていた
ご家族はこの他に3人のお子さんがいる。右端がお父さん
愛艇亀丸<YD-30-0A>。養殖の他、モズク漁など季節によっては沖で魚を捕るという