デザイナーが語る、「YZF-R」シリーズのデザイン思想を存分に織り込んだスポーツスクーター「AEROX」
- 2026年7月15日
こんにちは。ヤマハ発動機販売の山田です。
前回、開発に携わったメンバーから新型スクーター「AEROX(アエロックス)」に詰め込んだこだわりポイントをご紹介させていただきました(見た目も走りもスポーツバイクテイストで、手軽に便利に乗れるスポーツスクーター「AEROX」登場! 開発メンバーにこだわりポイントを聞きました!)。

今回は、開発コンセプト「スーパースポーツバイクに最も近いスクーター」を実現する際の最も重要なポイントである、「YZF-R」シリーズのデザイン思想を反映したスタイリングについて、デザイン担当のみなさんからご説明させていただきます。
「YZF-R」シリーズのエッセンスをふんだんに織り込んだボディデザイン

YMAC プロダクトデザイン部 写真左から
立体デザイン担当マネージャー:Romrut
CMFG・立体デザイン担当:Porntep
デザイン設計マネージャー:Siripan
デザイン企画担当:Thanamas
立体造形担当:Charnchai
ゼネラルマネージャー:水谷 玄
デザインチーム・水谷談:
サワッディー・クラップ!
タイのバンコクにあり、アジア地域向け製品の企画・デザインから設計・評価までを一貫して担っている「YMAC(Yamaha Motor Asian Center)」のメンバーが、今回のデザインを担当しています。

「AEROX」では、スポーティな性能をスタイリングで表現するため、デザインにおいても「YZF-R」シリーズが持つ"ピュアなスーパースポーツらしさ"を追い求めました。そこで掲げたデザインコンセプトが、"Ultimate Super Sport Scooter(究極のスーパースポーツスクーター)"。「ある種過剰なくらい、その高性能をデザインで表現したい」という強い想いを"Ultimate(究極)"という言葉に込めたのです。
実は「AEROX」のデザインを進めている横で、「YZF-R」シリーズのデザインも同時進行していました。そのため、RシリーズのスケッチやCADデータも参考にしながら、これまでのスクーターの延長線上にはない、まったく新しいスタイリングを追求したのです。
「YZF-R」シリーズ譲りのアグレッシブな顔つき

特に分かりやすいのが顔つき(フロントフェイス)ですね。スーパースポーツバイクのアッパーカウル風の造形を採用すると共に、「YZF-R」シリーズに共通する、猛禽類の鋭い眼光のようなアグレッシブな表情をLEDポジションランプで表現。一方、プロジェクターLEDヘッドランプは存在感を抑えるよう、コンパクトなものを採用し、あえて奥に配置しています。さらにヘッドランプの下側には、カーボン調のシボ(シワ加工)を施したウイングレット風の造形を織り込み、「YZF-R」シリーズを彷彿とさせるアグレッシブな表情を作り上げています。

灯火器類で言えば、リア周りにもこだわりが詰まっています。光らせ方を徹底的に追求し、スポーツバイクを想起させるバーチカル(縦型)レイアウトのLEDテールランプを採用しました。

また「YZF-R」シリーズでは、エンジンから伝わるトラクションを視覚的に表現しようと、後輪の接地点とボディの軸の関係を重要視していたことから、「AEROX」においても、後輪が地面を蹴るようなリアタイヤから前方にかけてトラクションを感じさせるライン(ブルー←)とフロントから後方にかけて軽快なリーンアクションを想起させるライン(オレンジ→)によってボディの主要モチーフを構成。

さらにスーパースポーツバイクには、エアロダイナミクスの表現も欠かせません。そこでトップビューから見た時に、力強い構造物にライダーが跨る姿を印象付けるライン構成に加え(左)、前から後ろにかけてライダーを含めた空力特性を感じさせる、美しい紡錘形のシルエット(右)を意図的に作り込み、ボディを支える構造物が内側にしっかり詰まっていることが感じられるようにしています。
高い位置に軸間を通したセンタートンネルで
スクーター離れした高い重心とアジャイルなシルエットを表現

なかでもスポーティな走りを直感させるのが、そのシルエットです。日常の扱いやすさに配慮しつつ、高い位置に軸間を通したセンタートンネルを採用。スクーターの常識を覆す高めの重心によって、スーパースポーツさながらの佇まいとアジャイル(軽快)なシルエットを両立させました。
デザインを進める中での苦労は尽きませんでしたが(笑)、特にこの「スポーティなスタイリングと実用性の両立」には頭を悩ませました。モーターサイクルらしさを求めてセンタートンネルを高く描くと、確かにカッコよくスポーティに見えます。しかし、日常使いのスクーターとしては、足元が引っかかって乗り降りがしにくくなってしまいます。この相反する要素をどうバランスさせるか----、デザイナーだけでなく開発メンバー全員にとって大きなチャレンジでした。

一般的なスポーツバイクは足を後ろから回してシートを跨ぎますが、「AEROX」は日常の利便性も考慮し、フロントからまたいで乗り降りすることも視野に入れています。必要な剛性を確保しつつ、高重心のスタイリングと乗り降りのしやすさ、タンデムシートとの兼ね合いも図りながら、ミリ単位で何度もスケッチを描き直し、最適な高さを探り当てています。
同時にセンタートンネルの塗装箇所を高い位置に配し、下半分をブラックアウトしてフレームの一部のような剛性パーツに見せることで、重心が高く、戦闘力が高そうに見える工夫も施しています。

また、スーパースポーツらしい外観をつくるため、「スポーツバイクにないものは作らない」を合い言葉に、スタンド掛けやタンデム(二人乗り)の際に使うグラブバーはボディと一体化させ、徹底して無駄のないフォルムを追求しています。手を滑り込ませればしっかりつかめる形状を採用しており、タンデム時でも安心して乗っていただけるよう作り込んでいます。
ライディングポジションにもスポーツバイクテイストを

スポーティに走るためにはホールド感が重要ですが、スクーターであるこのモデルには、一般的なモーターサイクルの位置に燃料タンクがありません。そこで、ライダーのスネやくるぶしの内側がフィットする部分の形状にも徹底的にこだわりました。ニーグリップ代わりのアンクルグリップですね(笑)。ここも大変苦労した点であり、ぜひ注目していただきたいアピールポイントです!

さらにライダーが乗車時に最も目にするハンドル周りは、TFTディスプレイをハンドル構造の少しへこんだ部分に別体で埋め込んだように配置。まるでスポーツバイクのカウルに頭を潜り込ませるかのように、走りに没頭できるコックピット感を演出しました。

そして本当に細かいことなのですけれど、エンジンカバーには耐熱性に優れた特別仕様の「YECVT」エンブレムをあしらっています。ほかにも「VVA」や「Liquid-cooled(水冷)」といった機能の文字を、レイアウトして高性能をアピールしています。

さらにヘッドランプ下のウイングレット風カバーの他にもカーボン調のシボを取り入れたり、ラジエターカバーの素材の風合いを変えたりと、至る所にスポーティさと遊び心をちりばめています。
「AEROX」オーナーさんになって、こうした細かい作り込みをひとつひとつ見つけ出す楽しみもぜひ、味わっていただきたいですね。
シルバーは日本専用カラー

カラーリングですが、今回国内では"マットグリーニッシュグレー"と"シルバー"の2色展開です。
"マットグリーニッシュグレー"は、マテリアル感のあるダークトーンのボディにバーミリオンカラーのピンストライプをあしらい、同色のホイールと組み合わせ、テクノロジーと高性能を想起させるカラーです。また"シルバー"は、イエローの差し色でオートマチック・スポーツのダイナミックな個性を表現。シンプルな"マットグリーニッシュグレー"と対比させています。
「AEROX」は、アジアを中心に世界中で展開しているモデルですが、実は、電子制御CVT「YECVT」を搭載したカラーは、グローバルでは"マットグリーニッシュグレー"のみの設定なのです。でも日本だけ特別に人気の高い"シルバー"も「YECVT」搭載モデルの「日本専用カラー」として採用しているんですよ。
見た目も走りも"スポーツバイク"を体感ください!

「AEROX」が備えているスポーツ性能をスタイリングで表現しようと、「YZF-R」シリーズが持つ"ピュアなスーパースポーツらしさ"を追求し、これまでのスポーツスクーターとは一線を画す画期的なスタイリングに仕上げました。
もちろん見た目だけでなく、乗車姿勢や足回り、「YECVT」設定の変更などにより、「オートマチックのスポーツバイク」として、マニュアル車の運転に自信がない初心者の方にも、スポーツバイクとしての走りを純粋に楽しめるモデルに仕上がっていると思います。
スポーティな見た目の通り、バイクで走る楽しさをぜひ多くの方に体感いただきたいですね。
デザインチームのみなさん、ありがとうございました!
細部までスポーツバイクの思想にこだわった「AEROX」。実車を前に細かいところまでじっくり見てみたくなったのではないでしょうか?

8月31日の発売に向け、お近くのヤマハバイク取り扱い店にて実車をご覧いただける予定です。ぜひ店頭でご覧ください!
それではまた。
【関連情報】
・AEROX製品サイト
- 2026年7月15日








