55mph - レストア密着レポート FX50再生記 バイクが文化遺産に変わるまで Vol.1 「車両の選定・調達」
1972年登場の原付ロードスポーツ「FX50」がレストアされるまでを追う。
誕生から数十年を経たオートバイにいかにして命を吹き込むのか、ここではその魔法のような工程を詳細に追ってゆく。作業が行われるのはおよそ45年前に登場した「FX50」である。原付でありながら、ヤマハらしい端正なスタイリングが印象的なマシンだ。
「コミュニケーションプラザでレストアする車種は重要度に応じて『AA』『A』『B』の3段階に分類し、あらかじめリストアップされています。『AA』はYA-1のように歴史的に大きな意味をもつ最重要モデルで、また重要モデルである『A』もすでにほとんど車種のレストアが完了しています。いま我々が力を入れているのは『B』に該当する車種。リストアップされているのは50台ほどで、すでにレストアが進んでいるものもあれば、これからベース車両を探すものもあります。FX50はこの『B』に分類されていますが、販売期間が2年しかなかったこともあって車両がなかなか見つかりませんでした」
花井さんは別の車両を調達するため付き合いのあるショップに出かけたところ、偶然このFX50を見つけたのだという。
「ここまで稀少度の高いモデルになると、正直コンディションは二の次ですね。車両を見つけた段階で手に入れなければ次はいつになるか分かりませんから。もっともこの車両はベースとしてはかなり程度の良い方だと思います」
だがいくらベース車の素性が良かったとしても花井さんがいざレストアを始めれば、すべてを分解し、洗浄し、磨き、塗装し、組み立てるその工程には変わりはない。
「じつは私の学生時代、バイクの免許を取ったのとちょうど同じタイミングで発売されたのがFX50とその兄弟車MR50でした。そういう個人的な思い入れもある車両なんです。楽しみ? そりゃあ楽しみですよ。昔さんざん遊んだバイクとこうしてまた出会えたんですから」
オートバイに命を吹き込む神様が我々と同じライダーの顔になって笑った。
- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.6 「火入れ」
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- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.4 「外観およびステッカーの復元」
- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.3 「車両の分解」
- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.2 「車両の確認」
- コミュニケーションプラザ 歴史車両走行テスト
- Vol.8 レストア室の設備について
- Vol.7 バックミラーについて
- Vol.6 タイヤについて
- Vol.5 バフ研磨の再現について
- Vol.4 動態保存が記憶の扉を開く
- Vol.3 外装部品のペイントについて
- Vol.2 エンブレムの再現について
- Vol.1 コーションラベルの再現について
- Vol.3 大隅哲雄(コミュニケーションプラザ 館長)
- Vol.2 北川成人(レースマシンレストア担当)
- Vol.1 花井眞一(市販車レストア担当)