ヤマハオフロードの伝統スタイルを現代版にアップデート 2026年モデル「WR125R」のデザインをご紹介します
- 2025年12月18日
こんにちは。ヤマハ発動機販売 田邉です。
ヤマハのギア付き125ccにオフロードモデルの「WR125R」が仲間入りしました。
ヤマハオフロードの伝統的なスタイリングに現在のデザイントレンドをしっかり取り入れ魅力的なモデルに仕上がりました。
今回は、デザイン担当者にこだわりポイントや苦労話をたっぷり聞いたのでご紹介します。
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2026年モデルWR125Rデザイン担当(写真左から)
デザイナー:プロダクトデザイン部 北山 亮平
カラーリング企画:プロダクトデザイン部 澁谷 啓之
普遍的なヤマハオフロードらしさを意識しつつ最新デザインにアップデート

デザイナー:北山
2026年モデルWR125RのベースとなったWR155Rは、欧州で2009年モデルとして初登場してから、現在はアセアンなどの地域を含めグローバルに販売してきたモデルです。
今回、日本で導入するWR125Rは、WR155Rからフロントとリアフェンダーを除く、ほぼ全てのカバー類を新作して新しいデザインとなっています。スタイリングを大幅に変更し現在のデザイントレンドを取り入れてアップデートしています。
デザイントレンドの話をすると、2000年代のデザインは四輪も含めてエッジを強調することでキャラクターを立たせる造形が主流になっていました。しかし、2010年代後半からは足回りやフレームを強調することで塊感や軸感を強調するデザインが主流となり、現在もその流れが続いています。
WR155Rはデビューしてからかなりの時間が経っていたことから、しっかり時代に合わせたアップデートをするべくデザインを検討しました。
デザインコンセプトは「Feel the YAMAHA offroad spirit!」です。これは"ヤマハオフロードイメージ"と"モダン&スタイリッシュ"という2つの要素をミックスさせたものです。
実は、ヤマハオフロードのイメージは、国やその人々によって大きな違いがあるんです。例えば、ヨーロッパだとTénéré700、アメリカだとモトクロッサーのYZといったレースイメージを持っているんです。
そのため、2026年モデルWR125Rのデザインを決める際に、それぞれのデザイン要素を入れ込むのに苦労しました。試行錯誤の結果、入門モデルになるであろう125ccクラスのWR125Rは"普遍的なヤマハオフロードイメージ"を持たせることが必要だろうと考えたのです。競技用モデルのYZのシャープな雰囲気を出しつつも、公道走行できる市販モデルでヤマハオフロードのイメージリーダーにあたるTénéré700のように広い面を大胆に使い現在のトレンドを入れてメリハリの利いた面の抑揚や色気を出し、分かりやすくヤマハオフロードイメージを感じられることを意識しました。
言葉で言うと簡単ですが、これが本当に難しく全体のスケッチを何度もやり直して、クレイなどのモデル制作に入りました。
黒いコア部分をシュラウドが纏うことで凝縮感と軽快感を表現

デザイナー:北山
まずテーマとなったヤマハオフロードイメージですが、YZ,WR,XT,テネレなど様々なヤマハオフロードモデルがある中で全てに共通して言えるイメージは「軽快感」と「凝縮感」であると考えました。
そして、もう一つのテーマであるモダン&スタイリッシュは、面構成や骨格を見せつつも無骨に見えない、近年のデザイントレンドを意識しました。
ヤマハオフロードモデルは、伝統的に水平基調のホリゾンタルラインが特徴の一つです。競技用のコンペモデルではリアフェンダーからタンク、フロントフェンダーにかけて水平なのでやりやすいのですが、WR125Rは公道も走れる市販モデルということもありディメンションがレーサーのYZほど腰高ではなく、シートも低いので、水平ラインを出すのがとても難しかったんです。
そこで、サイドカバーからシュラウド、フロントフェンダー全体でホリゾンタルラインを表現することにしました。ここで大きなポイントとなるのがシート下にあるブラックパーツと、それを囲むカラーパーツ、シュラウド、サイドカバーです。
ブラックパーツがシュラウドに向かって突き刺さり、さらにシュラウドがフロントフェンダーに向けて前へ向かっていく動きを作ることで水平基調を表現しています。
通常のオフロードバイクは、外装パーツをカラー部品で構成することが多いんですけれど、全部同じカラーで統一すると印象的にのっぺりしたイメージになってしまいます。
WR125Rではマシンのコアであるエンジンと周りのブラックパーツをメカの一部として捉え、凝縮感を持たせ、そこに軽快な外装をまとっているイメージでオフロード感を表現しました。
そして、サイドカバー、シュラウド全体で前に向かう大きい水平基調を作りモダン&スタイリッシュを表現しました。
あわせて、クランクケースをシルバーとすることで軽快感を演出しました。
これらの工夫で凝縮感と軽快感を際立たせ、ホリゾンタルラインとモダン&スタイリッシュを表現しました。
ヤマハオフロードモデル初の縦2眼のヘッドランプは苦労の連続!
デザイナー:北山
デザインをする上で一番苦労したのはヘッドランプなんです。ヘッドランプはMT-09用のLEDヘッドランプと、スクーター用のポジションランプを流用する必要があり、初期の構想段階から縦2眼にすることが決定しました。しかし、この二つのランプを今っぽくスタイリングしようとすると様々な要件がバッティングして本当に苦労しました。
何度もデザインを変更しましたが最終的には、ランプのモジュール感を敢えて出すことで高性能をアピールする方向に決まりました。
構成のメインとなるヘッドランプモジュールは極力低く、車体に寄せて前方への張り出しを最小限にすることでオフロードバイクらしいコンパクトでタイトな顔を目指しました。
ただ、このヘッドランプモジュールが矩形のプロフィールで、これを普通に収めると昔のオフロードモデルっぽくなってしまうんです。それを回避するため、カウルの下部分をインテークのようにブラックアウトしてそこに収めました。これはRシリーズのM字ダクトを参考にしています。
ヘッドランプを脇役としたことでフェンダーとカウルのラインが強調でき、ポジションランプもその動きの中に取り込んでいます。重要な機能パーツなので無駄に覆わずに敢えて見せるようにしています。
カウル全体も内部構造の無い部分は極力削いでいくことで灯火器類という機能パーツを最小限にカバーしたような印象にしています。その上でスタイリッシュになるように工夫を施しました。
デザインテーマを成立させつつライダーの動きを阻害しないスタイリングの工夫
デザイナー:北山
デザインと実際のお客さまの使い勝手の兼ね合いも苦労したポイントです。デザインの重要なテーマである黒いカバーがシュラウドに噛み込んでいく部分ですが、初期段階ではライダーがスタンディングした際に足に当たったり、足を前に出した際にシュラウドの下にブーツが引っかかると実験ライダーから指摘があったんです。
この部分のデザインパーツは奥行きがないとオフロードバイクとして綺麗に見せられず、デザインの厚みが出せないんです。とはいえ、奥行きを出してしまうとライダーの足に当たってしまう。
なるべく凹凸をなくしてライダーの動きの自由度を制限せず、このテーマを成立させるため、クレイモデルで1mm単位で形状を作り、実験ライダーに乗ってもらい、また調整するというのを繰り返し、造り込みました。
シュラウドを上から見ると前側が大きく開き、後ろに向けて膝に当たる部分をギュッと絞っています。サイドから見るとシンプルなパーツ形状に見えるのですが、ライダーが乗車した視点ではとても抑揚を感じるようになっています。この形をつくるのはとても難しかったです。ここもかなりこだわって作り込みをしました。125ccモデルとは思えないほど迫力があると思います。
なお、燃料タンクやシート、前後のフェンダーはWR155Rのパーツと共通のものを使用しています。フロントフェンダーはヘッドランプに向かうラインが入っていますが、ベースは変わっていません。既存パーツに新しい外装パーツを溶け込ませるために、全体の面質を揃えて馴染ませるように造り込んでいます。特に前後フェンダーとチグハグにならないように配慮しました。
エンジン周辺の各部カバー類はメカ感を演出し、マフラーにもこだわりが!
デザイナー:北山
あまり気づかれない場所なのですが、エンジン周辺のカバーにもこだわりました。多くのパーツを新作しているんです。
冷却水のリザーバータンクやキャニスターは異物感が出てしまうんですが、カバーによってエンジンの一部として見えるようにメカ感を強調したり、シリンダーの向きに合わせて意匠を入れたりしてエンジンに溶け込むようにデザインしています。
開発のみなさんは趣味でオフロードバイクに乗っている方が多いので「デザインをこうすればもっと格好良くなるよ」とアドバイスをもらって修正した箇所もあるんですよ。
ジッと見ないと目立たない場所ですが、正面から向かって右側の内部カバーも設計の方にアドバイスをもらい変更した部分です。敢えてツルっとさせず、メカ的な印象にしているんです。
WR155Rにはなかったツールボックスもどうすればコンパクトに見せられるかを何度もトライしました。外装パーツのラインに対して違和感が出ないようにして、前後を絞り閉じられた形状とすることでコンパクトにしています。
マフラーエンドもこだわりがあるんです。様々な要件がありTénéré700のLEDテールランプを採用することになったのですが、サイレンサーの形状を変更しています。テールランプが大きくなっているため、排気ガスの吹き出し口を下に向ける必要があったんです。デザイナーとしてはマフラーをなるべく太く、排気口を後ろに向けたいため、エンドキャップの形状を機能性に満ちたデザインで表現することによって、要件もクリアしつつ機能的かつスタイリッシュなデザインに仕上げることができました。
エントリー層には軽快さと新しさを、
ベテランライダーには正統派のオフロードバイクらしさを感じてほしい
デザイナー:北山
日本のライダーにはエントリーモデルとして、軽快なオフロードらしさも感じるし、新しさも感じるバイクと受け止めてもらえるようにデザインしました。
ビギナーの方にとって、オフロードを走るにはYZはカッコいいんだけどガチすぎて、ちょっと取っ付きにくいイメージもあるかなと思います。そのため、WR125Rは少しストリートよりにしながら軽快にオフロードを走るイメージをきちんと連想させ、パッと見た時にも「かっこいい」と思ってもらえるようなデザインを意識しています。
一方で、オフロードバイクフリークのベテランライダーにも響くようにデザインしました。ヤマハのオフロードバイクらしい水平基調を感じさせ、しっかり絞る所は絞るなどメリハリの利いたデザインを大事にしています。一目見るだけで''ヤマハらしいデザイン''と思ってもらえると思います。
この2026年モデルWR125Rをきっかけに、本格的なYZやTénéré700にステップアップをされる方もいらっしゃると思います。それらモデルの系譜がしっかりと感じられ、ヤマハのオフロードワールドの入口となるデザインを感じていただければ嬉しいです。
カジュアルなグラフィックのブラックとブルーの2色を設定
カラーリング企画:澁谷
2026年モデルWR125RはディープパープリッシュブルーソリッドE(ブルー)とヤマハブラック(ブラック)の2色を設定しました。
ブラックは、先ほど北山さん(スタイリングデザイナー)が説明したように、ストリートなどで使うオフロードの入口となるようなバイクであることから、若年層のお客さまが興味を持ってくださることを想定しました。ガチなオフロード感を極力抑えて街中でも乗りやすいカラーリングを意識しました。
そこでブラックに関しては、オフロードらしいタフさがありながらもカジュアルなイメージを持たせました。グラフィック形状はブルーと同じですが、ボディ/グラフィックともにモノトーンの配色とすることで、モダンでタフなガジェットをイメージしています。
フレームの色もブルーとは違いシルバーからブラックに変更し、スイングアームの色もブラックにしてこだわっているんです。
引き締まったタフなイメージでストリートにしっかり映えるカラーリングになっています。
ブルーは、ヤマハのスポーツイメージを象徴するカラーですが、あまりにもレースイメージが強すぎるとこのモデルに興味を持ってくださるお客さまには合わないと考えました。そこでボディ/グラフィックの色はYZ系の配色とリレーションを持たせつつ、グラフィック形状はスタイリングデザインを強調するシャープでキレのある軽快さを感じるデザインを採用しました。
フロントフェンダーに装着される白い帯状の原付二種(51~125cc)マークもポイントです。最初は汎用マークを採用する予定だったのですが、WR125R専用にデザインし、特徴的なフロントフェンダーにマッチするようにしました。
カラーリング企画:渋谷
ストリートでの走りをメインとするお客さまが選びやすいのはブラックかなと思っています。ブルーは"ヤマハのレースイメージが好き"あるいは"ヤマハのオフロードバイクに乗ってるぞ"というアピールしたい方にとても分かりやすいカラーリングだと思います。
ブルー、ブラックともにWR125Rのデザインを強調するカラーリングになっていると思います。
このWR125Rを皮切りにYZなどの本格的なオフロードにチャレンジしてみたいマインドを持っているお客さまにも選んでいただけるんじゃないかなと期待しています。
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今回ご紹介した2026年モデルWR125Rは、エントリー層にもベテランライダーにも響くヤマハらしいオフロードバイクのデザインになっています。
クラスを超えた質感やカッコよさはもちろん、ライディングポジション、足つき性などにもこだわりました。
ブルー、ブラックともに自信を持っておススメできますので、ぜひその目でご覧になってください!
WR125Rの発売日は1月30日です。
ご購入はお近くのヤマハバイク取扱店へお越しください。

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それではまた。
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