バイク初心者必見!速くなるよりも上手くなるための、柏流ライテク論 第5回「飛ばさなくてもかならず上手くなる3のポイント」
- 2012年8月28日
前回は夏ならではの注意点に触れながら、ライディング上達の道筋となるCKM(シー・ケー・エム)の提案をしました。
CKMとはセンター・キープ・メソッドの略です。
これは私が主張し続けていることで、自分の車線のど真ん中をトレースすること。センターラインやガードレールに寄ったりしないで、まるでレールの上をブレずに走るような安定感をともなうCKMが理想的だと思うのです。
市街地はもちろん高速も、ワインディングも安全がイチバン大切。誰も事故など起こしたくないはずですが、たとえばワインディングでもっとも多いのが自分の技量を越えてセンターラインやガードレールに異常接近してしまう例。
最悪だとセンターラインを越えてしまったり、ガードレールに直行することも。センターライン越えでは対向車との事故、ガードレール直行でも相応のダメージは避けられません。そうならないための最優先したいガイドライン:モノサシがCKMなのです。
ちょっと話を切り替えてみましょう。まったく同じ年式で車体色もサスセッティングも、まるで同じXJR1300の2台を用意して、AさんとBさんが、ちょうど峠道サイズの道幅が続くサーキットをAさんが先にスタートする形で3周走りました。
Aさんはスタートから3周を走り終えるまで自分の車線のど真ん中のみを走りました。BさんはAさんのペースについて行くために、イン側ギリギリ、アウト側もギリギリの道幅いっぱいにラインを使う、まさしく典型的なレース走法のアウト・イン・アウトのラインで走りました。あきらかにBさんのコーナリング速度の方が高いのですが、スタートからゴールまで同じ車間だったので同じタイムで走ったことになります。
ではAとBのどちらに技術的な余裕があると、皆さんは思いますか。
私はAさんだと思います。わざわざ道のど真ん中のみに限定しているにも関わらず、Bさんと同じペースで走れるわけですから。
厳しく限られた条件の中でも同じ結果が出せる。それはつまり、技術的余裕がまだまだ大きく残っていることを意味します。逆説すれば、同じコースを同じタイムで走っているからといっても、AさんとBさんの走りの内容がまったく異なるのです。
さらに仮説を続けましょう。実はそんなAさんに、CKMではなく、「自分の車線のど真ん中」と「道の左端の線」の「間」のみ使って走る(つまり、自分の車線の左半分だけ使用する)という条件に変更したら、次はどうなるか。
今まで以上にAさんは上手さが発揮されます。「走る距離がより短くなり、今まで以上にコーナリング速度を落とし、それまでよりタイムが明確に短縮してしまう」でしょう。
嘘のようで実はこれ、本当に考えられる話なのです。間違いなく道幅いっぱいを使うBさんのコーナリング速度よりも遅くて、バンク角も全体に浅めですが、走る距離がさらに短くできるために、安全性は低下せずに、より速く走れるのです。
私がCKMを提唱しているのは、公道でのリスクを減らし、同時に運転技術を効果的に高められるからです。言い換えるなら、コーナリング速度を上げないで上手くなることが可能だと言いたいのです。飛ばしたら上手くなるという常識が、真実ではないとも言えます。
↑道路表示を参考にするとトレースしやすい。
もっと現実に即したことを言います。CKMすれば、対向車がセンターラインを越えてきても衝突しない可能性が大幅にアップします。逆に、道幅いっぱいに走れば命はいくつあっても足りないのです。
つまり、CKMは上手くなるためのガイドライン:モノサシになりながらも、同時にライフライン確保にもなる非常に貴重なメソッドなのです。CKMを厳守しながら、綺麗なフォームをトッピングすると、ライディングはもっともっと楽しくなると思います。
綺麗というのは躍動感、そして無理無駄ムラがない走りを意味します。上体が軽く前傾しつつ、コーナーの先へリラックスして視線が送れ、しかもよく見たら笑顔で走っていた、なんて状態ならベストだと思います。
CKM厳守でたとえば綺麗なリーンウィズに挑戦したり、リーンインやリーンアウトにもトライしてみるのもいいですね。さらにお尻をイン側にずらすハングオフも自由に動ける余裕の目安になると考えて下さい。
リーンウィズで上体がガチガチになるよりも、速度を少し落としてハングオフすることに関心を持つ方が正しい自己評価に直結するのです。少し動いたぐらいで体のどこに力が入るか、条件を課すほど自分のことが鮮明に見えてくるからです。
リーンウィズのままでも良いといえば良いのですが、上体がいつもリラックスできているのかを問いかける習慣がない限り、リーンウィズによる安全性確保は難しいとさえ言えます。
どんな走行環境でも常に自在なフォームがやれるぐらいの余裕こそ、真の安全に欠かせないことだと考えて下さい。
早く上手くなるための3つのポイントその1は、上体の入力脱力と連動させた呼吸管理を維持しつつCKM。これが集中力維持と低疲労と安全空間確保を約束します。
2番目はカーブ手前で少しだけでも速度を落とす余裕を確保すること。根性や度胸や体力で攻める走りをしない。
そして3番目にその余裕で全身の五感を研ぎ澄ませ、しなやかに体を動かして、さまざまなフォームと連動させて、さまざまなテクニックを試みる。それこそが技術的正確性を高めるイチバンの手だて。この正確性こそさらなる上達につながり、貴方の未来をより楽しく大きく膨らませることになるのです。
どこかでお会いしたら笑顔と美しいフォームでピース!
【関連記事】
・バイク初心者必見!速くなるよりも上手くなるための、柏流ライテク論 記事一覧
- 2012年8月28日