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55mph - レストア密着レポート FX50再生記 バイクが文化遺産に変わるまで Vol.4 「外観およびステッカーの復元 その1」

1972年登場の原付ロードスポーツ「FX50」がレストアされるまでを追う。

 各部品の製作や復元、塗装、仕上げといった作業は基本的にそれぞれの専門業者によって行われている。もちろん、外注とはいえ当時の新車と同じ雰囲気に仕上げるにはレストアラーの手腕が大きくものを言う。今回はエンジン外観の仕上げおよび、ステッカーの製作、車体周りの塗装についてお伝えしよう。

 クランクケースカバー、クラッチカバーはグレーに近いフラットな色味のシルバーで塗装された。もちろん新車時の色味がこうだからである。ただし、クランクケース自体は分解したときのままだ。

「クランクケースの外側にもウェットブラストをかけようか悩んだのですが、艶が出過ぎてしまう恐れがあったのであえて洗浄のみにしました。FX50のクランクケースはほとんどカバーで隠れているので、下手にピカピカにして悪目立ちするよりはこのままの方が自然だろうと。まあこのあたりの判断は車種によって変わってきますね。クランクケースがもっと目立つ車種であればブラストをかけて仕上げるという選択もあったかと思います」

全体のまとまりを重視し、あえて“手を加えない”ことも一種のレストアというわけである。

 空冷エンジン特有の立体的な造形が美しいシリンダーとシリンダーヘッドもすでに仕上げ作業を終えていた。
「シリンダーはブラストをかけて錆を落とし、耐熱ブラックで塗装しました。このブラックの色味ですが、図面ではヤマハブラックとしか表記されていないので、残っている元の色を参考にして塗るよう塗装業者さんに指示しています。シリンダーヘッドはあまり光りすぎないようサンドブラストに比べて研磨力の弱いウェットブラストをかけて仕上げました」

 燃料タンクやサイドカバー、シートカウルの塗装はステッカーが完成した後に業者に依頼する。ロゴやグラフィックのステッカーはコーションラベルとは違い、貼った後に上からクリアーを吹くためだ。
「燃料タンクのYAMAHAロゴは改めて作ることにしました。黒縁のロゴ自体は手元にあったのですが残念ながら微妙にサイズが違う。まあこういうことは良くあります(笑)  もともと欠品していたサイドカバーのステッカーは図面が残っていなかったため、ステッカーの残っている中古部品を別途入手し、それを直接印刷業者に送ってスキャンしてもらいました。かなり複雑なグラフィックなので、製作にはかなりの手間がかかったと聞いています」

 この時代のステッカーは現在のようなオフセット印刷やインクジェット印刷ではなくシルク印刷が用いられている。もちろんレストアでも同じ印刷方法で再現することになるが、シルク印刷で多色刷りをしようとすると色の数だけ版を作らなければならない。かなりの手間とコストがかかるのだ。大量に同じものを作る事でコストが抑えられる新車生産との大きな違いである。今回、このサイドカバーのグラフィックを再現するには3つの版を作製し、3度重ね刷りする必要があったとのこと。

「シートカウルのYAMAHAロゴも図面が見つからなかったので、部品ごと業者に送って再現してもらおうと思っています。面白いことに、ここのロゴは燃料タンクとは違って文字の背景がクリアではなく、わざわざ車体と同色にしてあるんです。ひょっとするクリアの上から貼ることになっていたのかもしれませんね。こういった細かい部分も再現してもらう予定です」

ステッカーひとつでもそれが「当時の再現」となればかように大変な作業が必要となる。我々はつい外装塗装やメッキの色ツヤといった表層に目を奪われがちだが、花井さんのレストアの真骨頂はむしろこうした細かな部分にこそはっきり表れる。細部に神が宿るのはレストアも同じなのである。

次回のFX50再生記は9月下旬に更新予定です。

ヤマハ55mphのFacebookページにて更新情報をお知らせします。

コミュニケーションプラザ

「過去・現在・未来」と「コミュニケーション」をキーワードにしたヤマハ発動機の企業ミュージアム。館内には最新モデルのほか、それぞれの時代を彩った市販車やヤマハファン垂涎のワークスレーサーなどが当時のままの姿でずらりと展示されている。3階にはソフトドリンクや軽食を楽しめるカフェスペースが用意されてるので、ツーリングついでに立ち寄るのもおすすめだ。開館日などの詳細は下記リンクより。

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