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アンカリングの手順

投錨、揚錨などに関する基本をご紹介します。

投錨場所の選定

錨泊地の選定が錨泊の良し悪しに最後まで影響してくるので、投錨地として以下の(1)~(4)を確認して選びましょう。

(1)
風・波・うねりの影響が少なく、潮流の弱い所。
(2)
錨泊中は船体が風や潮流などの影響で振れ回るので、十分な広さがある水面。
(3)
水深が、投錨するのに適当であって、底質が泥・砂と錨の効きの良い所。
(4)
他の船舶の航行の妨げにならない所。
海図などで、アンカリングする場所の水深や底質などを確認

投錨準備

底質に合った錨を選定して確実にアンカーロープに繋ぎます。このとき、アンカーロープが絡まないように繰り出せるかどうか、長さは水深に対して十分な長さであるかどうかを確認しておくようにします。また、アンカーロープのエンドを船体に係止しておけば、すべてを海中に投錨してしまうのを防げます。

図A

投錨手順(単錨泊)

錨は水面まで下げておき、微速で錨泊地に向い風で進入します。

船が予定投錨地点を少し過ぎてから行き足が止まるように、投錨地点の少し手前で機関を中立にして、続いて後進にかけます。

船の行き足がなくなり、続いて後進を始めて投錨地点に来たときに、投錨します。このときにバランスを崩して落水したり、ロープに足が取られたりしないように十分注意してください。
※投錨作業は初心者が行うのではなく、揺れやすい船首での作業は危険が伴うので、船長は熟練者を配置させるようにしたほうが良いでしょう。

錨が海底に届いたら、着底したことを船長にわかるようにサイン等で知らせます。船長は後進に入れ、ロープを繰り出していきます。水深の1.5倍程のところでアンカーロープの繰り出しを止め、船が後退するに連れてアンカーロープが張ってきたら錨の向きが整ったことを確認します。そこから徐々に必要な長さ(水深の3~5倍)まで伸ばして、しっかりとアンカーロープを係止します。(図A参照)

投錨して、錨が海底に届き、必要な長さまでアンカーロープを繰り出して係止すると、船の後退によってアンカーロープは始め『ピン』と張ってくれますが、やがて静かに緩んで船は少し前進します。アンカーロープが規則的に張ったり緩んだりしていれば、錨は十分正しく海底を把駐(爪が効いている)しています。

最後に船長が係止したアンカーロープのロープワークと、錨が効いているかどうかを確認すると同時に、海上衝突予防法の規定どおり、夜間であれば燈火、昼間であれば形象物を掲げ、クロス方位法等で船位の確認を必ず実行しましょう。

錨泊中

走錨確認

錨泊しても操船は終わりではありません。錨泊という一見簡単そうに思える動作ですが、実際には航行する以上に難しい気が抜けない操船動作の始まりです。定期的に船位の測定を行い走錨していないかを確認。また、天候の変化や、周囲の船舶の状況なども常にチェックする必要があります。

  1. 投錨したときにクロス方位法で得た船位と、同じ方法で測定した現在の船位と比べてズレがないかどうかを確認しましょう。
  2. 正横方向にある二物標のトランシットを定めて、変化がなければ錨は効いています。
    ※この二物標によるトランシットは、その後々、走錨早期認知法として揚錨時まで利用できるので、是非、敢行してください。(図B参照)
  3. アンカーロープが規則的に張ったり緩んだりを繰り返していたり、張りっぱなしでも船が左右に揺れていれば、錨は効いています。
  4. 風潮があるのに船が風潮に立たず、アンカーロープがいつまでも張ったままで緩まないようであれば、走錨しています。
  5. アンカーロープに直接触れてみて、異常音・特殊な振動が伝わってこなければ錨は効いています。
    ※このアンカーロープに直接触れて『ゴロゴロ』と、錨が海底を走錨しているような振動がアンカーロープに伝わってこなければ錨は効いています。この走錨早期認知法は、投錨後すぐに確認ができます。是非、実行してください。
  6. 釣りをしているときなどは、糸の傾きで走錨を知ることもできます。
  7. 付近の他船との関係で異状がないか調べましょう。
  8. 風を両舷交互に受けず、片舷のみに受けているときは走錨しているとみなしたほうが良いでしょう。
図B

揚錨手順

次は、錨の抜錨から揚錨までの手順です。ウインドラス(アンカーチェーンやアンカーロープを巻き上げる機械)で揚錨するのも良いのですが、ウインドラスに過大な負担を与えることもあり、電源が上がったりヒューズが切れたりすることもあります。あくまでもウインドラスの使用は錨を海底から船体まで引き揚げるときだけに使用した方が賢明ですし、抜錨はスクリューの力で行った方がずっと合理的です。

アンカーロープの方向と水深をイメージし、錨のほぼ真上に船首を移動します。クルーは、ロープの位置を船長がわかるようにガイドします。

この場合ウインドラスを使用して船を引っ張るのではなく、スクリューの力を使ってデットスロー(アイドリングでスクリューを回すこと)で船首を錨の真上まで移動させます。ウインドラスはあくまでも、アンカーロープを手繰るだけで、過大な負担を与えないようにします。

正しく船首が錨の真上に来ていることを船長に知らせます。この段階で、アンカーロープの長さは水深と同じくらいの長さまで手繰られているはずです。自船のスクリューはすでに中立になっていて、行き足(惰性)で前進しているので、素早くバウ(船首)の係船具(ビット・クリート)にロープを固定します。船長は船を風潮に立てた状態で(向かい風)デットスローで前進させます。エンジン音やバウ付近のアンカーロープ周りから異常なストレス(「ギシギシ」という音)が感じられなければ抜錨はできています。

抜錨後、スクリューを止めた状態でさらにウインドラスを使って錨を水面付近まで揚げたら、ウインドラスの役目は終了です。

最後は、人力で錨を船上まで揚げますが、フリュークを確認してください。もしフリュークに海底物等が付いていたら、上下によく振って海水で洗い流してから、格納するようにしましょう。それでも汚れがひどい時は、ボートフック等で汚れをきれいに落としてから格納してください。

格納後は、走航中に波の衝撃で錨が落ちないように、しっかりとアンカーウェル(錨を取り付ける台座)等に錨を固定、もしくは格納してください。航行中に錨が落ちると、船体に傷や穴を開けて浸水事故を起こしたり、大きなトラブルにも繋がりかねません。

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