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SR Cafe : SRイズム - タンク塗装

2016年4月27日

1978年のデビュー当時と変わらない姿で佇むSR。もちろんその長い年月の間には、少しずつではあるが、変化が与えられてきた。しかし、"変えられない"ものもある。その変えられないものとは、SRのSRたる部分であり、いまやSRのみが持つクラフトマンシップと言えるのではないだろうか。ここでは、そのクラフトマンシップをご紹介しよう。

(※本ページの内容は、SR400のスペシャルコンテンツ「SR Cafe」をもとに再構成したものです。)

タンク塗装<ヤマハ発動機生産2課>

タンク塗装は、ヤマハ発動機の本社工場内で行われている。ここはSRのほか、様々なモデルの外装類のほか、フレームの塗装が行われているライン。オートメーション化が進み、システムアップされた機械での塗装がほとんどだが、その準備段階や最終的な検査には人間の手と目が必要とされる。また、アニバーサリーモデルに採用されている「サンバースト塗装」に関しては、昔ながらの、職人の手による塗装が行われるため、それ専用の贅沢な生産ラインが設けられていた。今回は、そのアニバーサリーモデルの塗装工程を追ってみることにする。

1:塗装前の下処理

塗装前のタンクには、その表面の油分を除去するためと、塗料がしっかりと定着するための被膜化成処理が行われる。このことで、サーフェイサーなど塗装前の下処理を簡素化すると共に、より固い塗膜を造り上げることが可能となった。この被膜化成処理は、SRだけではなく、全ての塗装ラインで行われている。人間の手でオートメーションのラインにセットされた未塗装のタンクは、被膜化成処理を行ったあと高純度の水で表面を洗い流し、次の塗装工程に移動となる。

タンク内部を密閉するために、タンクキャップとガソリンコック部分にダミーの栓を取りつける。その取り付け面の脱脂はスチームで行われる。

2:基本色を塗装する

下処理が終わったタンクは、塗装ラインに移動。まず最初に、タンク全体に基本色を塗装する。単純に見える基本色も、実は2コート仕上げ。あの独特の深みを持つグリーンを出すために、最初に別のベースカラーを吹き付けたあと、仕上げのグリーン塗装される。これらの作業は全てマシン毎にセットアップされた機械で行われるものの、タンクをはじめとする塗装パーツは複雑な曲面で構成されているために、細部の仕上げは職人の手によって入念に塗装される。

塗装パーツは、回転しながら塗装マシンの前を一定の速度で移動していく。プログラムされたマシンは角度を変えながら、パーツ全面に塗料を吹き付けていく。

3:グラフィックの貼り付け

タンクサイドに見えるラインやグラフィックは、実は塗装ではなくグラフィックシートを貼ることで作り出されている。SRに採用されている細いラインもグラフィックシートなのだ。この貼り付けは職人による手作業。基準となる治具を装着するものの、そのスピードと仕上がりの美しさには驚くばかり。プレーンカラーのタンクに、あっという間にゴールドのラインが出来上がってしまった。アニバーサリーモデルでは、このゴールドラインを基準に、その内側にボカシ塗装が行われる。

ライン位置の基準となる治具はFRP製。この治具の内側約3mmがライン位置となる。テープの台座が約3mmということで、最初はそれを基準に貼り付けていくが、その後は台座を外し、フリーハンドで貼り付ける。

4:ボカシ塗装のためのマスキングを施す

グラフィックの貼り付け工程が終わると、ライン内のボカシ塗装のためのマスキング処理を行う。ウレタンパッドとナイロン製の座布団によって保護された台座の上に、キズ防止とホコリ取りのための湿らせたセーム革を敷き、その上でタンクを回転させながらビニールつきのマスキングテープで塗装しない部分を覆っていく。直線的なテープを、ラインに合わせて曲面に変えていくその作業はまさに職人技だ。マスキングテープや保護用のビニールは、素材の進化により、今ではそのまま乾燥室に入れても熱によって溶けることがない。

曲線は、マスキングテープを微妙に折り曲げながら造り上げる。その折り曲げた部分に塗料が入り込まないように、ヒダの上にもう一度テープを貼り付ける。

5:職人技のボカシ塗装

マスキングによって保護されなかった、タンクの左右部分にボカシ塗装を行う。まずは塗料の定着を良くするために軽くペーパーをかけ表面をザラつかせたあと、静電気を取り除きながらエアブローを行う。そして、いよいよゴールドライン内のボカシ塗装を行う。ここでの作業は全て職人による手作業だ。オートメーションラインを使った通常塗装の場合、1分間に60cmラインを動かすことができるが、ここではその6分の1、1分間に10cmだけラインが動く。ベースカラーとボカシという二つの塗装行程を職人の手で行うため、このラインスピードが精一杯。しかも、塗装工場内でボカシ塗装ができるのは2人だけだという。現在は、ヤマハ伝統の美しい塗装技術を継承するため、若手社員が塗装作業を行っている。

ボカシ塗装の前に、塗装面のペーパー掛けなど、下処理に必要な道具箱。右から表面をふき取る湿らせたセーム革と、2000番のペーパー、マスキング修正用のヘラ。

まずマスキングで保護されなかったタンク中央部を明るいグリーンで塗っていく。角度を変えながら大胆に、そしてたっぷりと塗料を吹き付ける。

踊るように、大胆に吹き付けていく基本の緑色とはうって変わって、じっくりとなぞるようにボカシ塗装が行われる。ここではシルバーメタリックと基本の緑色を使う。

6:仕上げのクリア塗装

マスキングテープやビニールが剥がされ、しっかりと色づけられたタンクは、キズやホコリが混入していないか細かくチェックされた後に、全面を軽く研磨しクリア塗装の工程に流される。乾燥まで含め、全てオートメーション化されたこのクリア塗装工程を、アニバーサリーモデルでは2回行う。このことでしっとりとした表面が生まれ、サンバースト塗装を一段と引き立たせているが、こんなに手間をかけるのはこのSRアニバーサリーモデルが初めてとのこと。その手間の掛け方に、ヤマハにとってSRが如何に大切なモデルであるかを知ることができる。

オートメーション化されたクリア塗装工程。トップ面、左右サイド面とパーツを回転させながら各工程を2回ずつ塗装する。アニバーサリーモデルは、このラインを2回通ることとなる。

SR Cafe : SRイズム

2016年4月27日

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