55mph - 「レストア・ムービー」 コミュニケーションプラザ 歴史車両走行テスト
年に一度行われている歴史車両の走行テスト。その模様を動画をまじえてお届けしよう。
10月の某日、コミュニケーションプラザの収蔵する歴史車両24台がヤマハ発動機が運営する自動車教習所、ヤマハ・テクニカルセンターに集められた。HS-1のようなヴィンテージから初代YZF-R1といった比較的新しいモデルまで、じつにバリエーションに富んだ顔ぶれだ。なかにはエディー・ローソンが駆った87年式YZR500(OW86)といったレーサーまで用意されている。
これまで何度もお伝えしている通り、コミュニケーションプラザで展示されている車両は「動態保存」を旨としている。したがって工場出荷状態を目指してレストアされた車両は、その後も継続的なメンテナンスを施して状態を維持していく。そして1年に1度はこうしてクローズドコースで実走テストを行うのである。ただ、コミュニケーションプラザには膨大な数の歴史車両があるため、メンテナンスと実走テストが行えるのは年に20~30台ずつだという。
実走テストは熟練のメカニックたちが自ら車両にまたがって行う。それぞれの車両にはこれまでの整備状況を記したメンテカルテが用意されており、それを参考にしながら、エンジンが息つきせずスムーズに回るか、ブレーキは効くか、すべてのギアが引っ掛かりなく入るか、ヘッドライトやウインカーといった灯火類がしっかり点灯するかなどを入念にチェックしていく。走る、曲がる、止まるだけではなく、すべての装備が正確に作動して初めて動態保存といえるのだ。
大事なテストではあるが、花井さん、北川さんをはじめとするメカニックの方の表情はどこか嬉しそうである。この中には個人的に思い入れのあるマシンもきっとあったりするのだろう。皆さん根っからのオートバイ好きなのである。
もちろんYZR 500だって実際に走らせてチェックを行う。見慣れた教習所のコースを白煙を上げて走るWGPマシン。炸裂するエグゾーストノート、オイルの焼ける匂い。一瞬で場の空気がピリリとしたものに変容する。この様子を見れば誰もが動態保存の価値を一瞬で理解することだろう。いつの時代のマシンであっても、やはりオートバイは走っている姿がもっとも崇高で美しい。
- Vol.8 レストア室の設備について
- Vol.7 バックミラーについて
- Vol.6 タイヤについて
- Vol.5 バフ研磨の再現について
- Vol.4 動態保存が記憶の扉を開く
- Vol.3 外装部品のペイントについて
- Vol.2 エンブレムの再現について
- Vol.1 コーションラベルの再現について
- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.6 「火入れ」
- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.5 「部品の検品、組付け」
- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.4 「外観およびステッカーの復元」
- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.3 「車両の分解」
- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.2 「車両の確認」
- バイクが文化遺産に変わるまで Vol.1 「車両の選定・調達」
- Vol.3 大隅哲雄(コミュニケーションプラザ 館長)
- Vol.2 北川成人(レースマシンレストア担当)
- Vol.1 花井眞一(市販車レストア担当)