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マリン事業の歩み 『普及活動』

ヨットスクールやボート免許教室、そしてシースタイル。ヤマハが取り組んできた普及活動を振り返ります。

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需要を創造し、健全なレジャーへの発展を目指して

浜名湖館山寺「ヤマハ水上スキー教室」。
ヤマハマリンの普及活動は、この教室からスタートした。

手軽なマリンプレイとして紹介された水上スキー

 ヤマハがボートと船外機の販売を始めた1960年代当時は、マリンレジャーやプレジャーボーティング自体が、一部の愛好者に限られた遊びであったことに加えて、ボートや船外機は高価な遊びとして紹介されることが多かった。そこでヤマハでは、誰もが楽しめるマリンの遊びを提供することで、マリンレジャーへの興味拡大を図ることが検討された。
 そして「自らの手で需要を創造する」という川上社長の考えの下で最初に行われたのが、浜名湖の舘山寺に開設された水上スキー教室である。1962年に開校したこの教室は、スクール形式による練習の他、発表会などのイベントを通じて水上スキーの楽しみを提供することで愛好者のみならず、それまでマリンスポーツに親しみのない若者達に、マリンスポーツが持つ爽快さや面白さを提供した。また場所も浜名湖の他、相模湾、三河湾、琵琶湖などで開催することで、水上スキーはボートを使用する手軽なマリンスポーツの代表格として認知され始めた。
 1970年代に入ると経済成長の影響を受けて、国民所得の上昇や余暇時間の増加により、次第にマリンスポーツに対する注目度も高まり、プレジャーボートやセイルボートが普及し始めたが、当時はまだ海や港を憩いの場として利用する伝統や文化は根付いていなかった。そうした中でヤマハは安全普及本部を設置して、海で遊ぶ醍醐味や自然を大切にする心、そしてルールやマナーを含めたシーマンシップの思想を浸透させ、余暇レジャーとしてのマリン文化の育成に力を注いだ。

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舘山寺で始まった水上スキー教室はその後、霞ヶ浦や相模湾、琵琶湖など全国各地で開催され、ボートを利用する手軽なマリンスポーツとして普及した

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免許制度の発足と共にスタートしたヤマハボート免許教室。1999年には受講生が100万人を突破した

免許の取得だけではなく、マリンファンの拡大を目指したボート免許教室

 マリンレジャーとして手軽に楽しめる水上スキーに力を入れる一方で、ボート免許制度の設立に合わせて、1972年にボート免許教室を開校。免許資格の取得を目標に掲げるとともに水上におけるルールやマナーなど、これまでヤマハがマリンレジャーで培ってきたさまざまなノウハウを受講生に伝え、マリンファンの増加という意味において力を注いだ。このボート免許教室は、開校当初より全国100カ所以上に拠点を構えたことで受講生は一気に増加し、各地にボート免許の保有者が誕生した。
 ボート免許教室がスタートした翌年には、ヨットの操船技術の習得を目標としたヤマハヨット教室がスタート。ディンギー(小型ヨット)クラスとクルーザーコースは笑顔で学ぶセーリングをコンセプトに開催された。都市部の店舗では会社帰りにコーヒーを飲みながらヨットが学べる、ヨッティングルームを設置するなど、ヨット熱の高まりと共にファン拡大のための取り組みが行われ、1970年代後半から始まるヨットブームの一翼を担っていた。
 その他では、ジュニアヨットスクールがスタート。小学校3年生から高校生までを対象としたこのスクールは、葉山、浜名湖、琵琶湖などで開催され、開校から32年で約350名以上の卒業生を送り出してきた。
 またヨットスクール以外では、スポーツフィッシング講座を初めとする各種のマリンスポーツスクールを開設し、海をフィールドとするさまざまな遊び方を全国の拠点を通じて提供した。

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1970年代初頭にスタートしたヨット教室では、老若男女を問わず、数多くのマリンファンがヨットの操船を楽しんだ

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長期的な普及の視点からスタートしたジュニアヨットスクールは、現在も継続して行われている。これまでに約300名以上が卒業した

遊びの提供とインフラ整備への取り組み

 こうしたマリンスポーツの普及活動を継続して行うことでマリンファンの裾野も徐々に拡大した。また、それに伴うようにインフラの整備も始まり、東京オリンピックでセーリングの会場となった江ノ島ヨットハーバーやその周囲のマリーナ以外にも、1960年代後半から70年代のはじめにかけて全国で建設が始まり、1972年には約200カ所のマリーナがオープンした。その中のひとつには、ヤマハが運営するヤマハマリーナ浜名湖もあり、日本で初めて導入された欧米式海上係留桟橋など、その後のマリーナではスタンダートとなった数多くの設備が導入されていた。
 ボートやヨットといった製品や民間マリーナの拡充、そして免許教室や各種マリンスポーツ教室の開催により、1980年代からはマリンファン層も一気に増加し、オンシーズンの週末には、フィッシングコンテストやマリンジェットジャンボリー、ヨットレースなど、さまざまなイベントが各地のマリーナで開催された。そうしたマリンレジャーブームと呼応するかのように、行政側ではウォーターフロントプロジェクト(水際開発計画)やリゾート法が成立し、官民一体となったマリーナの整備が可能となった。こうした背景の中で誕生したのが、横浜ベイサイドマリーナ(横浜市金沢区)や広島観音マリーナ(広島市西区)、フィッシャリーナ天草(熊本県上天草市)といった第3セクター方式によるマリーナで、ヤマハ発動機では関連会社を通じて、コンサルティング業務や施設運営をサポートし、マリンファンの利便性の拡大を目指した。

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国内最大規模の収容隻数を誇る横浜ベイサイドマリーナ。ヤマハは関連会社を通じて施工から運営までをサポートしている

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スポーツフィッシングの普及と町の活性化を促進させるイベントとしてスタートした勝浦ビルフィッシュトーナメント

幅広いマリンスポーツの普及を目指して

 1992年にはマリンスポーツのそのものの裾野を広げるために、(財)日本マリンスポーツ普及教育振興財団を設立し、文部省(当時)の指導の下でマリンスポーツ活動の支援、教育、助成や啓発、研究などの幅広い活動に取り組むことになった。
 創設時には「水辺に人々が集まる活動」「幼少年期での育成」「地域や社会活動として発展」をコンセプトとして、水辺活動のプログラムを提案。また青少年に対してはマリンスポーツを楽しむための学習システムや体験プログラムを提供した他、ヨットやカヌー、漕艇など、入門から生涯を通じたスポーツとして定着するための環境作りにも踏み込み、指導者育成や施設の充実を目指した活動にも注力した。(現在は発展的解消によりその役割の一部を公益財団法人ヤマハ発動機スポーツ振興財団が引き継いでいる)

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(財)日本マリンスポーツ普及教育振興財団(現・YMFS)では青少年の水辺の活動を積極的に推進した

手軽にボーティングライフを楽しむレンタルボートと免許教室の新システムの誕生

 1995年に登場したSRV20は150万円という価格に加えて、センターウォークスルーという独特のデッキレイアウトを持つボートとして、ビギナーを始め多くのボートユーザーに受け入れられた。そのSRV20を使用する会員制のレンタルボートシステムが「SRVレンタルボートクラブ」である。4級免許(当時)保持者であれば、安価な入会金と会費だけで、全国展開する加盟マリーナでSRV20がレンタルできるこのシステムはボートを使用しない免許所有者やこれからマリンレジャーを始めようとするビギナー層に人気を呼んだ。
 2006年にはヤマハマリンクラブ「Sea-Style(シースタイル)」として一層の内容の充実を図り、マリンジェットを含むクラブ艇の拡大、加盟マリーナ数約140カ所、会員数2万人を越えるまでに規模を拡大。さらに、通常のレンタルシステムに加え、免許を所持していなくてもレンタルができるチャータープランなど内容を充実させてきた。また、海外においてもハワイのオアフ島、タイのパタヤのマリーナと提携し、レンタルボートのサービスを提供。2019年からはグアム島においてマリンジェットのレンタルを開始した。
 シースタイルの拡大の背景には、優れた人材と施設を有する各地のヤマハマリン製品取扱店やマリーナというネットワークがあったこと、また50年以上にわたって展開してきたヤマハの「普及」のノウハウがあげられるだろう。ボート初心者が特に不安を覚えそうな離着岸や、操船技術を楽しみながら学ぶことができる講習をはじめ、利用者が不安を払拭できるプログラムを次々と提供してきた。
 一方、1971年に開設したヤマハボート免許教室では、それまで8時間(1日)を要して行われていた学科講習を、スマートフォンやタブレット端末、パソコンなどのインターネット環境を利用して受講できるシステム「スマ免」を2013年より開始。2019年には小型特殊免許(水上オートバイ)、1級免許まで枠を広げるなど、利用者のライフスタイルの変化に対応したサービスの拡充を進めている。
 こうしたマリンレジャーへの普及活動は「レジャーそのものは国民生活にとって欠かせないものであり、レジャーの正しい在り方を進めるのには社会的な意義があること」と日本にマリンレジャーを定着させたいと願ってきた創業者、川上源一の考えによるところ大きい。水上スキーから始まった 日本のマリンスポーツ文化は、普及活動の取り組みによって、その裾野を広げてきたと言えるだろう。

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新しい時代の新しいマリンの楽しみ方としてスタートした会員制マリンクラブ、ヤマハシースタイル。2019年現在会員数は24,800名を超える

『マリン事業60周年史』〈1960-2020〉

ボート、ヨット、船外機、マリンジェット、そして舶用などのマリンプロダクツを60年の歩みと共にご紹介します。

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