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軌跡をたどる SR開発秘話:04 性能もデザインも欲張って 根性で車体に寄せたスリムで美しいマフラー

2020年5月4日

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初期型SR400/SR500の開発陣は、最高出力40PSと謳われた往年の名車・BSA ゴールドスターをひとつの指標としていた。この数値を開発目標に掲げ、エンジンの"裸状態"、つまり単体では44.5PSまでの性能を実現していった。ただ吸気・排気系パーツ装着による性能への影響があり、特に低速トルクの低下が懸念された。そこで出力・トルクを確保しつつ騒音低減を図るため、大きいマフラー(消音器)を検討。「TX750」のマフラーの装着にトライし、性能テストも行っていった。

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↑直列2気筒でヤマハ発動機初の"ナナハン(750ccクラスの通称)"ロードスポーツ「TX750」(1972年)

ところがクレーモデルによるデザイン検討を進めていくと、デザイナーが「マフラーが長すぎてかっこ悪い」と言い出した。そこで長さ25mm、後端部外径9mm縮めるサイズダウンを進めた。またバンク角を十分確保する必要もあった。そのためマフラーをより車体中心部に寄せようと、リアのアクスル(車軸)と干渉する部分に"へこみ"を入れることにした。「ものすごい根性で車体にくっつけた」と当時を知るエンジン設計者は言う。


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↑リアのアクスル部分は、車体に寄せるためマフラーがえぐられている

「とにかくデザイン性最優先」と。何とか作り込もうと四苦八苦するが上手く作り込めず開発は困難を極めた。結局、マフラー容量と排気脈動のバランスを整えるため、約0.9L容量のチャンバー(予備室)を内側に溶接して取り付けたのだった。出力向上や低速時のトルクといった性能に加え、静粛性、耐久性、そして見た目の美しさまでも妥協しないマフラーは、こうして誕生した。

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↑覗き込んでも見えないような内側部分にチャンバー(予備室)が取り付けられている(SR400 1978年パーツカタログ)

企画にエンジン設計、車体設計、車体実験、そしてデザイナーと開発に携わる全員が一切の妥協を許さず、開発当初のコンセプト「シングルバイクとして、軽量・スリム・コンパクト、そしてデザインはシンプルで美しく」を徹底し追求した成果だった。

2020年5月4日

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