YZプレス試乗会レポート「過去イチで扱いやすく、懐がふかーい新型YZ250FXがやってきた!」
- 2024年10月11日
今回は2025年クロスカントリー競技用「YZシリーズ」から3年ぶりにモデルチェンジを果たした「YZ250FX」を中心としたYZシリーズのプレス向け試乗会を、長野県のワイルドクロスパークGAIAで開催しました。ここでは試乗会にご参加いただいたテスターの皆さまのインプレッションや開発メンバーのコメントをご紹介していきます。
試乗会は、車両の理解をより深めていただくために技術説明会からスタート。
エンジンや車体など各開発担当者が進化の内容をじっくりと解説しました。
新作部品も確認しやすいように単体で持ち込み、見て触って理解を深めていただきました。
さらに開発・実験スタッフとプレスの皆さまが緊密にコミュニケーションを図る姿も見られたので、ご参加いただいた各媒体を通して、きっとユーザーの皆さまにとって有用な情報が届けられるはず。乞うご期待!
それでは、ここからはテスターの皆さまのインプレッションをお届けしたいと思います。少々長くなりますが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
今回は試乗会のサポートで参加していますが、全日本モトクロス選手権で活躍し、現在はJNCCのトップライダーとして君臨する馬場大貴選手にトップバッターを務めていただきます。「めちゃくちゃ楽しい!」が第一声、果たしてその真意は? それではどうぞ!
「思ったように右へ左へと曲がってくれるバイク。特にウッズの中でヒラヒラと自由自在に曲がります! この曲がりやすさはエンジン懸架、サスペンションセッティング、マスの集中化をはじめ、YZから受け継いだスリムな車体も大きく貢献していると感じました。膝周りがスッキリして圧倒的にステップを踏み込みやすくなって、曲がりやすさを演出しているのです。
パワーもちょうどいいですね。ないわけでもなく、ありすぎもしない。開けたら、開けただけリニアに反応する。これが扱いやすさにつながってプッシュできる、もっと難しいところも走破できるとチャレンジ精神を湧き立たせ、ワクワク感をもたらしてくれました。さらに、パワーチューナーではキャラクターを超パワフルから超スムーズまでより気軽に変えられるのも楽しさの一つになっています。
そしてトラクションコントロールはいろいろと試したのですが、まー滑りません! 止まってから再発進、ガレバ、ウエットコンディションなどでの安心感が爆上がり。止まったり、転倒することで積み上げられてしまう肉体的、精神的な疲労を大きく軽減してくれるでしょう。
走破できることが乗る楽しさを引き上げ、楽しめることがタイムや成績をさらに引き上げてくれますが、このYZ250FXはまさに楽しい・ワクワクを増長し、ライダーを成長させてくれるマシンになっています!」
「バイクのニュース」でテスターを担当する青木タカオさん。YZシリーズの試乗会は常連! オフロードを趣味として楽しむライダーの目線から新型YZ250FXの進化をお話しくださいました。
「毎回進化には驚くばかりですが、私でもすぐに楽しめてしまうのはやっぱりすごいことです。今回のYZ250FXは、まったりとセローみたいに極々低速で走ることができ、輪をかけて万人を受け入れる懐の広さと、安心を感じました。
過去のコンペモデルは、パワーを上げて尖っていく方向にまっしぐらで、なんだか突き放されている感覚がありました。それが今はどうでしょう? YZ250FXはビギナーからトップまですべてのライダーにとってどれだけ扱いやすくできるのかという難題をテーマに進化を続け、今はファンライドにも使える手の届きやすいバイクになっています。一台がカバーする範囲が広がっているのです。
例えばその一つが、日本専用のセッティングも施した10mmショートな前後サスやスリムな車体。エキスパートにとっては足が着きやすいという小さなアドバンテージかもしれませんが、私には数倍のプラスを生み出してくれました。
だからこそこの新型は、とりあえず前に進んでいこうと思えるし、実際に険しいセクションも足をバタバタしながらスタックすることなく行けてしまう。自分なりのスポーツライディングができて、そこに楽しさや喜び、達成感を得ることができるのです。また向上心も一緒に育ててくれ、もっとこの遊びを、競技を楽しめるようになりたいという気持ちになりました。
これからクロスカントリーを始めるという方でも、"まだ250FXは早いよ"と言われることないし、なんなら最初から250FXを選んだ方が上手くなるし、その先にはもっと楽しい世界が待っているというオススメのバイクでした!」
続いては、「クロスカントリーの経験は少ない」と言いつつも、いつもYZシリーズを楽しんで乗ってくれるミスター・バイクBGのテスター、山口銀次郎さん。山口さんは新たに搭載したトラクションコントロールの有効性を中心にお話ししてくれました。
「軽さ、扱いやすさも感じられますが、経験値のない私にとって、いくら扱いやすいからと言っても250ccでタフなコンディションを走るには繊細なアクセル・クラッチ操作を多用するため疲れを感じます。
ところが、トラクションコントロールを最大に効かせ、低速を粘るエンジンを信じ、徐々にクラッチ操作を控えてみたのですが、スリッピーな木の根っこはスルリと走れるし、ギャップのある難しい上りは低回転で粘りながらジリジリと登ってくれる。制御とエンジン特性が絶妙に絡み合ってパワーデリバリーをコントロールし、ライダーを助けて前に進ませてくれるのです。
トラクションコントロールのおかげで路面に貼り付いているようだし、確実にトントントンと進んでくれる低速の力強さ、底力、粘り強さがあり、助けてくれていることをしっかりと感じとれる頼れるバイクに進化していました」
Off1.jpの編集長、稲垣正倫さんは、パワーチューナーの「シンプルチューニング」を使い、アグレッシブ→スタンダード→スムーズの3点で、どれだけタイムに影響があるのかなど、興味深いお話を聞かせてくれました。
「パワーチューナーに設定されている7段階のシンプルチューニングの3段階でタイムアタックをしました。結論は私にとってはとても残念な結果ですが、アグレッシブが最も遅く、その後は約1秒ずつ速くなって、最もスムーズなマップで走った時が最速でした。
実際、スムーズの時は、体を積極的に動かせるし、ジャンプの飛距離も伸びていましたが、しっかりとアクセルを開けることができていたのです。昔からコンペモデルのマッピングツールに対して、大きな変化を感じていなかったのですが、このシンプルチューニングは、しっかりと段階ごとの変化と効果が意識的に作りこまれていることが伝わってきました。
昔のYZ250FXは、"走りすぎる"印象があり、上級者向けのバイクなんだと思っていたんです。それが2022年モデルから改善され、この新型はトレールバイクからYZ250FXに乗り換えても成立してしまうほど乗りやすくなっています。しかもそこからパワーチューナーで簡単にパンチのあるトップライダー向けのバイクにだってできる今回のYZ250FXは、250ccへのつなぎとなるモデルがない現状で、革新的な一台ではないかと思います」
テスターのトリを飾ってもらうのは、近年はクロスカントリーシーンで活躍中ですが、かつては全日本モトクロスで、ヤマハのファクトリーライダーを務めたこともある実力者。今回はダートスポーツのテスターとして参加している釘村忠さんです。
「2018年以来のYZ250FXです。当時は車体が大きいイメージで、今回もパッと見、劇的な変化は感じなかったのですが、跨ってみると全然違って、そのスリムさに驚きます。股周りがスッキリして、スタンディングでのホールド時もグッと挟み込める。そのおかげで、ウッズ内での細かい左右の切り返しやタイトコーナーの進入などでの倒し込みが容易なので、タイムを稼ぐパフォーマンスが格段に上がっています。
3段階のトラクションコントロールも試してみました。はっきりと介入が感じられます! 当初は滑らないことに違和感があったのですがすぐに慣れて、コーナーの立ち上がりとかウッズで"滑るかも?"と神経質になっていたところでも、アクセルを開けた時に思った速度でスッと入っていける。これで気持ちに余裕ができるので、いつの間にかなくてはならない存在になっていました。
そして、1台の振り幅がとてつもなく大きいことにも驚きました。最もスムーズなマップは、開けた時に回転が緩やかに上がっていくセローのようなトレールバイクのフィーリング。中間のスタンダードは、レースシーンで最も多い層を狙っていることがしっかりと伝わってきたし、アグレッシブ(最大)にするとトップライダーがそのままレースに出場できるパフォーマンスを発揮します。
つまりこの新型は、バイクに追いつこうと自分を成長させることができるし、自分の成長に合わせてバイクのパフォーマンスを変更できるのです。これ1台で何役もこなしていくことができるバイクと言えるでしょう」
ここまで、テスターの皆さんのインプレッションをお届けしてきましが、ここから開発・実験メンバーの声をお届けします。まずはYZ250FXのプロジェクトリーダーを勤めた中澤誠さんです。開発にかけた思いを語ってくれました。
「YZシリーズは、なんといってもモトクロッサーとして一切の妥協なく作り込まれたYZ450Fを先頭に置いて、これをベースに各モデルはその特性に合わせた進化を目指し開発を行っています。
YZ250FXも、高いポテンシャルがあるモトクロッサーをベースにすることで、アドバンテージを持った状況から開発できるという大きな利点がありました。開発・実験が力を合わせ、モトクロッサーのポテンシャルを活かしつつ、YZ250FXの独自性を引き出しながら、FXのパフォーマンス・扱いやすさを大きく引き上げる開発を行ってきたのです。
おかげさまで、国内のクロスカントリーシーンで我々のバイクは高い評価をいただいています。だからこそ新型YZ250FXへの期待も大きくなっています。そこで、国内モデルについては、鈴木健二ライダーや内山裕太郎ライダーが市場からの声を受け止め、まさに日本のお客さまの顔を思い浮かべながら、その期待を上回るYZ250FXを開発してきました。
そしてこの試乗会では、テスターの皆さんに我々の自信作を乗ってもらったわけですが、皆ヘルメットを脱いだ瞬間に笑顔を見せてくれ、同時に"すごい!" "扱いやすい"という声が聞かれ、ホッとしました。
YZ450Fから受け継いだスリムな車体、しなやかなサス、よく曲がるコーナリング性能。YZとは異なる吸気系を採用することで実現した低回転域の扱いやすさ... お客さまにはこの大きな進化をまずは試乗会で感じて欲しいと思います」
続いては今回、多くのテスターが「楽しさ」「ワクワク」「幅広さ」「懐の深さ」などと言及したパワーチューナーの開発で中心的な役割を果たした鈴木巧さんに、そのこだわりについてお話を聞きました。
「私たちはさまざまなライダースキルやコースコンディションに適応できることを万能さと定義していますが、それを実現する一つがパワーチューナーです。特にエンジン特性を自在に変更できることにこだわって作り込んできました。
まず万能さを味わってもらうために着手したのが、誰もがもっと簡単に使えるお客さまに寄り添った扱いやすさの追求でした。具体的には操作のハードルを大きく下げ、マップの変更を直感的、かつ簡単にできるようシンプルにバーを動かすだけで微調整も大幅な変更も瞬時にできる7段階の"シンプルチューニング"を実装しました。
段階ごとの味付けやそれぞれの差については、日本のライダーとコースについて知り尽くしている鈴木健二ライダーと一緒に作り込んでいます。その中で鈴木ライダーからはマップを変えた時に"ちゃんと変化が伝わることが大切"という言葉があったので、一段階の変更でもその違いを感じてもらえる変化量を作っています。
今回は7段階ありますが、中間にあたるスタンダードは、中〜上級者までをターゲットにちょうどいい扱いやすさを表現しました。パワーがあればいいというわけではなく、そのパワーをちゃんと扱えること、出し切れることが大切だという視点で作り込んでいます。ハイパワーにすれば上級者も唸る仕様になり、最もスムーズなマップにすればコンペモデルに抵抗があるような方でも受け入れられるトレールバイクのような仕様になるのです。ぜひ、さまざまな仕様を試しながら、自分の技量、成長に合わせて使い倒してほしいと思います」
そして最後は、日本のクロスカントリーレース、コース、そしてユーザーの皆さまのことを知り尽くす鈴木健二ライダーが新型YZ250FXについて解説してくれます。
「クロスカントリーモデルは、高速走行から極低速まで幅広い速度域を走るだけでなく、さまざまな環境を走破する必要があり、全方位で高いレベルの走りを実現することが求められます。
例えばフレーム、YZ250FXは幅広い環境下を走破するしなやかさが必要ですが、ベースは高剛性のモトクロッサーです。そこでYZ250FXでは懸架、サス、エンジン(ECU)の味付けを複合的にチューニングし、全方位を満たすキャラクターを追求し作り込んでいます。
2015年にFXが発売されましたが、以来ユーザーの皆さまの声を聞いて、進化、進化、進化を追求してきました。なかでも2022年モデルは、「エンジンは扱いやすいし、軽いし、すごく変わったね」ととても喜んでもらい、達成感がありました。
しかし2025年モデルは、それを越えていかなければなりません。新型を待つみんなの顔が見える、期待されていることを知っているので、ものすごいプレッシャーでした。だからもう一度、ユーザーの皆さまの声(どんなことが求められているのか?)を集めました。結論は以前と同様、"扱いやすい"こと。そこで日本人ライダーが日本のコースを走る際の"扱いやすさ"とは何かを改めて紐解き、その実現を目指しました。
ハンドリングは乗り味の軽さを目指し、10mmショートにしてよく動く前後サスペンションを採用したほか、専用設計のエンジン懸架などによって接地感もあるので、コーナーも心地よく曲がれます。エンジンは極低速でドカッとしたパワーが出ないので、圧倒的に開けやすい。さらにパワーチューナーは7段階、七変化できるので、初心者からトップライダーまでが満足できると思います。
そして新たに追加したトラクションコントロールは、従来のものよりも介入の量と幅(3段階)を大きくしました。ガレバ、ウッズでも滑りにくいため、その走破性や安心感を大きく向上しています。中澤PLも話していますが、まさに驚きの変化を感じられる自信作。ぜひ試乗会でその進化を体感してほしいと思います」
このYZ250FXを含むYZシリーズの試乗会「bLU Camp」も順次スタートとしています。ぜひ、試乗してその進化を味わってください。各会場にてお待ちしております!
bLU Campの詳細は以下のブログをご覧ください↓↓↓
ブログはこちら
bLU Camp開催日程
■日程・会場
10月19日(土) : チーズナッツパーク(福島県耶麻郡猪苗代町)
11月2日(土) : いなべモータースポーツランド(三重県いなべ市員弁町市之原160)
11月23日(土) : プラザ阪下(大阪府河内長野市末広町4-1)
11月30日(土) : テージャスランチ(広島県安芸高田市甲田町上甲立542)
JNCC/WEX試乗会
■日程・会場
10月6日(日) : WEXワイルドボア鈴蘭(鈴蘭高原スキー場 岐阜県高山市朝日町西洞)
10月12日(土) : JNCCサンドバレー八犬伝(千葉県君津市吉野)
11月9日(日) : JNCCビッグバード高井富士(X-JAM高井富士 長野県下高井郡山ノ内町北志賀高原)
12月8日(日) : WEX Winterサザンハリケーン(プラザ阪下 大阪府河内長野市末広町4-1)
関連リンク
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