全世界のヤマハメカニックが切磋琢磨し合う機会であり、世界No.1のヤマハ二輪整備士を決定する「World Technician Grand Prix 2025」7年ぶりに開催
- 2025年12月5日
みなさん、こんにちは。ヤマハ発動機販売サービス課の田村です。

11月19日(水)に世界No.1のヤマハ二輪整備士を決定する「World Technician Grand Prix 2025(ワールド・テクニシャン・グランプリ:ヤマハ世界整備士コンテスト)」が開催されました。
【YTA(ヤマハ・テクニカル・アカデミー)の理念】

ヤマハでは「世界中どのヤマハ販売店に行っても均一で高品質なサービスが受けられること」を目指して、"One to One Service"(お客さま一人ひとりとのより良い関係を築く)の理念のもと、「高度な整備技術」「豊富な知識」そして「お客さまに安心いただける対応」を実現するため、ヤマハ独自の整備士教育プログラム「ヤマハ・テクニカル・アカデミー」(YTA)を世界統一基準で展開しています。このYTAを修了した認定整備士だけが、ワールド・テクニシャン・グランプリへの出場権を得られるのです。そして各地の予選を勝ち上がり、"世界No.1" 整備士 の称号をかけて世界大会に挑めるのは、なんと一生に一度のみ。

9回目の開催となる今回は、全世界で約35,700人いるYTA資格整備士のうち、19の国と地域から各地の予選大会を勝ち上がった22名が、ヤマハ発動機の本社に集結。磨き抜かれた技術を競い合いました。
【競技の概要と会場の雰囲気】

競技は大きく分けて2種目。車両のトラブルを正確に診断して修理・整備を行う「故障診断競技」と点検・修理を終えた車両を引き取りに来店したお客さまに点検結果を分かりやすく説明する「お客さま対応競技」です。

競技内容は、日本代表を選出した国内予選大会とほぼ同じですが、世界大会と言うだけあって、会場の雰囲気が全く違うのです。世界各地の予選を勝ち上がってきた精鋭のみなさんからは、エリアを代表してここに立っているという誇り、そして磨き抜かれた技術を持つ者ならではの迫力が感じられ、その場にいるだけで思わず背筋が伸びてしまうような張り詰めた空気感でした。

周囲でさまざまな国の言葉が飛び交い、大会の公用語である英語で開会式も競技開始の合図も行われていました。
【故障診断競技】

「故障診断競技」の制限時間は80分。それぞれの市場に合わせた競技車両を使用し、「MT-07」を使うスポーツモデルクラスと、スポーティスクーター「GDR155/125」あるいは「NMAX」を使うコミュータモデルクラスとに分かれて戦いました。

今大会では、「故障診断競技」をYouTubeでライブ配信したことから、例年よりも会場に入場を許可された人数が絞られていました。

とは言え、各国のディーラーや拠点スタッフのほか、来賓の方々の見学もあり、多くの人々が競技の行方を間近で見守っています。

また、ライブ配信用の定点カメラが各選手につき1台、加えて選手の動きに合わせて移動しながら撮影するカメラも複数台設置されていました。

しかも、イコールコンディションのために、使用する工具は全員同じ。工具箱のどこにどのツールが入っているのか、事前に確認する時間は与えられているものの、いつものように集中してバイクに向きあえる環境ではまったくないのです。

そんな状況下での「故障診断競技」でキーとなるのが、ヤマハ車両専用に開発された故障診断ツール「ヤマハダイアグノスティックツール(YDT)」です。最近は、電子制御を採用しているマシンが多いですからね。

車両とパソコンを接続することで、車両の状態を点検・可視化。選手のみなさんは、日頃から使いこなしているツールですが、周囲に見学者がいるだけでなく、間近で審査員が手元を厳しく見ています。こうした環境で、冷静にいつも通りの手順を踏むこと自体が、難しい状況です。

そして診断の末、交換部品が必要になると、近くの審査員に必要なパーツを申告します。この際、その部品がなぜ必要なのか、根拠を示さないと高得点に結びつかない点数配分になっています。勘や偶然で言い当てるのでは不十分。すべての故障診断には"正しいプロセス"が存在し、その過程も審査の対象です。選手たちには、ヤマハが認める二輪整備士として、迅速かつ正確に一つひとつの作業を行う緻密さが求められるのです。

修理が終わった後に、点検作業に移ります。今回の点検作業は、点検を開始すると宣言してから点検項目が選手に伝えられたため、どれくらいの項目を点検しなければならないのか、その時にならないと分からなかったため、作業時間の配分もなかなか難しかったようです。

競技の進み具合は一目瞭然。クリアした箇所に☆が付けられていきます。

ちなみに「故障診断競技」の採点のポイントは、以下の5点です。
1. 手際よく安全に作業ができるか
2. 迅速かつ的確に故障診断ができるか
3. 工具や機器の取り扱いは正確か
4. お客さまの車両を丁寧に扱えるか
5. 制限時間内で作業を完了できるか
単に修理ができれば良し!ではなく、的確かつ迅速に正しいプロセスに沿って作業することに加え、お客さまからお預かりしている大切な車両をしっかり丁寧に扱っているか、が重視されるのです。

なお、YouTubeでライブ放映するにあたっては、心電データをもとにヒトの感情を推定し、スマートフォンアプリで可視化する 「感情センシングアプリ」を選手のみなさんが装着しており、本当は焦っているのか、実際落ち着いているのかまで分かるようになっていました。
【お客さま対応競技】

店舗を再現した一角で、各販売拠点のスタッフがお客さま役になって行う「お客さま対応競技」は、点検・修理を終えた車両を引き取りに来店したお客さまに、点検の結果を説明する設定です。お客さまに丁寧に分かりやすく報告することはもちろん、プラスαの細やかな対応でお客さまに満足していただけるか、高い修理スキルと知識量、そしてコミュニケーション力が問われる競技です。

流れとしては、お客さまが来店され、接客カウンターへご案内。点検シートやヤマハダイアグノスティックツール(YDT)の診断カルテをもとに点検結果を説明します。

点検の結果だけでなく、車体の状況から、この先、交換が必要になってくると思われる箇所についてもきちんとお伝えします。その後、お客さまから、YAMALUBEオイル以外を使ってみたいなどの質疑応答が行われるのですが、いかに分かりやすく丁寧に受け答えできるのか、知識量とホスピタリティが問われました。

「お客さま対応競技」の採点のポイントは、以下の5項目
1. 身だしなみ
2. 言葉遣いやマナー
3. わかりやすく説明しているか
4. 適切なサービス、アドバイスができているか
5.メンテナンスと部品の知識は豊富か
30分の競技の間、審査員は実に50もの評価ポイントをチェックしているそうです。その内容は、大きく「行動系」と「知識系」に分けられます。

会話のスムーズさや知識の豊富さに思わず聞き入ってしまいますが、実は、身だしなみやホスピタリティといった「行動系」も重要なポイントです。
今回、19の国と地域から選手が参戦しているため、使われる言語もさまざまですが、その通訳を有志の社員でまかなえてしまうところが、実はヤマハ発動機らしい所だったりもします。
【日本代表YSP八戸・清野 貴裕さん】

さてさて、今回のワールド・テクニシャン・グランプリに日本代表として参加したのは、日本大会で優勝したYSP八戸・清野 貴裕(せいの たかひろ)さんです。

日本開催ということもあり、取材に来ていたメディアや来賓の方々も清野さんに大注目。常にたくさんの視線を浴びての競技となりました。

特に「お客さま対応競技」では、日本語で競技しているのは清野さん一人だけということもあり、自然と観戦者が集中しました。

「故障診断競技」での審査員の近さといったら! ハンパないプレッシャーを感じる距離です。

とは言え、清野さんは、今日この日のために忙しい仕事の合間を縫って着々と準備を進めてきただけあり、落ち着いて淡々と作業を進めていました。

タンクを外した際も、安定した場所にカバーを掛けて安置するなど、大切なお客さまの愛車をお預かりし修理する姿勢で終始臨んでいました。

ところが、エンジン始動不能の症状をクリアし、次のエンジン不調の課題に移ってしばらくすると、清野さんの様子がなんだかこれまでと違います。

サービスマニュアルを見返したり、YDTと接続したパソコンを食い入るように見つめ

慌ただしくパーツを外してチェックし、車両の状態をYDTで何度も繰り返し確認しますが、

どうも思うように進んでいない様子。

「そこじゃなくて・・・」と審査員の背中ももどかしそうに見えます。

そばで見守るサービスセンター東日本仙台の担当者の表情が、その緊迫した状態を物語っていました。

しかし、そこはさすが日本代表の清野さん! 決して諦めることなく、手早く淡々と次の課題へ進めていきます。

切り替えの速いこと! 日頃から、いかにテキパキと点検作業を進めているかがうかがえる手早さと的確さでした。

「故障診断競技」の制限時間終了が告げられると、清野さんのブース前からたくさんの拍手が沸き起こりました。
80分、本当にあっという間でした。

「故障診断競技」お疲れさまです! やりきった感、ありますね。

その後の「お客さま対応競技」では、目をしっかり見て、お客さまの理解状況を把握しつつ、点検結果などを分かりやすく丁寧に説明。お客さまからの質問には、理由を添えて回答するなど、お客さまの立場に立った対応が印象的でした。
【世界大会に参加しての日本代表・清野さんコメント】

日本代表YSP八戸・清野 貴裕さん談:
「故障診断競技」は、YDTを使ってのトラブルシューティングがメインになると思って準備してきました。またプロセスの大切さが重視されることも予想していたので、サービスマニュアルにしっかり沿って進めていました。競技課題の半ば過ぎくらいまでは順調だったんです。

日本代表YSP八戸・清野 貴裕さん談:
ところが途中、引っかかってしまったことがあり、普段ならYDTの診断機能をもっと効率よく使って進めているのですが、サービスマニュアルの診断内容に準ずる意識が強すぎて、アクティブテストの実行に思い至らず。プロセスにとらわれ過ぎたようです。時間との戦いでもあり、そんな折に工具を落としてしまったことで、焦ってしまいました。工具を落とすことは減点対象ですからね。

日本代表YSP八戸・清野 貴裕さん談:
「お客さま対応競技」では、与えられた資料が海外の方と同じものを使っていたので、一瞬戸惑いましたが、普段から店頭でお客さまに接しているように、伝えるべきことをしっかり分かりやすく説明できたと思います。

日本代表YSP八戸・清野 貴裕さん談:
世界大会は日本大会と比べものにならないくらい、本当に厳しい場だと思いました。
いろんな期待を背負い、国を代表して参戦しているプレッシャーからか、休憩中に今にも泣き出してしまいそうだったり、食事が全然喉を通らない選手もいたほどです。
そんな状況ではありましたが、個人的には楽しんでいましたね。自分の実力を試せるし、各国のレベルの高い人と一緒に手を動かすことで、自分ができないこと、逆に自分の方ができることを再確認・再発見できるといいますか。整備士としても人として精進するきっかけになると思いました。

日本代表YSP八戸・清野 貴裕さん談:
互いに言いたいことを伝え合うことができたかは怪しいですが、他の選手とつたない英語で会話してみたところ、同じヤマハのメカニックとして、仲間と言うと大げさですが、"バイクの整備が好きだ"って気持ちは同じであることを感じられました。
今の時代、二輪の整備士も英語は必須ですね(笑)。実際、YSP八戸の近くには航空自衛隊 三沢基地があり、海外のお客さまも少なくありませんから。そういったことにも気づけましたし、世界大会で優勝を逃したことはとても残念でしたが、日本大会で優勝し、世界大会に向けて準備する中でさまざまな経験ができ、メカニックとしてはもちろん、人間的にも成長でき、多くのものを得ることができたと思います。
これからは後進の育成サポートはもちろん、メカニックだからこそ可能な、お客さまのバイクライフを豊かにするお手伝いにいっそう力を入れていきたいですね。

日本代表YSP八戸・清野 貴裕さん談:
ワールド・テクニシャン・グランプリには、一生に一度しか参戦できないので、次がないのが本当に心残りですが、もしまた挑戦できるなら、ぜひやりたい。次回のワールド・テクニシャン・グランプリでは、日本代表に優勝してもらいたいですね。
そうそう、この後の懇親会では、参加しているメカニックのみなさん全員に声を掛けてサインをもらって帰ろうと思っています。
【観戦していたYSP八戸社長コメント】

YSP八戸社長・三浦健至さん談:
「故障診断競技」では、いつもと場所や状況が違うため、本人の思うようにできたかどうかは分かりませんが、車両の細かいところまでしっかり目を行き届かせていたのは良かったと思います。課題項目が決まっている中で、制限時間内にどこから着手するかの判断は難しかったはずですが、清野君は不慣れな環境下でも手順を追ってスムーズにこなしていたと思います。
「お客さま対応競技」では、普段から店頭でやっているように自然な感じで、お客さまの車両の状態をしっかり見て、分かりやすくお伝えできていると思いました。またYAMALUBEオイルの特徴説明や、次回の点検前に交換時期が訪れそうなパーツについての"予備整備"的な会話も上手でしたね。

YSP八戸社長・三浦健至さん談:
会場で見学できたことは、非常に有意義でした。今日は店の定休日ですが、YouTubeのライブ配信をスタッフ全員が見守っています。"清野君に続け"と次回の大会に向けて後輩のメカニックの参考にもなるし、世界大会に出場するまでの清野君の努力や経験は、YSP八戸として今後のお客さまへのサービス向上につながると確信しています。そのことこそが、世界大会に出場した一番の成果だと思います。
【世界大会結果】

なお競技の結果は、スポーツクラスでは、リアム・コフィ選手(イギリス)

コミュータークラスは、ファン・クルス・ルナド・ロチャ選手(アルゼンチン)が優勝し、世界No.1のヤマハメカニックの座につきました。

「安心・安全のヤマハバイクライフ充実には、二輪整備士みなさんの力が不可欠です。今日の経験を各店舗に持ち帰り、周囲の目標となってヤマハファン拡大に結びつけてくれることを期待しています」とのワールド・テクニシャン・グランプリの大会会長を務めたヤマハ発動機の設楽社長からのコメントにあるように、お客さまのバイクライフを支えているのは、メカニックのみなさんたちです。

メカニックは表立って目立つ存在ではありませんが、定期的にワールド・テクニシャン・グランプリを開催することで、メカニックのみなさんが技術力・接客力を磨き合うきっかけとなり、スキルアップによってお客さまに安心してヤマハのバイクライフを満喫していただけるよう、また、アフターサービスの重要性を広く知っていただき、二輪業界全体の活性化と二輪メカニックの地位向上に貢献したいと考えています。
なお、世界大会のライブ模様はこちらからご覧いただけますので、ぜひ、観戦してみてください。
【関連リンク】
・ワールドテクニシャングランプリ(WTGP)とは
・世界No.1のヤマハメカニックを決定する大会に挑戦する日本代表:YSP八戸・清野さんってこんな人!
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- 2025年12月5日








