「変わっていない」が最大の誉め言葉!? 凝縮されたスタイリングに便利な機能が調和した2025年モデルXMAXのデザインをご紹介します
- 2025年3月10日
2025年モデルXMAXが本日リリースされました。2023年に6年ぶりのモデルチェンジを行ったXMAXですが、「X」モチーフの灯火類(LEDヘッドランプ、ポジションランプ、テールランプ)や、上品さと躍動感を両立したスタイリングはそのままに、電動スクリーンなど便利な機能を採用した2025年モデルXMAXを4月14日に発売します。
今回は、2025年モデルXMAXのスタイリングをデザイナーに聞きましたのでご紹介します。
---------------------------------------------------------------------------
2025年モデルXMAX
デザイン企画:プロダクトデザイン部 安田 将啓(写真左)
デザイナー:株式会社GKダイナミックス 麥倉 毅美(むぎくら たかよし)さん(写真右)
バイタリティを宿しているXMAXならではのデザインコンセプト
デザイン企画:安田
2025年モデルXMAXの変更点は、2023年モデルXMAXのスタイリングを踏襲した上で、新型マフラーへの刷新と電動スクリーンの搭載、大型ディスプレイのアップデートです。
2023年モデルXMAXのデザインコンセプトは"Condensed Vitality"を掲げていました。自分自身を刺激してくれる力を凝縮したモビリティで、バイタリティあふれる日々を提供したいというメッセージが込められています。
XMAXは乗り手とシンクロするバイタリティを宿し、乗っていて楽しい走行性を持つスポーツスクーターだからこそのデザインコンセプトだと考えています。
今後もXMAXが果たすべき役割は変わらないし、我々が表現したいことも変わりません。いかにこのスタイリングを継承するのかという意味を込めて、2025年モデルのデザインコンセプトは"Stay Vitalized"を掲げました。
今回、新作したマフラーやディスプレイ、電動スクリーンをいかに外観ボリュームへの影響を最小限に留めながら、違和感なく凝縮されたスタイリングに溶け込ませるかという、ある意味すごくいぶし銀なチャレンジだったんです。
「全体ボリュームを増やさない」の共通認識を持って
開発者とデザイナーの強い協力関係が最適解を導いた
デザイナー:麥倉さん
今回の目標は、スタイリングのイメージは2023年モデルXMAXを踏襲して、機能面をアップデートさせることです。今回幸運だったのは、最初から開発者がデザイナーと一緒に協力しながら、全体の構造を決めていけたことでした。2025年モデルXMAXは、開発者もデザイナーも双方、全体ボリュームを増やさないことが目標でした。
最適な答えを最初から一緒に探せたので、目標を達成することができました。
電動スクリーンが違和感なく溶け込んだフロントフェイス
デザイン企画:安田
2025年モデルXMAXのスクリーン周辺の狙いですが、2023年モデルはスクリーンサポートを見せ、フロントフェイス上部はメカニカルな造形感を出して、下部はカバーの造形をシンプルに表現しています。2025年モデルも基本的にこの考え方を踏襲しました。2023年モデルのボルトオン方式から電動スクリーンにアップデートしていますので、付属部品が増える分フロントが膨らむのをなるべく抑えなければなりませんでした。
横から見えるシルエットラインは、電動スクリーンの機構を納めるために前へ膨らむのを抑えて、電動スクリーンを上げたときにも車両との一体感があるように側面の樹脂パーツとの調和を図り、違和感のないスタイリングに仕上げました。フロントカバー内部に入るレールを避けつつ、2023年モデルに対してプラスアルファのウェッジシェイプで陰影をあえて作ることで、スポーティな印象になるようにしました。
スクリーン自体の造形もいろいろとアイデアがありましたが、左右連結型のスクリーンステーにして、メカニカル感やもの作りの精度をしっかり表現できるアルミダイキャスト製にしました。
デザイナー:麥倉さん
先ほどの開発者との連携で言えば、ステーをアルミで綺麗に作って見せればカバーがいらなくなる分、もっとコンパクトにできるのではと提案があり、我々もその方が絶対良くなると賛同しました。実は開発者発信でスタイリングを良くしていった例がいくつかあるんですよ。
※電動スクリーンを一番上にあげた状態
デザイン企画:安田
内側に隠れるメカの部分は設計ベースで決まりますが、今回はスクリーンが動いた時に外に見える部分が多く、その時のスペースの見え方はどうあるべきか、一番省スペースでなおかつ外観的にも違和感なく収まる最適な位置はどこなのか、お互い意見を出しながら決めていきました。
スクリーンを一番上にした時に見えるボルトカバーは、最初はボルトとその座面が剥き出しの状態だったのですが、そのままだとデザイン的に野暮ったく見えてしまう恐れがあったんです。メカメカしい機能性とデザインの良さを両立させて一番クオリティ高く見せるための最善案を模索した結果、ゴムパーツで覆うという手法を選択しました。
電動スクリーンをメンテナンスする場合の整備性も考慮してもこの方法が一番良かったんですよ。
デザイナー:麥倉さん
ヤマハのエンジニアはスタイリングに非常に気を使ってくれて「デザイナーがここは隠したいと思っているよね」みたいなことを分かってくれるんですよ。
ヤマハのモノ作りの考え方は「あとは上からデザインで化粧してください」という別で動くのではなく、開発者と一緒になってスタイリングをどうすれば良くなるか考える気風があるんです。
デザイン企画:安田
スタイリングの話で言うと、フロントの少し有機的で、動物的なデザインを今回も崩したくなかったんです。ただ、どうしても電動スクリーンを入れてしまうと体積が増えて、最大30~40mm張り出してしまいます。それを張り出ていないように見せつつ同じような印象に見えるように角度を少しだけ変えて、目の錯覚で表情が変わらなく見える工夫をしているんです。便利な電動スクリーンを入れるためにフロント部分に大きな改良を入れているのですが、2025年だけを見ると2023年モデルとどこが変わったか分からないようになっていると思います。
細かいことを言うと、電動スクリーンを動かすためにクリアランスを取らないといけませんが、いかにその隙間から中が見えないか、気になるものが見えないかに注力しました。
デザイン企画:安田
2025年モデルXMAXは、スクリーンの他にフラッシャーカバーとスポイラーの形も実は変えているんです。可動域が100mmに広がったのでスクリーンを上げたときにフラッシャー上部の隙間も広がってしまいます。そのままだと風の流量も増えて腕やお腹あたりの走行風が強くなってしまうので、フラッシャーカバーも上方向に広がる形に面積を広く取っているんです。その隙間を単純にスクリーンを大きくして覆ってしまおうとすると、めちゃくちゃ大きなスクリーンになってしまいます。下げた状態でもスポーティに見せたいお客さまからすると、無駄なところも覆っているように見えてしまう。フラッシャーカバーで覆う方がスクリーンを下げた状態のときにも「これは風のプロテクションだ」と認識いただける造形になっているんです。
この話もデザインからすると、全体をコンパクトにした方がスポーティで違和感なく見てもらえるようにする工夫の一つです。 こうして言われないと気付かないレベルで新しい機能がついているのは、普段だったらネガティブにとられますが、今回は違和感をなくす方向でデザインを作り込んでいますので、変わっていないと言われるのが正解だと思っています(笑)。
デザイナー:麥倉さん
フロントフェイス周りで何か一つだけアピールしているとすれば、スクリーンステーに「YAMAHA」の文字を入れて注目されるようにしています。2023年モデルと比べて、「あれなんか違うな」と感じた人は、電動スクリーンになっていて、しかもかっこいいデザインだと気づいてもらえるような工夫をしています(笑)
コンパクトにまとめるのに苦労した軽量マフラー
デザイン企画:安田
マフラーも今の形状になるまで紆余曲折がありまして、今回、環境適合するためいろんな要件をクリアする必要がありました。その要件で作ると当初は長く大きくなると開発者に言われたのですが、これはデザイン的にはドが付くほどのNGだったんです。
絶対嫌ですと話をしたら(笑)、当時のパワートレインの開発者の方々が、いろいろと試行錯誤しストレートに繋いでもマフラーの長さを短くできる可能性が出てきたんです。2023年モデルよりは若干長いのですが今の形になりました。
デザイナー:麥倉さん
マフラーも変更するのであれば、お客さまに対してデザイン上のベネフィットを提供したいと思って工夫をしています。2023年モデルは黒一色の楕円型のデザインですが、2025年モデルは車体のダイナミズムを強調するため、ブラックとクリスタルグラファイトと呼ばれるカラーの2色2枚構成になっているんです。最初に目が行くところにカラーパーツを持ってくることで、足回りを車体に近づけて重心が車体中心に寄っているようなスポーティに感じる仕掛けを入れています。
マス集中で機敏に走るXMAXの運動性を、見た目からも感じていただければ嬉しいです。
これもこだわりポイントなんですが、せっかくのカラーパーツにネジ座をつけたくなかったんです。開発者と試行錯誤してブラックパーツの見えない部分にネジを取付し、綺麗なクリスタルグラファイトカラーのカバーを見せています。
デザイン企画:安田
マフラー自体の形状の話をすると、2023年モデルは幅が飛び出ないような楕円形になっています。2025年モデルのマフラーはなるべく真円になるようにしています。ただ、真円は存在感が強すぎるので、少しだけマフラーエンドキャップの形状を変えてなるべくやぼったさを打ち消すような工夫をしています。
効率の良さだけで言えばマフラーカバーは真円のオフセットで均一隙間を取るのが一番いいのですが、デザインの良さもウリのXMAXではスタイリング上それはやめたかったんです。
最終的には、角だけ少し離して上面と側面を分けているような形状にしています。
横並びとなり車両との一体感が向上したTFT・LCDディスプレイ
デザイナー:麥倉さん
2023年モデルはLCDディスプレイ(上)とTFTディスプレイ(下)で2段積みになっていました。2025年モデルは最近の4輪車のトレンドに合わせて、タブレットのように1枚で見せるような横置き配置にしています。
上質な250ccクラスのスクーターを購入されるお客さまは、そういったトレンドに敏感だと思うので同様の評価軸を持ってデザインしました。
MAXシリーズのアイコンであるブーメランモチーフに込めたメッセージ
デザイン企画:安田
MAXシリーズの特徴であるブーメラン形状のサイドカバーについてご紹介します。我々はブーメランと表現しているのですが、これはエンジンからのパワーやリアタイヤから生み出された駆動力を、車体前方へ伝える骨格をイメージしながらデザインしています。イメージする力の動きでブーメランの形状が決まってくるんです。
全体的なスタイリングのバランスが取れていればいい話ではなく、この車体が持っている魅力的なエンジンやスポーティな走りを、いかにスタイリングから感じ取ってもらえるかを意識してデザインしています。もちろん、機能美にも繋がるところでもあると思います。
インナーチューブがハンドルクラウン部まで貫通するモーターサイクルタイプのフロントサスペンションを搭載しているのもハンドリングが軽快でスポーティな走行ができるXMAXの特長なので、ハンドルから設置面に向かって力が伝わっていくメッセージを込めて今のスタイリングを造り込みました。
もちろんアイコンでありシンボルなのでデザイナーとしては主張したい。ただし、車体と駆動力という機能性の構造からくる意味を形に持たせたい意志で全体のバランスが決まっています。先に骨格と表現しましたが、フレームとしてより際立たせたいので人間のくびれのようなイメージで、最後を結ぶ締結点でしっかりおさえることによって、よりフレームとしての締まりや力強さを表現しています。
デザイン的には「変わっていない」が褒め言葉
開発と密にコミュニケーションを取り難題をクリア
デザイン企画:麥倉さん
ここまでのデザイン秘話で感じていただけたと思いますが、ヤマハデザインの真髄はデザイナーがこうしたいだけでなく、開発者との密なコミュニケーションで成立していることがお分かりになっていただけたと思います。
デザイン企画:安田
決してデザインだけがよければいい訳ではなくて、開発は開発でしっかりとした審美眼を持っているんです。機能性、合理性の面からもデザインに関して良い方向にいくために開発の方も意見を出してくれます。そこには日頃から密なコミュニケーションがあるからなんです。先ほども述べた新作マフラーは、デザイナー的にはコンパクトに見せたかった。一方で、開発視点でもコンパクトにすることで軽量化などのメリットがありました。さらに、ヤマハの開発者は、視覚的な機能も理解できていてデザイナーの要望にも積極的にチャレンジしてくれたんです。
そこがヤマハのいいところですね。今回は電動スクリーン搭載によるフロントデザインの刷新やマフラー、ディスプレイなど目に付きやすい部分のパーツが新作ということもあり、体感的にはフルモデルチェンジする時のような大変さと頻度で開発と密に取り組みました。
---------------------------------------------------------------------------
いかがだったでしょうか?
電動スクリーンや新型ディスプレイなど利便性がアップデートした熟成の2025年モデルXMAXは4月14日発売です。
各種機能・装備が違和感なく溶け込んだデザイナーこだわりのXMAXをぜひ店頭でご覧ください。
それではまた。
■関連情報
XMAX製品ページ
- 2025年3月10日