2026年モデルYZシリーズがリリースされました! 現状に満足せずに歩みを止めないヤマハの技術者が生み出したYZ450Fの開発ストーリーをお届けします
- 2025年6月25日
2026年モデルYZシリーズが本日リリースされました。
モデルチェンジを果たしたYZ450Fは、新型エンジンや新フレーム、新作シートの採用、外装のデザイン変更の他、油圧クラッチの採用、リアサスペンションへの圧側減衰アジャスター(クリックダイヤル式)の追加などにより、戦闘力が向上しています。
今回は、"Inevitable select for the Win"を開発コンセプトに掲げ、しっかりと熟成された2026年モデルYZ450Fの開発ストーリーをお届けします。
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2026年モデルYZ450F開発プロジェクトリーダー
SV開発部 石埜 敦史
■頂点を、新たに創り出す。
YZ450Fは、ヤマハ発動機オフロード競技用モデルのフラッグシップに位置付けられます。YZシリーズの最高峰としてあるべき姿を具現化し続けてきたYZ450Fは、2023年モデルに大幅にパフォーマンスアップを果たし、市場でも高く評価されました。
当時のヤマハ開発陣の中で理想像に大きく近付いた2023年モデルYZ450Fですが、そこが最終到達地点ということではありません。
さらに上を見続け、今はまだない新たなる頂点を創り上げることが、YZ450Fには常に課せられているんです。
2026年モデルYZ450Fの開発は、何もない空にはしごを掛けるような作業でした。自分たちの立脚点を確固たる基盤としながら、どこに、どう向かうべきかを見極めました。
その時、北極星のように明確に進むべき方角を指し示したのが、「ライダー本位のバイク開発」という、ヤマハのDNAでした。
■ライダーとマシンが、共に勝つ。
あらゆるバイク開発において頻繁に使われる「扱いやすさ」という言葉。バイクのカテゴリーによって「扱いやすさ」が指し示すものはモデルによって明らかに異なります。
競技用モデルであるYZ450Fの場合、「扱いやすさ」はレース結果に直結しなければなりません。
勝利こそが「扱いやすさ」の証明です。そしてヤマハは、ただ勝つだけではなく、その道程──「勝ち方」を重視しています。
2026年モデルYZ450Fの開発にあたって私たちが心がけたのは、ライダーがバイクの能力を最大限発揮するための「ライダーと共にあるマシン」であり、「ライダーの成長を促すマシン」であるということです。ライダーとマシンは対等で、どちらも重要なのです。
「扱いやすさ」の表現は、ともすれば牙を抜かれ大人しくなったと誤解されてしまいがちですが、そうではありません。
ライダーに、どう操作すれば速く走れるかをしっかりと伝え、そのように操作した時にライダーとマシンが共に真価を発揮し、最上の成果を得る。例えば、慣れないうちはパワーチューナーで優しめの設定としてマシンがライダーに寄り添い、スキルの向上に応じてよりアグレッシブな設定に徐々にステップアップしていきマシンのポテンシャルを引き出していく。
こうした繰り返しと蓄積によって、ライダーは自分の殻を破り自身の成長を実感できると思うのです。
その手応えこそが、2026年モデルYZ450Fの開発における勝利するための「扱いやすさ」の答えなのです。
■2026年モデルYZ450F変更点
2026年モデルYZ450Fは、高速域でのパワフルさはそのままに、低中速域での扱いやすさも両立した新エンジンを搭載しています。吸気系は、吸気ポートを長円に近い断面へと形状変更することで断面変化を小さくし、流量を確保。壁面形状も調整し、燃焼室内のタンブル(縦渦)を強化しました。排気系はエキゾーストパイプ中間部にレゾネーターを追加し、最適化しています。これらにより低中速域での燃焼効率を高め、3,000〜5,000r/minでのトルク特性を向上しました。
また、駆動系では従来のワイヤー式クラッチに替えてレース中の調整が不要な油圧クラッチを新採用しました。クラッチスプリングの荷重を高めながらも、スプリング特性を最適化して、ミートポイントの分かりやすさやワイヤー式クラッチのようなタッチ感を重視して作り込み、自然な操作感を意識しました。その結果、半クラッチのスムーズさ、そして滑らかなつながり感と上質な操作フィーリングを実現しているんです。
油圧クラッチが苦手なテストライダーにも「初めて友達になれそう(よくできている)」と言わしめることができたんです(笑)。
そして、剛性を適正化し、コンフォート感と接地感を高め、より穏やかなフィーリングに寄与する新フレームを採用しています。従来モデルからのアルミ製バイラテラルビーム・フレームはそのままに、ダウンチューブをスリム化し、内側形状も刷新しました。エンジン懸架は、新フレームに最適な左右非対称形状とし、フレームのねじれ挙動を調整しています。
縦・横・ねじれの各剛性は従来モデルと同等ながらも、路面からの突き上げに対する剛性を従来モデル比でダウンさせることで走行時の過剛性感を軽減し、より穏やかで安定感の高いフィーリングを実現しました。
内部構造を見直した新開発のリアサスペンションにより、低速域から高速域まで減衰力特性がより滑らかになり、接地感が高まっています。また、手回し可能な圧側減衰アジャスター(クリックダイヤル式)を追加し、よりセッティング変更が容易になりました。
シート表皮もシボの形状と深さを一新し、ハニカム調のデザインに仕上げました。シートのシボ断面形状に方向性を持たせ、加速時には後ろにズレにくく、減速時には前方への動きを邪魔しない、相反する特性を両立しています。シート表皮のカラーを車体の樹脂パネルに近いより鮮やかなブルーに変更して、車体デザインの一体感とシームレス感を強調しています。
サイレンサー取り付け角を下向きに変更しリアフェンダーとの隙間を拡大しているので、車両を引き起こす際などの利便性も向上しているんです。
■パワーチューナーによるECUロック機能
車両盗難抑止のためのECU(エンジンコントロールユニット)ロック機能を、市販オフロード競技用モデルとして初めて搭載しました※。これは、CCU(コミュニケーションコントロールユニット)とスマートフォンをWi-Fiで接続してエンジンチューニングが可能なアプリ「パワーチューナー」でECUロックを行うと、パスワードを入力しなければエンジン始動ができなくなる仕組みです。
※ヤマハ発動機調べ(2025年5月現在)
この機能は2026年モデルYZ450Fの他に、2026年モデルYZ250F/YZ450FX/YZ250FXにも搭載されています。
※パスワードを知らない方によるパスワード変更や削除はできません。ユーザーが設定したパスワードを忘れた場合は、ECUの交換(有償)が必要になります。
■誰にも優しい。どこでも優しい。それが真の強者。
ヤマハのオフロード競技用モデルとしては最大排気量となるYZ450F。450cc単気筒DOHCエンジンの強大なパワーと強靱な車体まわりに徹底的に磨きをかけた結果、より多くのライダーが扱いやすい特性となりました。
一方、レースでライバルに勝つためには、突出した性能が必要です。この「突出」の意味するところは、ピンポイントで性能を発揮することではありません。
2026年モデルYZ450Fのエンジン開発においては、モトクロスに必要なすべての状況で効率的にマシンを前に進めるために、低速域から高速域まで、全域におけるコントロール性に優れたリニアな出力特性の向上を目指しました。また、車体開発においては、持ち前の軽快さを生かしながら、さまざまな路面状況下でのギャップ衝撃反応特性と接地感を高めました。
その結果、2026年モデルYZ450Fは幅広いスキルレベルに対応できる懐の深さを実現しました。「より速く」を志してレースでの勝利を希求するエキスパートライダーから、「より楽しく」をめざすウィークエンドのファンライダーまで満足させることが可能となっています。
ごく一部のライダーのためだけのマシン開発を、"ヤマハのYZ開発チーム"はよしとしません。また、ごく一部のコースに対応するだけのマシン開発も、よしとしません。
より多くのライダーが、より多くのコースで満足できる「懐が深いマシン造り」を目指す。その開発姿勢は、フラッグシップモデルである2026年モデルYZ450Fにも貫かれています。
■繊細、だからこそ大きなステップ。
YZ450Fの従来モデルから今回の2026年モデルの変更点は、さほど多くないように見えるかもしれません。また、さほど大がかりなものがないように見えるかもしれません。しかし、今回のモデルチェンジは、かなりのビッグステップなんです。
従来モデルのYZ450Fは、「調和(ハーモナイズ)」をキーワードに高い完成度を誇るモデルでした。ベースモデルが優れている分、その好バランスを維持したまま、さらにパフォーマンスを高めることは至難の業でした。どこを、どのように進化させるべきか。あるいは、現状を維持するべき箇所はどこか。開発の見極めは、決して容易ではありませんでした。
困難な開発においては、時に革新的な技術──飛び道具に頼りたくなることもあります。なぜなら分かりやすいトピックスになり得るからです。しかし、安易に飛び道具を求めることはせず、実直で地道な開発こそが、本物を創り出す唯一の手法だと考えました。
丹念かつ精緻な目配りと心配りを怠ることなく、本当の意味でのバージョンアップを図る。2026年モデルYZ450Fは、ヤマハらしい開発の集大成となりました。
■現状に満足せずに歩みを止めない探求者
モトクロスで勝つために必要なのは、瞬間的、あるいは部分的な速さではありません。スタート、ストレート、さまざまな曲率のコーナー、ジャンプ、フープス、アップダウン、刻々と変わる路面コンディション、そしてライバルとのバトル......。モトクロスコース内で襲いかかってくるさまざまな障壁に打ち克つためには、一点突破型ではなく、周辺部位と調和を保ち高い平均点を取ることが重要です。
2026年モデルYZ450Fの開発は、従来モデルですでに獲得している高い平均点を、さらに高める作業でした。今までの自分を超えるために、2手も3手も先を読みながらトライしました。
2026年モデルYZ450Fに乗るライダーは、常に成長や勝利を追い求める探求者でしょう。
そして、そのマインドを深く理解しながら技術的な挑戦を続けるヤマハの技術者たちも現状に満足せずに歩みを止めない探求者なのです。
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いかがだったでしょうか?
熟成された2026年モデルYZ450Fの受注期間は12月22日までです。
ご注文はヤマハオフロードコンペティションモデル正規取扱店へお問い合わせください。
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それではまた。
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