アンカーの振れ回りと双錨泊
ボートの振れ回りを防ぐ双錨泊をご紹介します。
アンカーの振れ回り
錨を入れて錨泊している間に風の向きが変わってしまったり、流れの向きが変わると船体はこの変化とともに移動してしまいます。
河川などのように流れる方向が一定の方向に定まっている場合には一方からの力に対して考慮すればいいのですが、一般の洋上においては流れはあまりなく、風によって推される事のほうが多く、風向きも時間とともに変化します。そういった時は、船首から二つの錨を入れてこの振れまわりを防止します。
単錨泊の長所と短所
単錨泊とは錨をひとつ入れて船を洋上に留め置くことで、船首から投入します。
長所
単錨泊の長所としては、把監力が充分であればひとつの錨を入れれば用が足ります。したがって作業が短時間で済むという利点があります。
短所
- 風向きや流れの向きが変わると、アンカーロープの長さを半径とした範囲で船が動き回るため広い水面席を確保する必要があります。それによって錨泊している他の船と接触したりすることがあります。(図1参照)
- 振れまわりによってアンカーが向きを変えるときに走錨する事がある。
以上の事柄から判ることですが、単錨泊をする場合には次のいずれかの場合が良いでしょう。
- 錨泊している間、操船上の対処ができる人が乗船している場合。
- 錨泊している時間が短時間の場合。
単錨泊の場合、アンカリングした後に風向きが変わるとボートが振れ回るため、アンカーロープの長さ半径とする水面の確保が必要です。また、風向きが変わるときに錨が引き起こされて走錨する可能性もあるので、注意が必要です。
双錨泊の長所と短所
双錨泊とは二つの錨を用いて船首から約40~60度くらいに開いて船を留め置く方法をいいます。(図2参照)
長所
- 双錨泊の長所としては、把駐力が二分されるのでロープの長さが単錨泊に比べて短くて済む。
- 全体的な把駐力が大きい。
- 振れまわりの面積が少なくて済む。
短所
- 二つのアンカーを投入することから作業に時間がかかる。
- 風などによって船がその場で向きを変えたときには二本のロープが絡み合って錨を揚げる事ができなくなる。
- 投錨作業にテクニックより高度な判断力が要求される。
※二つの錨を投入するものに二錨泊というのもあり、これは船首から前方ほぼ同方向に二つの錨を入れることをいいます。
また、双錨泊の変形としてアンカーを船首と船尾からアンカーを投入する船尾双錨泊という小型船舶に最も適している方法があります。普通の双錨泊では風や流れの影響を受け易く、ロープやチェーンが絡み易い欠点がありますが、これを解決できる方法です。
双錨泊の作業手順
この場合には、投錨地点に対して風を横から受けるようにデッドスローで進入します。
図3によって説明すると、投錨地点に達したら右舷船首の錨を投下し(地点1)、ロープを船の動きに遅れないように繰り出しながら船をそのまま進めます。
適時右舷に舵を切って旋回を始めたら機関を後進にかけて船が停止した時に左舷の錨を投下し(地点2)、機関や風によって後進を始めたら後は機関を停止して左舷の錨ロープを繰り出しながら深さの4倍くらい戻ったところでロープを固定します。(地点3)
船を二つの錨と等距離になるようにロープを調整します。
しかしながら小型船舶においてはこの方法では、ひとたび風向きが変わると二本のロープが絡み合うこともあるので注意が必要です。