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天候予測と天候が急変した時の対応

天候が急変した時の対応についてご紹介します。

風の要素と波の要素

気象・海象は常に変化しています。

小型のボートは、岸から離れた場所で強風や高波に襲われた場合には、転覆・沈没などの可能性があります。
近年では、気象衛星の発達などで、かなり狭い範囲の正確な天気予報を知る事もできるようになりましたが、それでも100%の精度というわけではありません。「ちょっと風が強くなってきた」とか「波が出てきた」など、 十分に気象情報を確認していても、常に天候は変化しています。
ボートに乗って海に出ていく以上、「船長」の責任として最低限の風と波に関する知識を習得しておきましょう。

高気圧から低気圧に向かって流れる大気が風です。

天候の変化で、ボートが大きく影響を受けるのが「風」と「波」です。風を構成する要素は風向と風速の2つです。風は地表に対して水平に吹く大気の流れを指し、垂直に流れる上昇気流や下降気流を区別されるのが一 般的ですが、その風が吹いてくる方角が風向です。
一方風速は、1秒間に空気の流れる距離を秒速(m/s)で表します。またビューフォートの風力階級表に示されるように、航海における風の強さを風力と呼び、13の階級に分類された指標も、風力の標準尺度として世界中で使用されています。
この風は、気圧の傾度力によって発生します。日光の当たり具合や地表 の温まり方が広範囲で異なると気圧が不均一になり、高気圧と低気圧が発生し、その高気圧から低気圧に流れる空気が風ということです。この風が、コリオリの力(転向力)や地表との摩擦、引力などの影響を受けて変化していきます。
また、突風のように気流の乱れから突発的に発生する強い風や竜巻やダウンバースト、積乱雲の発達による局地現象で発生する突風もあり、その場合は最大瞬間風速と表現されます。
その風が原因となって発生する波動が「波(風浪)」です。その波を構成する要素は波高と波長と速度で、それは風の強さと風の吹いている時間、そして吹いている距離に影響されます。つまり波高は、風が強いほど、長く吹き続けるほど、また、風の吹く距離が長いほど高くなります。

高気圧と低気圧との気圧差が大きいと、気圧傾度が大きく(勾配がきつくなる)なるため、大気は速く(強く)流れます。

波高は波の振幅で、上下に振動する波の頂点と底までの高さ(h) をメートルで表します。天気予報で「波高1m」などと言われますが、この数値は有義波高(100波の中の高い方の33波の平均値)、つまりあくまでも目安なので注意が必要です。言い換えれば、100波のうち、数回は1m以上の波が来ることもあるということです。
また波長は波の頂点から次の波の頂点までの時間を表し、その時間が波の速度になります。基本的には、発達した波ほど、波の高さが大きく、周期と波長も長くなり、スピードも速くなります。

ビューフォートの風力階級表
風力階級 名称 相当風数 海上の様子
0 平穏(へいおん)もしくは静穏(せいおん)
Calm
0m/秒~0.3m/秒未満
(1ノット未満)
水面は鏡のように穏やか。
1 至軽風(しけいふう)
Light air
0.3m/秒以上~1.6m/秒未満
(1ノット以上~4ノット未満)
ウロコのようなさざ波が立つ。
2 軽風(けいふう)
Light breeze
1.6m/秒~3.4m/秒未満
4ノット以上~7ノット未満)
はっきりしたさざ波が立つ。
3 軟風(なんぷう)
Gentle breeze
3.4m/秒~5.5m/秒未満
(7ノット以上~11ノット未満)
波頭が砕ける。白波が現れ始める。
4 和風(わふう)
Moderate breeze
5.5m/秒~8.0m/秒未満
(11ノット以上~17ノット未満)
小さな波が立つ。白波が増える。
5 疾風(しっぷう)
Fresh breeze
8.0m/秒~10.8m/秒未満
(17ノット以上~22ノット未満)
水面に波頭が立つ。
6 雄風(ゆうふう)
Strong breeze
10.8m/秒~13.9m/秒未満
(22ノット以上~28ノット未満)
白く泡立った波頭が広がる。
7 強風(きょうふう)
High wind/Moderate gale/Near gale
13.9m/秒~17.2m/秒未満
(28ノット以上~34ノット未満)
波頭が砕けて白い泡が風に吹き流される。
8 疾強風(しっきょうふう)
Gale/Fresh gale
17.2m/秒~20.8m/秒未満
(34ノット以上~41ノット未満)
大波のやや小さいもの。波頭が砕けて水煙となり、泡は筋を引いて吹き流される。
9 大強風(だいきょうふう)
Strong gale
20.8m/秒~24.5m/秒未満
(41ノット以上~48ノット未満)
大波。泡が筋を引く。波頭が崩れて逆巻き始める。
10 全強風(ぜんきょうふう)/暴風(ぼうふう)
Storm/Whole gale
24.5m/秒~28.5m/秒未満
(48ノット以上~56ノット未満)
のしかかるような大波。白い波が筋を引いて海面は白く見え、波は激しく崩れて視界が悪くなる。
11 暴風(ぼうふう)/烈風(れっぷう)
Violent storm
28.5m/秒~32.7m/秒未満
(56ノット以上~64ノット未満)
山のような大波。海面は白い泡ですっかり覆われる。波頭は風に吹き飛ばされて水煙となり、視界は悪くなる。
12 颶風(ぐうふ)
Hurricane
32.7m/秒以上
(64ノット以上)
大気は泡としぶきに満たされ、海面は完全に白くなる。視界は非常に悪くなる。

航海日誌への記入の利便性からビューフォートが提唱した風力階級表。帆船時代から現在まで継承されています。

うねり

海面上で風が吹くと、海面には波が立ち始め、波は吹かれた方向(風下)へ進んでいきます。波が進むスピードより風が強いと、波は風に押されて発達を続け、頂点は崩れて“兎が飛ぶ”と言われている状態になっていきます。
 この発達している風浪に対して、発達してきた風浪が風の吹かない領域にまで伝わった波、また風が弱まった場合などに残され衰退しながら伝搬してきた波を「うねり」といいます。ただこのうねり、丸みを帯びて周期も長いので、沖では平穏に見えるのですが、海底の地形に影響を受け易い性質を持っているため、水深が浅くなる海岸線付近では、波長の短い波浪よりも波高が高くなる傾向がありますから注意が必要です。
何れにしても海には、風浪とうねりが混在していて、それを合わせて「波浪」と呼んでいます。それはボートにとって最も厄介な自然現象です。その波を予測してどう対処するか、それが船長の力量になります。

高気圧と低気圧との気圧差が大きいと、気圧傾度が大きく(勾配がきつくなる)なるため、大気は速く(強く)流れます。

荒天時の操船

荒天が予想される時出港を取りやめる、また航行中に天候が崩れてきた時は速やかに帰港することが前提ですが、止むを得ず荒天下の操船を強いられる場合があります。そこでポイントになってくるのが波の変化ですが、波高1mといっていたとしても、それがすべて同じ危険度の波ではありません。また海域の地形や気象条件などによってその波の形状や周期などは大きく違ってきます。さらに船の構造や大きさ、船底の形状によっても安全性は異なるので、荒天下における操船方法について少しでも知識を持っている必要があります。

  1. 減速して船首が波を下って谷に突っ込むのを防ぎます。
  2. この下り斜面では保針が不安定になるため、早めに小刻みに針路を修正。
  3. 登り斜面ではスロットルを調整しながら、できる限りこの位置にいる時間を長くするようにコントロールします。

追い波の時の操船

追い波時の操船は、波を船尾後方、もしくは斜め後方から受けて操船することです。波高が低い状態であれば、波に向かうときよりも激しいピッチング(縦揺れ)やローリング(横揺れ)が軽減されることから、ある程度の艇速を維持することも可能です。しかし、波高が高い追い波を受けて走航する時には、ブローチングが発生する可能性をもあり、危険が伴います。

追い波時の操船ポイント

舵を早め早めに取って保針する

波の下り斜面では、針路が不安定となる前に早め早めに針路を修正することが大切です。常に船尾の真後ろから波を受けるようにします。

波に合わせてスロットルを操作する

船速が波速より十分に早く波を追い越して進む場合、船首が前の波の谷に突っ込むと危険なので、速力の増加は波の上り斜面で行い、波の頂点を越える少し手前から減速し、船首が波の谷に突っ込むのを防ぎます。
また船速が波速より少し早く、ゆっくりと波を追い越して進む場合は、ブローチングは下り斜面で発生するので、できる限り上り斜面に張り付くようにして進みます。
船速が波速より遅く波に追い越されて進む場合も、追いつかれた波の下り斜面では、船速をデッドスローとして、危険なサーフィン状態になるのを避け、なるべく早く波を通過させて次の波の上り斜面ではできるだけ長い時間波の斜面にとどまれるように増速し、波の下り斜面と上り斜面で交互にスロットル操作をしていきます。

ブローチングは船尾が後方から受けた波により持ち上がり、船首が傾いて操船不能になる状態。

向い波の時の操船

大きな波に向かうときには、追い波に比べて揺れが激しく感じるものですが、波と船の進行方向が逆になることから、一つの波に与える応力が作用する時間は短くなり操船上は追い波よりボートの保針などコントロールがしやすいはずです。
一般に波の頂点に達する時に減速をして、谷に船首が到達した時に加速するといいます。波長が長ければ船首は徐々に波に入っていくので、本来の浮力でも大きな支障が生じないわけですから、このようなボートコントロールをすることもほとんど必要なくなります。むしろ、波長が船の長さの5倍以下程度になった時にこのような操作が必要になってくるものです。

向い波時の操船ポイント

(1)
波を上り、船首が三分の一ほど頂点を過ぎたころに減速する。 減速することによってプロペラが抵抗となって船首が下を向くことにより波の表面を舐めるように通過するので衝撃がない。(図A参照)
(2)
谷に向かい船首が谷に落ちきる寸前にパワーアップする。
(3)
加速した状態で波を上り(1)に戻る。ただし、パワーアップしたまま波を越えると船体が波から前方に飛び出し、次の波の水面に叩きつけられることからケガや船体の破損を招くことがあるので注意が必要です。(図B参照)

三角波の転覆防止

三角波は方向性がなく、周期性も予期できないものです。そういった状況では舵が効く程度の速力にすると言われますが、三角波の上にある時間を長くするということは不安定な状況下にそれだけ長く船を置くことになりますから、波の頂点ではできるだけ短時間で通過するようにします。
三角波は円錐の頂点に、船体を点で支えるようなものです。したがって転覆する方向すら予期できないことが多く、傾き始めてからではその処置に遅れをとることになってしまうわけです。(図C参照)
また三角波に限らず、転覆に導くきっかけは多くの要素が複雑に絡み合っているので、的確な操船技術が求められます。小型のボートでは乗客が姿勢を低くするだけで、重心位置を下げる効果がありますし、左右の重心バランスをを考慮するだけで、ボートの安定性が高まります。しかしそれよりも、時化てきたと判断したら、例え遠回りになってもより安全なコースを選択して速やかに避難することが大切です。

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