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軌跡をたどる SR開発秘話:03 ビッグオフローダー譲りの秘策!? 軽量スリムにするためにフレームにオイルを

2020年5月4日

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「SR400」にまたがってふと視線を下に転じると、タンク前方、ステアリングヘッドの後ろに「YAMALUBE」と書かれた黒いキャップに気づく。「YAMALUBE」とは、「YAMAHA」と潤滑油の意味を持つLubricantの米国略語の「LUBE」を合わせた造語で、ヤマハ純正オイルのことだ。


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この黒いキャップ、実はオイルタンク用のキャップ。大抵、クランクケースに設けられているエンジンオイル用キャップが、なぜ燃料タンクキャップの近く、この位置に?と思うかもしれない。「SR400」のオイルタンクは、フレームの中に納められているのだ。

一般的には、仕組みがシンプルなため、エンジンのクランクケース下にエンジンオイルを溜めるオイルパンを持つ、ウエットサンプと言われる潤滑方式のモデルが多い。しかし「SR400」のエンジンは、ドライサンプ式をとっている。
ドライサンプ式はエンジン下にオイルを溜めるスペースを持たず、他の場所にオイルタンクが設けられていて、そこからオイルをエンジンへ循環させる方式。エンジンをコンパクトに作れるメリットがある。

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↑XT500(1976年)

そもそも「SR400/SR500」は、「XT500」で得たノウハウをオンロードに応用したスポーツモデルだ。「XT500」は、北米向け競技用エンデューロマシン「TT500」をベースに開発された、公道走行が可能なビッグシングル・トレールモデルで、1979年から始まったパリ・ダカールラリーでも多くのチームが使用する定番マシンとして活躍するなど、大型オフローダーの先駆けだった。

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↑「XT500」のタンクインフレーム。トップクロスメンバーに注入されたオイルはダウンチューブを通ってエンジンに回り、再びトップクロスメンバーへと戻る強制圧送ドライサンプ式の潤滑だった。


オフロード車としては、エンジンの下側が岩などの障害物に当たらないよう、最低地上高を高くしておきたいという思惑がある。そこで、最低地上高を稼ぎながら、コンスタントな潤滑を確保し、さらに運動性での優位を考慮してスリムさも追求した結果、メインチューブとダウンチューブをエンジンオイル経路に活用するドライサンプの"オイルタンクインフレーム"を新開発するに至ったのだ。国産モデルでの"オイルタンクインフレーム"採用は初めてのことだった。

その流れを受け継いでSR400は、今でもメインフレームのパイプ部分にエンジンオイルタンクが収められている。

2020年5月4日

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