事前の情報確認と計画作り
クルージングに出かけることを想定した計画作りや情報収集の方法をご紹介します。
航海計画を立てる面白さ
航海計画の立案
最初はそんなに遠い場所でなくても、ビギナーのみなさんは海図を入手して実際に航海計画を立ててからのクルージングをおすすめします。
安全面の情報収集はもちろん、どういったコースを選択し、何処に立ち寄って帰ってくるか、実際に海図上にラインを引いて所要時間を計算し、計算通りにクルーズしてみます。また、計画を立てる時には、海図を読む以外にもさまざまな知識が必要です。面倒がらずにやってみましょう。航海計画は、自分の技量を自分自身でチェックする一つの方法です。
無計画な航海は思わぬトラブルのもとになります。
目的地の設定
まず最初に目的地を考えましょう。目的地を決定するには情報収集が大切です。どこにどんな港やアンカリングできるような入り江があるのか、入港できるのかどうか、事前に調べなければいけないことはたくさんあります。
また自分のボートの走行距離も考えておきましょう。もし途中で燃料が不足するようなら、途中に給油できる場所を探しておく必要があります。
さらに避難港や立ち寄れる港があるかも調べておくことで、もし何かあった時に、迅速に避難したり救助の要請などができるはずです。
航海コースの設定
海図を使って航行コースを決める
海図上で、出発点Aから目的地点Bまでの最も安全で経済的なコースを選択し、実際に線を引いてみましょう。ポイントは目標物が見える範囲を航行する事で、0.5海里沖に離れるようなコースをイメージして決めます。沖に出過ぎるとそれだけ燃料を多く消費し、時間もロスします。逆に岸に近すぎれば暗岩や魚網などの危険物や障害物に接近するリスクが高くなります。
実際に海図上に航行するコースを引いたら、そのコースが暗岩や、水深の浅い水域を通過していないかや、定置網などの魚網や漁具に近づきすぎていないか、潮流の激しい場所を通過していないか海図などを見ながらチェックしてみましょう。もしそういった水域を通過しているようなら、コースの変更が必要です。
下の図は、基本的なコースの作成方法です。実際の海図で任意の場所でもいいので自分で線を引いてみましょう。
用意するもの
- 海図(できれば一枚の海図にコース全体が入りきっている海図と出発点と目的地点の拡大海図)
- コンパスとディバイダー
- 三角定規と鉛筆消しゴム
- 「ヨット・モータボート用参考図(Yチャート)」や「プレジャーボート・小型船舶用簡易港湾案内(Sガイド)」(日本水路協会)など、情報を収集・調査するために必要なさまざまな資料やガイドブック
所要時間の算出
航海コースが決まったら、その行程の所要時間を算出する必要があります。自分のボートの性能だけでなく、当日の乗船者の人数や荷物なども想定して、巡航で走りきれる任意の速度を決めておきましょう。コースの距離はディバイダーで測れば簡単にわかるはずなので、あとは一定の計算式で所要時間がわかります。また所要時間がわかれば、それをもとに燃料消費量が計算できます。
所要時間の計算の仕方
全行程の距離×速力=所要時間
例えば、27.7海里を12ノットで航海すると、所要時間=27.7海里×60(分)/12ノット=27.7海里×5=138.5(分)=2時間18.5分
*60(分)/12ノットは、ノットを分に置き換えるための計算式。ノットは海里を単位とした時速。この場合は12ノットとは60分で12海里進める速度。つまり12ノットとは、1海里進むのに5分を要する速度ということです。これに距離をかければ所要時間が分で表示されます。
変針のポイント
基本的に小型クラスのボートの場合、ラインコースの変針ポイントは、事前に設定しておくのが一般的です。しかも風向きなどを想定して何通りかのコースをシミュレーションしておくといいでしょう。一般的に小型のボートは陸上の物標とコンパスだけで航行するようにコースを引いていきます。
その場合に変針するポイント(位置)は、常に海図上で設定した目標となる物標がボートの船体の真横に来た時に進路を変えるようにすれば、変針ポイントが大きく狂うことはないはずです。
航海コースの変更
天候の急変など、状況によって臨機応変にコースを変更しなければいけない時もあります。予定のコースでは風波の影響を大きく受けてしまうような状況で航行していた場合、途中でより影響が少ないと思われるコースに変更した目的地に向かうこともひとつの選択方法です。
波は基本的には風の吹く強さとその時間、吹く距離で大きさが変わります。もちろん河口付近など海底の地形によって波の高さが変わる場合もありますが、海図上でコースを設定するときに、事前に風が吹く方向によって波が大きくなる場所を把握して、いくつかの迂回コースを設定しておくと、そういった状況にも対応できるでしょう。
給油場所や避難港の設定
給油できる施設を決める
それなりの距離を航行するクルーズを計画する場合は、重要なのが燃費の問題です。ボートに搭載されているタンク容量内で十分に目的地まで行けると計算できたとしても、目的地およびその周辺で給油可能かどうかは確実に調べておきましょう。計算はあくまでも計算上の話で、実際には海のコンディションが悪ければ、それだけ燃料の消費量が増える可能性や、なんらかの理由でコースを大幅に迂回するような状況になれば、計算は大幅に狂ってしまいます。
周辺に給油施設のあるマリーナなどがあればディーゼルでもガソリンでも給油できますが、漁港などの場合はガソリンの給油ができない場合もあるので注意しましょう。また給油できると聞いて入港したものの、たまたま休業日だったというケースも実際にあるので、休日や営業時間は確認しておきましょう。
避難港を確認しておく
航海中に急病人やケガ人の発生、何らかのトラブルによって安全な航行に支障をきたすと判断した場合や、天候の急変に遭遇するなどといった場合には、無理な航行をしないで最寄りの港などに避難し、適切な対処をするようにしましょう。
そのためには事前に候補となる寄港地を決め、その港湾に関する情報(コース周辺の港湾情報や病院、修理工場、給油施設・方法)は、できる限り調べておきましょう。また寄港地以外でも途中のトラブルや荒天時を想定して避難港を選び、同様に調べておきます。
入港に際しては、港湾管理条例や港湾施設使用条例などによって、プレジャーボートの入港・停泊に関して事前に届け出が必要な場合でも、ほとんどの漁港に関しては「海難を避けようとする船舶」「運転の自由を失った船舶」などの理由であれば、特例として事前の許可なく入港できます。しかし、事前に連絡できる場合は、その状況を連絡して入港するようにしましょう。もし緊急で入港した場合でも、入港後は港湾管理者(漁協等)に連絡し、係留場所などの指示を受けることが必要です。
事前に調べておきたい港湾情報チェックポイント
- 連絡先(漁港などの港湾管理者)
- 港概要と入港可否、入港手続きの方法(料金が必要な港もある)
- 入港方法(目印、進入航路、底質など)
- 港周辺の危険箇所(暗岩や浅瀬など)
- 給油、給水など補給できるものの確認(例えば給油可であっても軽油のみでガソリン不可という場合もある)
- 修理工場やメンテナンスサービス
- 停泊する場合は停泊可能かどうかや、周辺の宿泊情報
※無断入港、無連絡離船など基本的なルールやマナーを守ること。