バイク初心者必見!速くなるよりも上手くなるための、柏流ライテク論 第8回「タンデムライド&グループツーリング」
- 2013年1月28日
バイクライフの楽しみ方を広げるにはいろいろな方法がありますが、今回はその代表例としてタンデムライドとグループツーリング(マスツーリング、以下マスツー)を取り上げてみたいと思います。
タンデムライド、マスツー、この2つも別の視点から見ると、実はライディングテクニック上達のエッセンスがぎっしり詰まっていることに気がついて欲しい。「タンデムやマスツーリングじゃ好き勝手に走れない」などとワガママを言っているとせっかくの上達チャンス・ヒントを見逃してしまうから、ちょっと上手い人も参考にしてみてください。
まずはタンデムライドから。
↑タンデムライドは、後席に乗るライダー(以下、パッセンジャー)とのコミュニケーション能力が不可欠。
彼女や奥さんなど、パッセンジャーにバイク&タンデムライドが嫌われる原因として「一気に走り過ぎ!」というのが代表例。どのぐらいの時間や距離で休憩する、という基本事項をまず伝えることが大切。特に初めてタンデムライド時は控えめな距離と時間にした方が良いでしょう。
カッコイイところを見せようと無理やりにクルマを抜いたり、深いバンク角でカーブを攻めたり、1時間以上もハイペースで走り続けたり、で結局のところパッセンジャーの彼女は疲れ切って超不快な状態に陥ってしまう。これでは「バイクっていいな!」という印象が「最低!」の評価に下がってしまう。実はこれバイクのせいではなくバイク運転者のせい。
バイクはクルマと違って前輪と後輪との距離が短く(ホイールベースが短い)、相対的に重心位置が高いことになる。さらにマニュアルミッション車だとシフトやブレーキ操作毎に体が前後してしまう。しかもパッセンジャーが乗った分だけ左右に車体がフラフラしやすい。
↑パッセンジャーの安定のために、コーナリング中の重心の取り方や、グラブバーを掴んで体が前へ行かないようにするなどのアドバイスと実際の確認を、あらかじめ取っておきましょう。
タンデムライドでこの他に気をつけておきたいのは、乗車と降車の時。パッセンジャーといくら仲が良い関係でも、肩を叩きながら、「乗ります」「降ります」という掛け声を運転者に聞こえるよう伝えることを約束ごととする。
↑周囲の喧騒のため、ヘルメット越しになかなか声が聞こえにくいことが普通だから、肩を叩くことでコミュニケーションを取るようにするといいでしょう。
さて、タンデムライドにライテク上達のエッセンスが詰まっているという本題ですが、これはパッセンジャーがいかに揺れないで乗れるかを考えることです。
言葉では簡単だが、実際には難しい。低い速度から順を追って技術的な鍛練を積むのがベストですが、無理であれば謙虚に走行速度を通常よりわずか10km/hだけでいいから速度を落として走ればいい。精神的な余裕があれば、さまざまな行為は正確かつ安全に遂行できるでしょう。
後ろのパッセンジャーがいないなら、タンクの上に水を入れたコップ置き、こぼれないような運転を目指すという方法もあります。結果的には燃費も良くなる方向で走りも低リスクになっていくので、頑張って損することはないんです!
次はマスツーについて。
走る基本形はひとつの車線の中で「千鳥足」状にフォーメーションを作ること。先頭が前のクルマの右後ろ(前車の右後輪後方で車間距離は十分確保)、そして2番目は前車の左後輪後方のライン。右の車線から1メートル(柏流ではライトラインの1メートルで略してR1)と左の車線の1メートル(レフトラインから1メートルでL1と呼んでいる)。
R1とL1のラインをブレずに速度も増減せずにビタッと走れるとまるで軌道上を走る列車のようですごくカッコ良く、上級ライダーにように見え、ベテラングループのようにも見えるのがポイント。かなりのベテランでも、この点に気がつかないでずっとフラフラしたまま走り通している場合がある。
仲間内での「間」の取り方がわかると、周囲のまったく知らないドライバーやライダー、あるいは自転車や歩行者などへのチェック能力がアップすることにつながります。それが真の安全運転。速度だけ守れば安全というのは嘘で、周囲との「間」の取り方も含めた流れに乗るスムーズな走りこそ真の安全運転となることをマスツーで知って欲しいのです。
台数が多い場合は、少人数グループに分けて走るとスムーズ。いずれにしてもビギナーやリターンライダーはグループの真ん中で先頭と最後尾はベテランが守る、というのが基本パターンです。けっしてベテランがハイペースでビギナーを引っ張らないこと。
集団走行すると知らない間にライディング・ハイの状態になり、無理な追い越しをかける例が急増します。特に注意したいことは午後3時から5時にかけての魔の時間帯。3時を過ぎるとスピードに目が慣れ、体もリズムがつかめるようになってスピード感はますます冴えるのだが、実はすでに疲れが蓄積して、意識と体の動きのギャップが大きくなるのがこの時間帯。自分が無理をすると、きっと誰かも無理して先を走ったり、後ろについてくる。一人でも危ないのに、二人以上になるとそんなリスクが加速度を増すのが、マスツー特有の怖さです。
最後にセンターキープメソッド、略してCKMという走行のモノサシを提案します。CKMとは、常に自分の車線のど真ん中をトレースすること。詳しくは過去記事をご覧ください。
ガードレールへの異常接近やセンターラインオーバー……どうしてそんな危険なことをやるのか。上手くならない上に危険度が急上昇するだけなのだが、実はここに重大な問題が隠されていることに気がつくべきです。
タイヤが滑り出す限界点がわからないからいきなり滑る。曲がれると思っていたカーブは、ガードレールや対向車にぶつかるまでわからない。技術的・精神的な未熟が臨界点を見事に霞ませてしまうんです。
安全というものはけっして退屈ではありません。むしろあれこれと起こり得ることを想像して、ひとつのひとつのノウハウ:知を体系立て、怪我せず事故らず人生を豊かに楽しむ知恵を創造していくことなんです。
バイクは一人で乗っても、タンデムでも、仲間と走っても、いろんな知恵を発見させてくれる。さあ、ライディングのABCで2013年を突き抜けてください。ちなみにライディングABCとは「当たり前のことを、ぼんやりしないで、ちゃんとやれ」という意味です。
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