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走行特性・船底形状

ボートの航走状態とハルの形状による分類についてご紹介します。

ボートの航走状態とハルの形状による分類

航走状態による分類

ボートの航走状態によって、排水量型とか半滑走型、滑走型という分類ができます。航走中、それぞれのハルが水から受ける揚力でその重量を支え、抵抗を減少させるという考え方で、速長比という数値で区別されます。

速長比

船の長さと最高速度の関連式によって得られた値が速長比で、これによって排水量型、滑走型、半滑走型に区分されます。速長比と船型およびそれぞれの航走状態をご紹介します。

速長比 1 2 3 4 5
最高速度(ノット) 4 8 12 16 20

基本的に次の3通りに分類されます。

1.
排水量型=ディスプレイスメント・タイプ
2.
滑走型=プレーニング・タイプ
3.
半滑走型=セミ・ディスプレイスメント・タイプ

排水量型=ディスプレイスメント・タイプ

航行中において、揚力の作用はなく静的浮力のみによって航行する浮水型。速長比2.0以下がこのタイプです。したがって停船時と走行時の状態がほとんど変わらない姿勢で、比較的ゆっくりと走るボートに用いられます。セールボートが代表的ですが、基本的に速度は出ないが燃費が良く、航続距離が長いのが特徴です。

滑走型=プレーニング・タイプ

滑走(プレーニング)というのは物体を支えるのに浮力よりはるかに大きな揚力が作用して航走している状態をいいます。速長比では5以上のタイプがそれにあたり、16フィートなら20ノット以上で滑走し始めることになります。滑走型は船底に働く揚力によって艇体が持ち上げられ、滑走状態になるとバウが下がり水に対して3°~5°のトリム角(縦傾斜)で水面を滑るように走行するのが特徴です。

半滑走型=セミ・ディスプレイスメント・タイプ

ボートの重量の何割かを揚力で支えて航走するタイプ。速長比でいうと2.0~5.0のタイプで、16フィートの長さのボートで16ノットの速力なら速長比4.0であるから半滑走型ということになります。半滑走型の走り方は、トランサム(船尾の板)は全部水から浮きバウは持ち上がってきますが、艇体が水面を滑走するまでには至らない状態がこれです。

ハル形状による分類

断面図だけで単純にその特徴を決定付けることはできませんが、その性格を示す一つの材料として、基本的な船底形状の特徴があります。

フラットボトム

フラットボトム

船底部分がフラット、若しくはそれに近い形状。その形状から静止時の安定性に優れ、滑走艇に用いれば高い滑走力を発揮しますが、その反面波を受けた時のショックが大きくなるデメリットも併せ持ちます。
実際の船底形状として船首から船尾までフラットボトムというボートは、川や小さな湖など、ほとんど波のない静穏な水域で使用される小型ボート(川船)ぐらいで、海で走行するボートの船底形状としては適していません。

ラウンドボトム

ラウンドボトム

ラウンドボトムは、他の船底形状のようにチャイン部分の形状が無い、丸型をした船底形状。波のある海域ではどうしてもローリング(横揺れ)が起きやすいため、キール部分のアレンジでローリングを防ぐようにしたタイプもあります。
基本的にヒール(横に傾いて走る)で帆走するセーリングヨットでは、船底下を水がスムーズに流れることや、傾いても極端に水面下の船底形状が変化しない特性から、一般的に使用されている形状です。

ストレートV

ストレートV

小型のプレーニングボートだけでなく、比較的大きなセミ・ディスプレイスメントタイプのボートに至るまで、非常に多くのボートで採用されている船底形状。
ラウンドボトムに対して明確にチャインが入った形状を総称してハードチャインタイプと呼んでいますが、このストレートVはその代表といえるものです。また、このストレートVを基本として、部分的にアレンジを施しその特性を変化させているタイプも多く、そういったものを総称してモディファイドV(Modified Vee)といい、ヤマハのボートの代表的なストライプと呼ばれる船底形状もこのストレートVに含まれます。

コンベックスV

コンベックスV

ストレートVに対して船底がコンベックス状(凸型)に膨らんだV型の船底形状の総称です。
大きな特徴は、船体が浮き上がり水面下部分が減れば減るほどデッドライズが浅くなり、逆に沈み込めば沈み込むほどデッドライズが深い部分が着水していくという形状。このことから、ジャンプ後の着水時のショックを分散吸収して和らげる特性を持っています。

コンケイブ V

コンケイブ V

コンケイブはベックスの反対意味で、円弧状に凹んだV型のボトム形状。
その特性もコンベックスの逆で、デッドライズはキール部分が最も深く、チャインに近くなるにつれて浅くなる形状。
したがってボートがジャンプした場合、最初に着水するキール部分ではショックが少ない代わりに、最終的にチャイン部分が着水する時のショックが大きくなるという特性を持っています。
そういったジャンプを繰り返すような小型のボートでは、キール部分に水平面を持たせるなど、そのショックを分散させる工夫が施されています。

マルチハル

マルチハル

フラットボトム、ラウンドボトム、ストレートV、コンベックスV、コンケイブVの船底形状がモノハル(Mono Hull)と呼ばれる船底形状に対して、通常の走行状態で、浸水部分が横方向に分かれている船底形状を総称してマルチハルと呼んでいます。
さらに、2つに分割されたタイプはカタマラン(Catamaran)、分かれたものはトリマラン(Trimaran)といった個別の名称が付けられています。
基本的にこれらのマルチハルは、強度設計の難しさはあるものの、復元力が高く、揺れにくいだけでなく、着水時のショックが分散されることから乗り心地がソフトであるという基本特性を持っています。

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