開発者インタビュー:FX JAPAN LIMITED
FX JAPAN LIMITEDのコンセプトをご紹介いたします。
ウェーブランナー誕生から40年。記念すべき節目にふさわしい特別モデルが誕生しました。
その最大の特徴は、性能ではなく「デザイン」と「素材」に徹底的にこだわったこと。
なぜこのアプローチを選んだのか? そこには開発者たちの強い想いと、40年の歴史への敬意が込められています。
記念モデルに込められた開発の裏側と未来への展望を、開発者自身の言葉でお届けします。
Developer Profile
井上 かおり
ヤマハ発動機株式会社
WV / 海外B開発部
PWC開発G
入社後はスタイリングCAD業務にて多様な商材の意匠データ作成に従事。その後、デジタルエンジニアリングやカラーリング業務を経て、MC事業本部の外装設計部門で、アセアン向けモデルの設計経験を積む。2019年からはマリン部門にてCMFG(Color、Material、Finish、Graphic)を軸とした先行デザイン開発を担当。
笹倉 秀介
株式会社GK京都
第2デザイン部
デザインディレクター
入社以来プロダクトデザイナーとして主にコンシューマー向け製品デザインを担当。ヤマハ発動機さまの製品では船外機、水上バイクとその周辺機器を、またUS赴任時にはスポーツボートのデザインも行う。帰任後は様々な製品デザインの他、デザインディレクションや調査、戦略策定などの業務にも従事。
40周年を迎えて
ウェーブランナーが40周年を迎えた今、
開発者としてどのような思いがありますか?
ウェーブランナーが発売されてから40周年という節目を迎え、これまで多くのお客さまに支えられてきたことに、深い感謝と誇りを感じています。長年にわたり愛され続けてきたことは、私たち開発者にとって何よりの励みであり、次の世代へとつなげていく責任も強く感じています。
記念モデルを企画することになった経緯を教えてください。
40周年という大きな節目を迎えるにあたり、これまでのウェーブランナーの進化の軌跡と、「特別な一艇」を形にしたいという想いから、本企画をスタートさせました。
また、日本ならではの特性やニーズに応えたいという想いから、日本限定モデルとして展開することを決めました。
デザイン、素材、仕上げのすべてに徹底的にこだわり、記念モデルにふさわしい存在感を追求しました。今回のモデルは、これまでの歴史を讃えるとともに、未来への期待を込めた、まさに特別な一艇です。
開発の方向性と狙い
なぜ今回は機能強化ではなく、
デザインや素材に重点を置いたモデルにしたのですか?
40周年という特別な節目だからこそ、見た目や質感を通じて他のモデルとはちがう「記念モデルらしさ」を感じていただけるようにしました。
機能面ではすでに高い完成度を誇っているため、今回は“所有する喜び”や“特別感”といった情緒的価値を重視しています。
「40周年記念モデルらしさ」を表現するうえで大切にしたテーマは何でしたか?
「伝統と革新の融合」をテーマに掲げました。初代のモデルからインスピレーションを得ながら、最新の加工技術や素材を取り入れることで、記念モデルならではの存在感を演出しています。
特別なデザインを施すことで、歴史の重みと未来への期待が共存する、象徴的な一艇に仕上げました。
デザインへのこだわり
記念モデルのデザインコンセプトは
どのように決まりましたか?
初代モデルの要素を踏まえつつ、現代的なプレミアム感を融合させる形で、「RED DNA」というコンセプトに決定しました。
コーポレートカラーでもありまたウェーブランナーの歴史を象徴するカラーでもある“赤”を軸に、40周年にふさわしい特別感と洗練された印象を両立させています。
配色やロゴなど、特に注目してほしいデザインのポイントは?
塗装色、エンブレム、ロゴに至るまで、すべてをワインレッドで統一しています。特に「YAMAHA」ロゴにこのカラーを使用するには、社内の厳格な規定をクリアする必要があり、採用されること自体が非常に希少です。そのため、このワインレッドは、特別な存在感と高い価値を備えたカラーとして、デザイン全体に深みと品格を与えています。
WAVERUNNER40thのロゴには、「FZR」の「R」や「Venture」の「Ve」など、過去に使用されたロゴデザインを組み合わせており、年代によって見覚えのある方も多いはずです。その他フロアマットパターンにはこれまでの年代を、ハッチのグラフィックには“40”をモチーフとした形状で展開するなど、随所に施したWAVERUNNERブランドの歴史を感じさせるディテールにもぜひ注目していただきたいです。
過去モデルから受け継いだ要素やインスピレーションはありますか?
歴代モデルのカラーリングを継承しながら、現代のお客さまにも響くような洗練されたデザインへと昇華させました。
特に、初代のMJ-500Tで採用されたYAMAHAを象徴するコーポレートカラーの「赤」は、摘みたての葡萄を40年かけて熟成させたかのような深みのある「ワインレッド」へと“深化”させています。
この色には、40年にわたるブランドの歴史と”進化”が込められており、過去と現在をつなぐ象徴的な存在として、デザイン全体に重厚なストーリー性を与えています。
素材・質感へのこだわり
記念モデルに採用した素材には
どのような工夫がありますか?
カバーサイドやデッキサイドのブロックパターンは、3.5mm幅という極めて細いグラフィックシートで表現しています。航走しても剥がれない仕様にするため、ミリ単位での実験と調整を繰り返し、耐久性とデザインを両立させました。
シートには排水性に優れたクッション素材を採用しています。航走後数日でほとんどの水分が抜けるため、長期間使用してもシートの重量がほぼ変わらないという利点があり、快適な使用感を維持できます。
質感や仕上げにおいて「通常モデルと違う」と感じてほしい部分はどこですか?
ワインレッドの塗装色は、このモデル専用に開発された世界に1つしかないヤマハオリジナル色の塗料を使用しています。光の反射によって高級感が際立ち、角度によって色味が変化することで、所有する喜びを一層高めています。
素材選びや加工で特に苦労した点があれば教えてください。
1つの塗装色(ワインレッド)の色味をエンブレムやグラフィックにも展開するにあたり、素材ごとの色合わせに非常に苦労しました。素材毎に依頼するメーカーさんも違いますし、異なる素材では色の見え方が変わるため、何度も試作と調整を重ね、ようやく理想的な統一感を実現することができました。
ボルト類に施したゴールドのPVD加工は、視覚的な魅力と耐久性のバランスを取るのに時間を要しました。高級感のある仕上がりを保ちつつ、長期間の使用にも耐えうる品質を確保するため、細部まで丁寧に検証を重ねています。
ボルトにこれだけの手間とコストをかけるのは通常あり得ないと思います。非常に細かいところですが、その印象は格段に変わります。40周年に対する我々の想いを是非多くの皆さんに感じていただきたいですね。
記念モデルの価値
開発チームとして「このモデルのここを一番見てほしい」
というポイントは?
40年の歴史を感じさせる細部までこだわり抜いたデザインです。一つひとつのパーツや色使いに意味を込め、ウェーブランナーの歩みと未来への想いを表現しています。ぜひ、全体の造形だけでなく、細部の仕上げにも注目していただきたいです。
この記念モデルを手にしたユーザーに、どんな体験や喜びを届けたいですか?
特に今まで長くヤマハを愛していただいたお客様に是非手に取っていただきたいモデルに仕上がりました。
所有する満足感と、40年の歴史を感じながら走る特別な体験を届けたいと考えています。
水上での爽快感はもちろん、ガレージに置いたときの誇らしさや、眺めるだけでも心が高鳴るような存在感を持たせました。
この一艇が、お客さまの思い出に残る“特別な相棒”となることを願っています。
未来への展望・メッセージ
40年の歴史を踏まえ、今後のウェーブランナーは
どんな進化を目指していきますか?
これからも「安全・快適・楽しさ」というウェーブランナーの本質を大切にしながら、環境性能の向上やデジタル技術との融合を進めていきます。
お客さまの期待を超える製品づくりを目指し、時代の変化に柔軟に対応しながら、さらなる進化を続けていきます。
最後に、記念モデルを手にする方々、
そしてこれからウェーブランナーに出会う方々へメッセージをお願いします。
今回の記念モデルは、40年間支えてくださった皆さまへの感謝と、これからの未来への希望を込めた一艇です。
ぜひその魅力を体感し、ウェーブランナーの世界を存分に楽しんでください。
この一艇が、皆さまの人生の中で特別な思い出を刻む存在となることを、心から願っています。