2022年YZシリーズメディア試乗会を開催、YZ125の劇的進化にテスター唸る
- 2021年11月30日
こんにちは、ヤマハ発動機販売の井田です。
毎年恒例となっている二輪専門誌向けYZシリーズの試乗会を開催しました。2022年モデルの中でフルモデルチェンジを果たしたYZ125と、マイナーチェンジを行ったYZ250FXについて、国内屈指のテスターの皆さんのインプレッションをお届けします!
最初にYZシリーズの開発者、開発ライダーに、2022年モデルの特徴をご紹介していただきます。まずは上村 正毅プロジェクトリーダーにフルモデルチェンジを果たしたYZ125の特徴を解説してもらいます。
「今回、1番に伝えたいのが、オールニューのエンジンです。狙ったのは中高速のパワーアップ。吸排気系、エンジン各部、ミッションなどを徹底的に見直し性能から耐久性まで総合的にレベルアップしています。キャブレターには、スロットルセンサーとパワージェットが追加され、エンジン回転数とスロットル開度に応じて、最適な点火タイミングと燃料を供給することで、レスポンスと伸びが格段に向上し、2ストロークの常識を覆す全域での力強さと扱いやすさを手に入れました。
ポイントは後方ストレート吸気です。エンジン性能を高めるには十分な空気を安定して取り込み続けることが理想です。リアフェンダーに大きな吸気孔が2つ空いていますが、ここに吸気のストレートな通り道を作って、空気がスムーズに流入する吸気システムを作り、中高速域を力強くしたのです。この後方ストレート吸気はYZ250、YZ85でも共通に採用しており、2ストロークYZシリーズはトータルでレベルアップを果たしています。
現在のオフロードコンペモデルは4ストロークが中心ですが、ヤマハは2ストロークモデルで65ccから250ccまでのラインナップが揃っています。この背景には、世界的に2ストロークがライダーの成長を担うモデルとして見直されている状況があります。日本でもオーナーサポートプログラムである「bLU cRU」メンバーの若い皆さんを中心に2ストロークに乗っていただいていますが、ラインナップを整備することはライダーの成長を促すだけでなく、ヤマハとしてはオフロード競技専用モデルの普及や、競技そのものの振興につながると捉え力を入れています。今後も4ストローク、クロスカントリーモデルも含め、お客さまの期待を超える製品を提供していきますので、ご期待ください!」
続いては、YZ125開発ライダーである鈴木 健二さんです。
「リア周りは後方ストレート吸気を実現するためすべて新作です。伸びていこうとするバイクは空気を欲している状態ですが、従来は様々なところから空気を取り入れていたため、流入時に空気がぶつかりあって流速が落ち、スムーズに空気が流れ込まなかったため力を出せていないところがありました。
2022年モデルのYZ125では、吸気から排気までを見直したことで、中高速域に限らず全域で力強くなっています。2ストロークは回すことでパワーを絞り出す特性がありますが、トルク感が増したことで全域で力を得られるようになったのです。さらに高速でも頭打ちせずグングン伸びていきます。
車体では、前後サスペンションも新しくなっていますが、一番は減衰がはっきり感じられるようになり、質感が大きく向上したこと。特にギャップ走行での操縦安定性は抜群です。シートまわりの外装変更も忘れてはなりません。スリムかつコンパクトになっていますが、シートに座った瞬間に、小さい! 細い! と感じられ、前後左右に体を思うように動かせるようになったことを実感できるはずです。
YZ125は、これまでの2ストロークのイメージを覆す進化を遂げました。ぜひ、楽しみながら技術を磨き、レースではたくさんの勝利を収めてほしいと思います」
続いては、2021年モデルのYZ250Fをベースに新作したクロスカントリーモデルのYZ250FXについて、鈴木 豪仁プロジェクトリーダーにお話を伺いました。
「今回は好評のYZ250Fからクロスカントリーモデルに相応しい特性を引き出しながら、国内のレースで活躍し、そのコンディションを知り尽くす開発ライダーの知見を存分に折り込んで戦闘力を高めています。
エンジンは、ウッズやガレ場、タイトターンが多くスピードレンジが低い日本のコースに合わせ、日本専用ECUセッティング、シフトの6速化、ギアのワイドレシオ化、吸排気周りの変更などにより、中高速域はしっかりと伸びるフィーリングを向上しながら、低速での扱いやすさと低速からスムーズに加速できるパワーデリバリーを磨き込みました。
車体では、エンジン懸架のチューニングに力を入れました。車両は目に見えないミクロなレベルでねじれたりよじれたり常に変化しており、この慣性力や回転運動のありようによって、フロントの接地感が微妙に変化します。その接地感を強くしたり、粘りを出すなどをコントロールする要素の一つがエンジン懸架です。これを積極的に活用してチューニングし、サスペンションやフレームなども合わせ最適な接地感と軽快なハンドリングを実現しています。
こうした細かなチューニングを積み重ねたことで、YZ250FXは初心者の方からエキスパートの方まで幅広く満足してもらえる車両になっています」
続いては、YZ250FXの開発ライダーである内山 裕太郎さんです。
「サスペンションは、低速から高速まで大小様々なコーナーでの曲がりやすさと安定性を高めつつ、爺ヶ岳などに代表されるガレ場で跳ねたりせず乗り心地をアップし走破性を高めています。エンジン懸架は、その形状をフレーム変更に合わせて修正。特にフロントの接地感が高まっており大きなアドバンテージになるでしょう。
加えて、エンジンも改善していますが、中でもバランサーウェイトの位置を変更したことによってエンジンの振動を低減し、長時間走行による手や体にかかる負担(しびれなど)を軽減しています。地味な変更に見えますが、効果は絶大です!
最後にパワーチューナーですが、デフォルトとしてスタンダードのマップ1とマイルドなマップ2があります。先のモデルでは、その差がわかりにくいという声があったため、マップ2をよりマイルドで扱いやすい仕様に変更しています。ガレ場やスリッピーな路面など、セクションによって使い分けてください」
開発陣が精魂込めて磨いてきたYZ125、YZ250FXの進化ポイントを紹介してきましたが、ここからは、全日本で活躍したテスターを中心に、今回の進化をどう評価したかについてご紹介していきます。
まずはオフロード専門誌「Go RIDE」のテスター、ヤマハライダーとして全日本モトクロスで活躍した渡辺 学さんです。
YZ125:中高回転でエンジンがよく回る!
「YZ250Fは開ければ、良くも悪くもグイグイ走りますし、車体も初心者には若干重い。でもYZ125は車体が圧倒的に軽いため、車両の動きがわかりやすく、ラインを変える余裕も生まれるなど攻めやすい。さらにエンジンがパワーアップして回るため、例えば3速に上げるタイミングでも2速で引っ張れて忙しさも低減され、車両トータルで考えると初・中級者に断然オススメです。
サスペンションもとてもいいですね。昔の2ストロークは弾かれるイメージがありましたが、このモデルでは奥はしっかりさせながら、低速での突っ込みや立ち上がりのギャップで硬さを感じることなくしっとり動いてくれるので乗りやすさを高める要員の一つになっています。
シートは、フラットになってかなり前後運動がしやすくなりました。その一方で、スポンジがしっかりしており、窪みがなくなったぶん車高が高くなった印象を受けましたが、慣れてくれば問題のない範囲。いずれにせよYZ125は、次元を超えた進化を果たしたということです」
Y250FX:モノづくりに一切の妥協なし
「ECUが日本専用セッティングになったことでさらに一歩前進した感じです。YZ250Fのドンと出てくるパワーが抑えられ、フワッと力が発揮されてとても乗りやすくなりました。また、ハンドリングが軽くてコントロールしやすいため、クロスカントリーでの乗りやすさを追求していることが改めて伝わってきます。
YZ125のようにハードに大きな変更を加えるのではなく、完成度の高いバイクをさらに改良したYZ250FXはすごいと思います。私の印象ではストックでレースを戦える完成度がありますが、これこそが市販車のあるべき姿。YZ250FXは、モトクロッサーをクロスカントリーマシンにするため妥協することなく情熱を持って開発されています。他と比較しても、選ばれるべきモデルだと思いました」
続いては、モトクロスの全日本選手権と世界選手権で活躍した実績を持つ「ダートスポーツ」のテスターとして参加いただいた熱田 孝高さんです。
YZ125:新しい2ストローク像を開拓するモデル
「今日のコンディションは、掘り起こされてゴツゴツしており、"弾かれるかもしれない"という不安がありましたが、それを覆すように、衝撃を吸収してくれる上品で高級感のあるフロントサスペンションが印象的でした。
エンジンはちょっとフロントを上げたいシーンなど、開け直す際にクラッチを使う必要がなくアクセルだけでいけることに驚きました。私が2ストロークの125ccに乗っていたのが1994年、250ccに乗っていたのが1995年ですが、その当時からから比べると格段の進化を遂げています。レースで選ぶのは間違いなくYZです!」
YZ250FX:トータルパッケージで秀逸なマシン
「フロントサスペンションが特に印象的でした。初期から中間にかけてとてつもなく良いフィーリングです。倒木を乗り越える際などかなりナーバスになっていたのですが、いい意味でフワっと乗り越えてくれ、大船に乗っているような安心感がありました。それでいて奥に入った時はしっかりと衝撃を吸収してくれるバランスの取れた素晴らしいサスペンションです。
エンジンは従来通り、スムーズに回って扱いやすいものでした。実は直前までYZ250に乗っていたので力不足を感じたのですが、それでもしっかりトラクションして前に進んでいくのです。低速から高速まで扱いやすくパワフルで障害物やジャンプも問題なく、車体とエンジンのトータルパッケージで本当に乗りやすいモデルだと思います」
元ファクトリーライダーとして全日本モトクロス選手権で活躍された辻 健二郎さん。オフロードバイクポータルサイト「Off1.jp」のテスターとして参加してくださいました。
YZ125:まるでファクトリーマシン!
「今回は新旧を乗り比べたのですが、旧型は回転が先行し少しだけ遅れてパワーが出てくるため、エンジンを回してピーキーに立ち上げて加速させる感じでした。新型はアクセルを開け始めたところから中速までのエンジンの燃え方、弾け方もとても繊細でよく回り、そこから先の全開域でもとても綺麗に回りながら力を発揮していることを確認でき、明らかに扱いやすくなりました。
高回転は旧型の方がパワーがあるように感じるシーンもあったので、新型は乗りやすい方向に少しシフトしているのかと思います。ただ新型に頭打ちがあるとか、もっと伸びて欲しいというマイナスはなく、ストレスなく下から上まで繋がっていきます。"同じメーカーが作ったバイク?"というくらいの差を感じました。
車体はコーナーに入りやすい、倒しやすい、曲がりやすくなっています。バイクを倒し込む時に、ハンドルから膝の間にバイクの軸があることが感じられ、倒れ込んでいく様子、トラクションしていることがとても良く感じられます。またフラットシートになったことで、コーナーに入る際にベストポジションにスッと体を持っていけるようになり、力を突き刺すようにフロントタイヤに荷重できるため、コーナリング性能を大きく改善したのだと思います。
私は以前、2ストロークの125ccでレースをしていましたが、新しいYZ125はまるでファクトリーマシンに乗っているかのようなフィーリングを醸し出しています。本当にすごい進化です」
YZ250FX:類まれな安定感を享受
「クロスカントリーモデルのサスペンションに対する印象は、減衰があまり効かずバネのようにバイクがピッチングするというものでした。ところがYZ250FXのサスペンションはゴツゴツする硬さはなく、美味しいところを使い続けていける新鮮な感覚があり、サスペンションが仕事している範囲が広い印象です。
エンジンは、燃えている感じがすごくあるのに振動がないというか、モーターのように安定しているので緊張感や集中し続ける必要がありません。パワーというよりもトルクで進んでいる感じです。また低速で狭いところを走る際、モトクロッサーはエンストしてしまいそうで回転を高くしてしまうのですが、神経質になることなく走れるため、長く走る競技として疲労感を低減する作り込みがされていることを感じました」
さて、ここからは総合二輪媒体のテスターの皆様の声をご紹介していきます。最初は「バイクのニュース/レスポンス」のテスターとして参加いただいた青木 タカオさんです。
YZ125:2ストの概念を覆す扱いやすさ
「大坂があったおかげで中高回転の伸びを体感できました。2速ホールドで回し続けてもトップエンドに余裕があり頭打ちすることなくグイグイと登り切ることができますし、途中で3速に上げてみたのですが、回転が落ちることなく粘って登ることができました。これがYZ125の進化であり、扱いやすさであると思います。
シート回りの変更は、コーナリングで前に座る時やリズムセクションで後ろに体を引く時など、とても楽になりました。しかしこれだけでなく、ステップワークの自由度など、いろんな効果が出ていると思います」
YZ250FX:ヤマハのモノづくりの凄みを感じた
「今回、最初に乗ったのがYZ250FXです。バイクにもコースに不慣れな状態だったので、苦労するかと思っていました。しかし、サスペンションがよく動いて接地感があり、路面追従性もよく、バイクから振り落とされるような感じがありませんでした。ハードなスポーツではありますが、余裕を持って快適に走れるバイクです。これに対してYZ250Fは、ザクザクした路面に対してリアクションが小さく、切れ味良くいなしてくれました。同じプラットフォームを使っていながら明確に違いが現れるところに、ヤマハのモノづくりの凄みを感じました」
最後は、「タンデムスタイル」のライターである谷田貝 洋暁さん(左)と濱矢 文夫さん(右)です。
谷田貝さん
YZ125:アクセル操作だけで走れる!
「新旧を乗り比べしましたが、私のレベルでもはっきりわかるほどの違いがありました。旧型は2ストのパワーバンドを意識し、回転が下がらないよう気を遣いながら走る必要があるためとても疲れてしまいます。新型はパワーバンドが広がった印象で、私が使う低速から中速ですら落ち込みがなく、出力も急激ではないのは驚きでした。また、アクセルコントロールだけで走ることができることにも驚きました。とても大きな進化だと思います」
濱矢さん
YZ125:新型に乗ると旧型には戻れません
「パワーが上がっていることは間違いないのですが、それよりも開け始めた時のトルク感がよく、かつトラクションするのでしっかり前に進んでいける感覚があります。例えば旧型の場合は3速での開け始めは物足りない感じがありますが、新型の3速にはトルクがあって凶暴さがなく、前に気持ちよく進んでくれます。回しながらでも1速上げても問題なく走れてしまいますし、コーナリング中から脱出までのスピードが新型のほうが圧倒的に速くなった印象です。この進化はレース結果に直結してくると思います」
いかがでしょうか? テスターの皆様のコメントからも伝わってきましたが、2022年モデルのYZシリーズは、2ストローク、4ストロークともに大きく進化していることを感じてもらえたようです。
2022年YZシリーズは、「ヤマハオフロードコンペティションモデル正規取扱店」にて、2021年12月26日までの期間限定で予約販売となっています。ぜひ、皆様のオフロードライフに最適な一台を手に入れてください!
※予約が生産計画を上回る場合は、予約受付期間終了を待たずに受付を終了する場合があります。
最後に、2022年モデルのYZシリーズをご購入いただいた方は、ヤマハYZシリーズのアマチュアオーナーのサポートプログラム「bLU cRU」メンバー登録をお忘れなく。もれなくYAMALUBE製品(ヤマハ純正オイル、ケミカル)の購入に使える1万円分(税込)のクーポン券を贈呈するほか、様々な特典をご用意しております。
【関連リンク】
・ 製品リリース モトクロス競技用「YZシリーズ」2022年モデル
- 2021年11月30日